【マレーシア法務ブログ】第1回:雇用関連の法規制①

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初めまして、弁護士の荻原と申します。2017年にTNYグループのマレーシア事務所を開設し、執務を行っております。なお、TNYグループはマレーシアの他に、ミャンマー、タイ、イスラエルに拠点を設立しております。
今後、マレーシアの法規制を中心に解説をさせていただきますが、ミャンマーの法規制につきましても当グループで担当させて頂きますので、よろしくお願いいたします。
第1回となる本稿では、マレーシアで事業を開始する際に必ず直面する、雇用に関する法規制について解説します。

 

1. マレーシアの主要な雇用関連法

マレーシアにおいて雇用関連の法律は多数存在しておりますが、その中で重要な法律としては、雇用法(Employment Act 1955)及び労使関係法(Industrial Relationship Act 1967)が挙げられます。

雇用法は、雇用契約の条件、および使用者と労働者の法律関係を規律する法律であり、残業や休暇、懲戒についての規制が含まれています。雇用法の規定を下回る労働条件は無効となり、雇用法で規定する条件が適用されることになります。
雇用法の特徴としては、日本の労働基準法と異なり一部の労働者にのみ適用されるということが挙げられます。すなわち、雇用法は、賃金が一定額以下の労働者(月額RM2,000以下の労働者)及び肉体労働者に対してのみ適用されます。雇用法が適用されない労働者に関しては、原則として雇用契約で定めた労働条件が適用されることとなります。

また、東マレーシアでは、雇用法の代わりに、サバ州労働条例(Sabah Labour Ordinance 1950)、サラワク州労働条例(Sarawak Labour Ordinance 1952)が適用されます。 

労使関係法は、労使協調の促進及維持を図るための法律であり、使用者、労働者及び労働組合の関係を規律しています。
解雇に関しては、労使関係法において、正当な理由のない解雇に対しては労使関係局に申立を行うことができる旨の規定が存在するため、雇用法の適用対象者のみならず、全ての雇用関係において解雇には正当理由が必要となります。

 

2. マレーシア国民の雇用保護

マレーシアでは、自国民の雇用義務を規定する明文の法律はありませんが、以下のような自国民の雇用保護に関する規制が存在します。
まず、雇用法において、外国人の雇用のためにマレーシア人を解雇してはならないと規定されている他、整理解雇を行う際には、マレーシア人の前に先に外国人を解雇しなければならないとされています。

また、外国人の非熟練労働者を採用するにあたり、人的資源省労働局及びジョブズマレーシアに求人登録を行い、マレーシア人労働者が得られなかった場合に外国人労働者の雇用許可を取得することができます。

 

3. マレーシアの雇用契約

雇用法は、1月を超える期間を特定した雇用契約及び特定の作業に従事する雇用契約で1月を超える(可能性のあるものも含む)ものについては、雇用契約書の作成を義務付けておりますが、上記以外の雇用契約に関しては契約書の作成は義務ではありません。また、雇用契約書の官公庁への提出義務等も課されておりません。
但し、雇用規則(Employment Regulations 1957)により、使用者は労働者に対し一定の事項(労働者の名前及び身分証明書番号、業務内容及び役職、賃金、手当の内容及び額等)を通知した上で、情報を保管しなければならないとされています。

もっとも、法律上雇用契約書の作成義務を負わない場合においても、後日の紛争を避けるために、実務上雇用契約書を作成しておくのが望ましいと考えられます。

 

4. マレーシアの就業規則

マレーシアでは、法律上の就業規則作成義務はなく、作成は任意となっております。もっとも、工場など多数の労働者を雇用する会社等、多くの会社において、労使関係の安定を目指すため就業規則が作成されています。
作成された就業規則は、法的には雇用契約の一部として扱われます。したがって、就業規則の内容について労働者が合意していると言えることが必要となりますので、雇用条件に就業規則が適用される旨記載すること、就業規則を周知させることが必要となります。

 

5. マレーシアの試用期間

マレーシアでは、試用期間に関する法律上の定めは存在しませんが、雇用開始日から3か月間又は6か月間を試用期間と規定するのが実務上一般的な扱いとなっております。
但し、試用期間中の労働者も正社員と同様の権利を有するとされており、試用期間終了後に本採用をしない場合には解雇として扱われ、正当な理由が必要となります。

 

6. まとめ

マレーシアにおいて労使間のトラブルは比較的多く、また法的紛争となると長期化する恐れもあるため、就業規則の整備や雇用契約書の作成等、労働条件の整備は必要不可欠と言えます。

 
 
<本記事に関するお問い合わせはこちら>

TNY国際法律事務所(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)
TNYグループ
日本国弁護士:荻原 星治
連絡先:info@tnygroup.biz
HP: http://www.tny-malaysia.com/

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マレーシア弁護士と共に、会社設立手続き、各種ライセンス取得手続き、雇用契約書や就業規則の作成等の労務関連、売買契約書等の各種契約書の作成、法規制の調査、意見書の作成、DD等のM&A関連、訴訟・紛争案件、不動産譲渡手続き、商標登録等の知的財産権関連等、幅広い法務関連サービスを提供している。多くの日系企業と顧問契約を締結している。 また、ヤンゴン(SAGA ASIA Consulting Co., Ltd.)、バンコク(TNY Legal Co., Ltd)、大阪・東京(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、テルアビブ(TNY Consulting (Israel) CO., LTD.)にも関連事務所を有する。

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