【タイ労働法コラム】第10回:タイの有期雇用に関するルール

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GVA法律事務所・タイオフィス代表の藤江です。本コラムでは、タイの労務管理について、日本との違いを踏まえた上で、法的に解説していきます。今回は、タイの有期雇用に関するルールについて解説します。

 

タイの有期雇用とは?

有期雇用とは、期間の定めのある雇用契約のことです。有期雇用は、無期雇用とは違い、従業員の地位が不安定となるため、日本においても様々な規制が設けられていますが、タイでも同様に、無期雇用とは異なる特別なルールがいくつか設けられています。

まず、注意を要するのは、契約書では期間を定めて契約していても、実質は無期雇用だと判断される場合があることです。例えば、会社の多くは試用期間を設定しますが、この試用期間を定めてしまうと、書類上で雇用期間を有期にしていても、無期雇用扱いになってしまいます(17条2項後段)。また、当初から更新前提で契約している場合などは、無期雇用とみなされるおそれがありますので、注意が必要です。

 

有期雇用と無期雇用の違いは?

タイにおける有期雇用では、①雇用を終了させる方法と、②解雇補償金の扱いに関して、無期雇用とは異なるルールが設けられています。重要なのは、①雇用を終了させる方法と、②解雇補償金の扱いをきちんと区別して考えることです。実際に、①と②を混同してしまっているケースがしばしば見られれますので、正確に理解しておく必要があります。

 

雇用を終了させる方法について

無期雇用の従業員の場合、その雇用契約を終了させるには、会社は、従業員に対して、一賃金支払期間以上前に、解雇する旨の事前通知をしておく必要があります(17条2項)。なお、このような通知ができない場合は、通知に代えて賃金の支払いをすることによって、事前通知なく解雇することもできるとされます(17条3項)。

一方、有期雇用の場合、雇用契約で定めた期間の満了に伴って雇用契約が終了する場合には、そもそも事前通知が必要ないとされています(17条1項)。したがって、事前通知に代わる賃金の支払いも、必要ではありません。

 

タイの解雇補償金の支払義務について

一方の解雇補償金について、無期雇用の従業員を解雇する場合には、特別な場合に該当しない限り、会社は、解雇補償金を支払う義務を負います(118条1項)。

では、有期雇用の場合はどうでしょうか。結論から言えば、有期雇用の場合であっても、特別な場合に該当しない限り、解雇補償金を支払う義務を負うと考えておく必要があります。

確かに、タイの労働者保護法は、期間の満了に伴って雇用契約が終了する場合には、解雇補償金の支払いを定める118条1項を「適用しない」と規定されています(118条3項)。しかし、誤解が見られる点ですが、上記の規定は、全ての有期雇用については適用されるわけではありません。具体的には、以下の条件を満たす有期雇用のみに制限されています(118条4項)。

①2年以下の確定した雇用期間が定められていること
②使用者と労働者が雇用開始時に書面により契約していること
③以下のいずれかに該当すること
・使用者の通常の事業または取引ではない特別のプロジェクトに関する雇用であって、労働の開始と終了の時期が明瞭であるもの
・臨時的性格を有する雇用で、終了時期または仕事の完成時期が確定しているもの
・季節的業務であって、その季節のみの雇用
④対象となる業務ないしプロジェクトが2年以内に終了すること
⑤契約で合意した雇用期間の満了により雇用が終了する場合であること

つまり、上記の条件を満たすような例外的な場合でない限り、有期雇用であっても、無期雇用と同じように118条1項が適用され、解雇補償金を支払わなければならないということです。

なお、上記に該当するかは判例上かなり厳格に判断されているため、該当するケースはかなり限定的だと考えられます。

①については、契約書で期間途中の解除権を定めている要な場合には、確定した期間の定めがあるとはいえない、とされています。
④については、対象となる業務ないしプロジェクトが実際に2年以内に終了しなかった場合には、これに該当しないと考えられます。
⑤については、期間途中で解除した場合はこれに該当しません。

このように、有期雇用全般について、解雇補償金の支払いが不要と誤解してしまうのは法令上のリスクを負うことになりかねません。有期雇用であっても基本的には解雇補償金の支払いが必要となる、とご認識いただければと思います。

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GVA法律事務所パートナー
タイオフィス代表・日本国弁護士:藤江 大輔
Contact: info@gvathai.com
URL: https://gvalaw.jp/global/3361

日本国弁護士

日本国弁護士

ICONIC

09年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

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