ベトナムで強制社会保険加入対象となる外国人労働者の解釈について

2016年社会保険法の改正

以前2018年11月13日付で【2018年12月1日開始】外国人労働者の強制社会保険に関する新政令の概要という記事(以下「前記記事」といいます)を執筆しました。
 
その中で、強制社会保険の加入対象の外国人について「加入が義務付けられるかどうかについては、企業内人事異動の外国人労働者といえるかどうかですが、ベトナム政府側から見るとどちらに当たるのかわからない状況にある駐在員も多いのが現状です。」と書きました。そこで、今回は強制保険の加入対象とならない外国人労働者(企業内人事異動の外国人労働者)とはどのような外国人労働者を指すのか検討していきたいと思います。

以下では、必要に応じて、前記記事の内容に言及しますが、より詳しく強制社会保険制度について知りたい方は、前記記事をご覧下さい。

 
社会保険料率の概要表

※一般最低賃金(=公務員の最低賃金)は、現在139万VND/月 20ヶ月分=2780万ドン
 2019年7月1日より149万VND/月 20ヶ月分=2980万VND

 

強制社会保険加入対象となる外国人労働者

(1) 原則

政令第143号第2条第1項は強制社会保険加入対象となる外国人について「ベトナムの管轄機関によって発給される労働許可書または実務証明書または実務公認書を持ち、ベトナムにおける雇用者と無期限労働契約、満1年以上の有期限労働契約を締結する、ベトナムで就労する外国人労働者が強制社会保険の加入対象となる」と定めています。

つまり、
• 労働許可証(ワークパミット)又はベトナム当局より発給される実務証明書、実務公証書を持っている労働者
• 使用者との無期限労働契約又は1年間以上の有期限労働契約を締結する労働者
は、強制加入の対象となる外国人労働者になると明確化されました。

 

(3) 例外となる外国人労働者

ただし、政令143号第2条2項は前記の同条1項の例外として、
「2. 本条1項で定める労働者で以下の事例に該当する場合、本政令で定める強制社会保険の加入対象外となる。

a) 労働法のベトナムで就労する外国人労働者関連条項の施行細則を定めた2016年2月3日付政令11/2016/ND-CP号第3条1項で定める企業内人事異動

b) 労働法第187条1項で定める定年に達した労働者」と定めています。
労働法第187条1項は、「社会保険に関する法律の規定に基づき、社会保険加入期間の条件を満たしている満60歳の男性と満55歳の女性の労働者は、定年後の年金の支給を受けることができる。」となっていますから、【満 60歳の男性及び満 55歳の女性の外国人労働者】が強制社会保険の加入対象とならないのは明らかです。

 

(3) 企業内人事異動の外国人労働者

問題は、前記a)の企業内部の異動、すなわち企業内人事異動の外国人労働者が何を指すのか明らかでないことです。

① まず、企業内部の人事異動の外国人労働者についての定義が記載されている、労働法のベトナムで就労する外国人労働者関連条項の施行細則を定めた2016年2月3日付政令11/2016/ND-CP号第3条1項を見てみましょう。同項では「『企業内人事異動』の外国人労働者とは、ベトナム現地商業拠点を設立した外国企業の管理者、代表取締役社長、専門家、技術的な労働者として当該企業に12ヶ月以上前に採用され、企業内からベトナム現地商業拠点に一時的に異動する者をいう。」としています。

② この定義に当てはまるかどうかについて実務上客観的な判断基準となるのが、労働許可証の申請用紙7の項目「19.就業形態」における記載内容が、“社内異動”となっているか、“労働契約の履行”となっているかと考えられます。確かに、労働許可証の申請の場面で、(現地法人の)“労働契約の履行”としておきながら、強制社会保険の場面において、社内異動と主張し出すことは矛盾することになります。実務上もこのような判断方法が現時点では多くなっています。

③ もっとも、労働許可書の申請書の記載が“社内異動”となっているからといって、必ずしも強制社会保険の加入対象とならないとは限りません。この場合でも実務上の必要性から労働契約書を締結している駐在員もおり、このような労働契約の締結をもって労働局側から社会保険の対象と指摘される例も見られます。

④ このように「企業内人事異動の外国人労働者」については、一定の有力な解釈は出ているものの、まだ法令上明確な解釈が確定しているわけではありません。そのため、できるだけ保守的に考えながら実務の動向も確認する必要があります。

 

まとめ

現在、企業内人事異動の解釈についてはベトナム政府が更に検討を進めており、今後更に詳細が明らかになっていくと考えられます。上述した場面に限らず、例えば出資はシンガポールの子会社経由で行っているけれども、日本からベトナム孫会社に出向させているケースなどで、企業内人事異動にならない可能性が高いなど、様々な場面で社会保険の納付の問題がでてきそうです。
図表のとおり、一番大きな会社負担・個人負担である年金部分についての適用がある2022年はまだ先ですが、各企業の準備を考えますと、なるべく早い段階で情報が明らかになることが望まれます。

 
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日本国弁護士・ベトナム外国弁護士

日本国弁護士・ベトナム外国弁護士

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CAST LAW VIETNAM 代表、弁護士法人キャスト・パートナー。日本国弁護士(大阪弁護士会所属)、ベトナム外国弁護士。 2011年から弁護士法人キャストに参画し、2013年から中国上海、2014年からベトナムへ赴任。2015年より弁護士法人キャストホーチミン支店長、2017年より現職。ベトナムを拠点に、在ベトナム日系企業に対して進出法務、M&A、労務、知的財産、税関および不動産などの分野で幅広いサポートを行う。著書に『メコン諸国の不動産法』(大成出版社、2017年、共著)、『これからのベトナムビジネス』(東方通信社、2016年、共著)など。

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