【マレーシア法務ブログ】第10回:労働組合

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TNYグループのマレーシア事務所の弁護士の下田です。今回はマレーシアにおける労働組合について解説していきます。

 

1. 根拠法令等

労働組合は1959年労働組合法(Trade Unions Act 1959)及び1967年労使関係法(Industrial Relations Act 1967)によって規律されています。

 

2. 労働組合法における労働組合

労働組合法上の労働組合は、以下のうちいずれか又は複数の目的を有していなければならないものとされています。

• 労働者と使用者間の良好で調和のとれた労使関係の促進、労働者の労働条件の改善、経済的社会的地位の向上又は生産性の向上を目的とした労働者と使用者の関係の規律
• 労働者と労働者の間、又は使用者と使用者の間の関係の規制
• 労働紛争における労働者又は使用者の代理
• 労働紛争及びそれに関連する事項の実施又は処理
• 特定の職業又は業界におけるストライキ又はロックアウトの促進、組織化又は資金調達、あるいはストライキ又はロックアウト中の組合員に対する給与その他の手当の提供

なお、労働組合には、労働者の組合だけでなく使用者の組合も含まれます。

 

3. 労働組合の設立

労働組合は、一時的か恒久的かを問わず、労働者や使用者が特定の産業、職業又は組織の中に組合を設立することを合意することにより設立されます。

全ての労働組合は、設立日から1か月以内に、同法に基づき労使関係局長に対し登録の申請をしなければなりません。申請には最低でも構成員7名の署名、労働組合規則の添付及び手数料の支払いが必要となります。

登録を受けた労働組合は、組合自身の名義で訴え又は訴えられることができます。

 

4. 使用者の義務

使用者は、以下の行為を行うことができません。

① 雇用契約において労働組合への加入を禁止すること
② 労働組合の構成員であることを理由に採用を断ること
③ 以下の理由により労働者を解雇すること
a. 当該労働者が他の労働者に対し労働組合に加入するよう説得したこと
b. 労働組合の活動に参加したこと
④ 労働組合に所属しているか否かにより昇進又は労働条件に差をつけること
⑤ 一定の利益を示して労働組合の構成員を誘導すること

 

5. ストライキ及びロックアウト

以下の状況下においては、労働者の労働組合はストライキを召集することができず、労働組合の構成員はストライキに参加することができず、使用者の労働組合はロックアウトを宣言することができないものとされています。

① 労働者の労働組合においては、ストライキへの参加資格を有する組合員の2/3以上の同意を秘密投票において得ていない場合
② 使用者の労働組合においては、投票権を有する組合員の2/3以上の同意を秘密投票において得ていない場合
③ 労使関係局長に秘密投票の結果を提出してから7日間が経過していない場合
④ 秘密投票の要件を満たしていなかったことにより、ストライキ又はロックアウトについての秘密投票が無効になった場合
⑤ 労働組合規則に違反している場合
⑥ 人的資源省大臣によってなされた指示又は決定に含まれる事項に関するものである場合
⑦ 同法その他の法律に違反するものである場合

 

6. 団体交渉・労働協約

1 団体交渉の前提としての承認手続
使用者又は使用者が所属する使用者労働組合(以下「使用者等」といいます。)から承認を受けた労働者の労働組合は、団体交渉の申出をすることができます。
上記の「承認」に明確な定義はありませんが、一般的には、「特定の労働組合が使用者の雇用する労働者を代表する権利を有することを使用者が受け入れること」と理解されています。
労働者の労働組合は、使用者等に対して、所定の書式を使って承認の請求をします。
使用者等は、請求の送達から21日以内に、承認をする若しくは承認をしない理由を書面で通知しなければなりません。使用者が承認を拒絶した場合又は使用者が21日内に対応をしなかった場合、労働者の労働組合は労使関係局長に報告をし、報告を受けた労使関係局長は、一定の調査を行った上で人的資源大臣に通知を行い、人的資源大臣は承認が与えられるべきかを決定します。
ある労働者労働組合が承認を与えられた場合、他の労働者労働組合は、承認の付与から3年が経過するか又は承認を受けた労働組合がなくならない限り、同じ労働者又は労働者集団について承認の請求をすることはできないものとされています。

2 団体交渉の内容
団体交渉においては、労働協約の締結に向けて交渉を行うこととなります。労働協約の内容として提案できる事項は、病気休暇や各手当等雇用契約の条件に関する事項のほか、労働組合費の控除等労働組合への便宜に関する事項にも及びます。他方、以下の事項は使用者に専権に属する事項とされ、労働協約において定めることができないものとされています。

① 昇進
② 社内での異動
③ 労働者の採用
④ 人員削減又は組織再編を理由とする整理解雇
⑤ 解雇
⑥ 復職
⑦ 雇用契約に反しない範囲内での仕事の割当

3 労働協約
労働者の労働組合と使用者又は使用者の労働組合との間で一定の合意が成立した場合、労働協約を結ぶことができます。労働協約においては、3年以上の有効期間を定めなければなりません。
当事者は、労働協約の締結から1か月以内に、署名された労働協約の写しを裁判所に寄託します。裁判所に寄託された労働協約は、当事者を拘束するほか、使用者労働組合の全構成員及びその労働協約が関連する事業について雇用されている全労働者を拘束します。

7. 労使紛争

1 労使紛争の定義
労使関係法上、労使紛争は使用者とその労働者との間における、雇用契約の存否、雇用契約の期間、雇用条件に関する紛争と定義されています。

2 労使関係局長による斡旋
労使紛争が存在し、他に解決する手段がない場合、紛争の当事者である使用者等又は労働者労働組合は、労使関係局長に届出をすることができます。
届出を受けた労使関係局長は、労使紛争の迅速な解決を促進するため斡旋を試みることができます。
斡旋による解決が困難な場合労使関係局長はその旨を人的資源大臣に報告し、報告を受けた人的資源大臣は当該労働紛争を労働仲裁裁判所に付託するものとされています。

3 労使裁判所(Industrial Court)
労使裁判所は労使関係法に基づき設立された裁判所で、労使関係から生じた個別紛争や使用者と労働者との間に生じた紛争及び労使関係法上の権利義務に関する事件を取り扱います。この裁判所は3名の審判員、すなわち審判長、使用者の代表者、労働者の代表者から構成されます。
この審判長は必ずしも法曹ではなく、また、同裁判所における手続は原則として人的資源大臣の付託により開始されることから、行政審判所としての性格を有しています。そのため、法律問題に関しては高等裁判所に付託し判断を求めることが義務付けられています。
労働審判所の裁定に対して上訴をすることはできないとされていますが、法律問題に関する争点について高等裁判所の判断(Judicial Review)を求めることは認められています。

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TNY国際法律事務所(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)
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日本国弁護士:下田幸輝
連絡先:info@tnygroup.biz
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マレーシア弁護士と共に、会社設立手続き、各種ライセンス取得手続き、雇用契約書や就業規則の作成等の労務関連、売買契約書等の各種契約書の作成、法規制の調査、意見書の作成、DD等のM&A関連、訴訟・紛争案件、不動産譲渡手続き、商標登録等の知的財産権関連等、幅広い法務関連サービスを提供している。多くの日系企業と顧問契約を締結している。 また、ヤンゴン(SAGA ASIA Consulting Co., Ltd.)、バンコク(TNY Legal Co., Ltd)、大阪・東京(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、テルアビブ(TNY Consulting (Israel) CO., LTD.)にも関連事務所を有する。

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