ベトナムで中古機械を輸入する際の法的規制(決定18号)の概要

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第1 中古機械の輸入についての科学技術省通達23号(23/2015/TT-BKHCN)

ベトナムでは、科学技術省の通達23号(23/2015/TT-BKHCN。以下、「通達23号」といいます)が2016年7月1日から施工され、中古機械の輸入が制限されてきました。
通達23号は、原則以下の要件を満たす中古機械についてのみ輸入を認めるとしてきました(通達23号6条1項)。

・使用期間が10年を超えないこと
・ベトナムの国家技術規則(QCVN)、ベトナムの標準規格(TCVN)、又はG7の安全・省エネ・環境保護基準に従って製造がなされていること

以上が中古機械の輸入に関する原則とされていましたが、一部例外として前記の要件を満たさなくとも、投資プロジェクトに付随する場合や、特別承認を得た場合は輸入できると規定されていました。しかし、前記例外の場合の具体的な手続きが明示されておらず、また10年を超える中古機械の輸入が許可されることは殆どなかった為、日系企業に限らず、ベトナム企業からも非常に非難の多い規制でした。

 

第2 首相決定18号(18/2019/QÐ-TTg)

中古機械の輸入に対する規制を変更する為、4月19日付の首相決定18号(18/2019/QÐ-TTg。以下、「決定18号」といいます)が6月15日から施行されることになりました。

1. 機械設備と生産ラインの輸入原則
決定18号が定める機械設備と生産ラインの輸入原則は、概略以下の通りです(決定18号18条4項)。
・品質の低下や環境汚染の原因となることから、輸出国の基準で廃棄されるべき中古の機械設備、技術ラインの輸入禁止。
・適用法に規定されている安全性、省エネ、及び環境保護の要件を満たしていない中古の機械設備、技術ラインの輸入禁止。
・ベトナム国内での企業の製造活動に直接役立つことを意図した中古の機械設備、技術ラインの輸入のみが認可される。

2. 変更された点
決定18号によって、通達23号の内容が以下のように変更されています。

1)機械設備・生産ライン共通の規制
機械設備と生産ラインについて一部異なる規制がありますが、まずは両者に共通するものについて記述します。

① 韓国基準の追加
前記通達23号は「…G7の安全・省エネ・環境保護基準に従って製造がなされていること」としていましたが、「安全・省エネ・環境保護基準」に、新たに韓国の基準が追加されました(決定18号5条1項b)・6条2項b))。
※決定18号5条1項b)
ベトナムの国家技術規則(QCVN)の安全・省エネ・環境保護基準に従って製造がなされていること(ベトナムの国家技術規則(QCVN)がない場合には、ベトナムの標準規格(TCVN)、G7、又は韓国の基準に従って製造がなされていること)

② 鑑定機関による証明
機械設備と生産ラインの輸入要件が満たされていることは、指定の鑑定機関が発行した鑑定書(証明書)で証明することが必要となりました。
※機械設備がG7若しくは韓国のいずれかの国内で製造されていれば、例外的に鑑定書に代わって、製造メーカーが発行する証明書で代用できます(決定18号8条1項c))
鑑定書には、概略以下の記載が必要とされます(決定18号10条)。
・名称、製造年度、ブランド、製造番号、型式、製造国、製造メーカー
・鑑定日と場所
・鑑定日の対象物品の状況(稼働又は不稼働)
・安全・省エネ・環境保護に関する国家技術規定(QCVN)等を満たしている旨の確認方法
・上記基準に対する鑑定結果
なお、鑑定機関については、科学技術庁が別途リストを公布することとしています(決定18号11条1項)。

2)機械設備
機械設備については、従来通り、前記の「使用期間が10年を超えないこと」という年数制限があります(決定18号6条1項)。変更のあった点は以下の通りです。

① 年数制限の緩和
一部の機械の年数制限が緩和され、金属加工用の旋盤や鋳造機などは製造から20年以内のものまで輸入対象が広がりました(詳しくは、日本貿易振興機構(JETRO)が首相決定18号、別表1を和訳したものがあります。以下にURLを記載しますので、そちらでご確認下さい。
https://www.jetro.go.jp/view_interface.php?blockId=28541324

② 手続きの明確化
年数制限を超過した機械設備を輸入する際の手続きが、決定18号9条の定めに従って行われることになりました。科学技術省が輸入の可否を文書回答するまでの期間が書類提出後15営業日以内とされる等、年数制限を過ぎた中古機械の輸入に関する手続きが明確化されています。

3) 生産ライン(決定18号5条)
① 年数制限の廃止
「使用期間が10年を超えないこと」という年数制限がなくなりました。

② 数値基準
㋐ 設計値に対しての出力もしくは効率の残存能力が85%以上、かつ、
㋑ エネルギーなどの消費率が15%以下
という数値基準が設けられました。

③ その他
・生産ラインに使用されている技術が、政令76号(76/2018/ND-CP)に規定されている移転が禁止又は制限されている技術のリストに記載されていないこと。
・生産ラインに使用されている技術が、経済協力開発機構(OECD)の加盟国のうち少なとも3つ以上の製造業者によって使用されている技術であること。

3. 経過規定
決定18号は、通達23号に基づいて中古機械(機械設備と生産ライン)の輸入ができる場合についても定めています(決定18号16条)。
・通達23号に従って既に科学技術省の輸入許可の承認を得ていたが、未だ承認を受けた中古機械を輸入していなかった場合。
・通達23号に従って輸入許可の申請を行ったが、未だ申請の結果が明らかとなっていなかった場合で、決定18号施行後に輸入許可の承認がなされた場合。
・特定の投資プロジェクトに関する投資承認書又は投資決定書を取得しており、かつ既に通達23号に従って中古機械の輸入を実施していた場合は、通達23号に従って、当該投資プロジェクトに関連する中古機械の輸入を継続することができる。

 

第3 新規制下での注意点

決定18号は、通達23号よりも規制の内容について明確に定められており、中古機械の輸入に関するベトナム企業の要望に応えた変更といえます。もっとも、決定18号は未だ施行されたばかりで、実際にどのような運用がなされるかについては注意深く見守る必要があります。特に、地方によっては通達23号に従った運用が継続される等、統一的な運用がなされないケースもあり得ます。実際に中古機械の輸入を行う際には、規制の変更のみならずその運用に対しても十分な注意を払う必要があります。
 
 
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日本国弁護士・ベトナム外国弁護士

日本国弁護士・ベトナム外国弁護士

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CAST LAW VIETNAM 代表、弁護士法人キャスト・パートナー。日本国弁護士(大阪弁護士会所属)、ベトナム外国弁護士。 2011年から弁護士法人キャストに参画し、2013年から中国上海、2014年からベトナムへ赴任。2015年より弁護士法人キャストホーチミン支店長、2017年より現職。ベトナムを拠点に、在ベトナム日系企業に対して進出法務、M&A、労務、知的財産、税関および不動産などの分野で幅広いサポートを行う。著書に『メコン諸国の不動産法』(大成出版社、2017年、共著)、『これからのベトナムビジネス』(東方通信社、2016年、共著)など。

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