【マレーシア法務ブログ】第2回:雇用関連の法規制②

TNYグループ マレーシア事務所の弁護士、下田です。第1回に続き、本稿でもマレーシアにおける労働法制について解説します。

 

1.マレーシアの賃金

雇用法(Employment Act 1955) (月額賃金RM2,000以下の労働者や肉体労働者等に適用される)は、賃⾦期間(賃金の支払いの対象となる期間)は1カ⽉を超えてはならないと規定し、また、賃金は賃金期間の最終日から7日以内に支払わなければならないとしているため、毎月最低1回は賃金が支払われることになります。※時間外手当・休日手当・祝日手当については、翌賃金期間の最終日まで。
他方、家の購入費用に充てる等の一定の場合を除き、1カ月分の賃金額を超える額の前払いを行なってはならないとされており、賃金を先に支払う場合にも注意が必要となります。

 

2.マレーシアの最低賃金

2018年11月に最低賃⾦命令(Minimum Wages Order)が改定され、2019年1月1日より最低賃金が全国一律で月額RM1,100 (時間あたりRM5.29)に引き上げられました。
最低賃金制度に違反した使用者に対しては、初犯の場合は労働者1人あたりRM10,000以下の罰金が科され、再犯の場合にはRM20,000以下の罰金または5年以下の懲役刑が科されることとなります。

 

3.マレーシアの労働時間

(1) 雇用法は、原則として1日の労働時間の上限を8時間まで、1週間の労働時間の上限を48時間までと定めています。8時間未満の労働時間となる日が生じる場合には、雇用契約において同じ週の他の日について8時間以上の労働時間を設定することができるとされていますが、この場合でも1日9時間を超える労働時間を設定することはできません。なお、シフト制の場合には例外規定が設けられています。
また雇用法は、上記労働時間数に関する規定に加え、休憩時間に関し、30分以上の休憩時間を挟むことなく5時間以上の勤務をさせてはならないと規定する他、全体の拘束時間に関し、休憩時間を含めた1日の拘束時間が10時間を超えてはらないと規定しています。

(2) 労働局長の許可を得ている場合や、機械・設備のために緊急に行わなければならない業務がある等の場合には、使用者は上記(1)記載の労働時間の制限を超えて時間外労働を命じることができますが、その場合であっても1カ月あたりの時間外労働の上限は104時間となります。

(3) 同法が適用される労働者が「所定労働時間」(雇用契約で定めた労働時間又は8時間のうち短い時間)を超えて労働をした場合、時間外労働手当(時間給にその50%以上を上乗せした額)を支給しなければなりません。
時間外労働手当の計算にあたっては、拘束時間が10時間を超えた場合には、その後の拘束時間が休憩時間を含めすべて時間外労働時間とみなされてしまうことに注意が必要です。

 

4.マレーシアの休日・祝日

(1) 雇用法によれば、使用者は労働者に週に1日の休日を与えなければなりません。使用者は原則として、休日における勤務を労働者に強いることはできないとされていますが、一定の場合には例外が認められます。
もっとも、使用者が労働者を休日に労働させた場合には、休日割増手当を支払わなければなりません。具体的には、月給制により雇用されている労働者の場合、休日における労働時間が「所定労働時間」の半分以下であれば賃金の半日分、労働時間が「所定労働時間」の半分を超えて1日以下の場合、通常の賃金の1日分、労働時間が「所定労働時間」を上回る場合には、通常の時間給の2倍以上の時給額で計算された金額を支払う必要があります。

(2) 労働者は、雇用法に基づき①公示された祝日のうち11日、及び②祝日法(Holidays Act 1951)に基づいて指定される祝日について、有給休暇を取得する権利を有します。①については、国家記念日・国王誕生日・州首長の誕生日(または連邦直轄市デー)・労働者の日・マレーシアデーの5日間が必ず含まれます。残りの6日については一次的には雇用者が指定しますが、雇用者と労働者の合意により他の日に置き換えることができます。また②についても、使用者は指定された祝日に代えて、別の日を休みとすることができます。
使用者は労働者に対して祝日における勤務を求めることができますが、その場合には、有給休暇としての1日分の賃金の支払いに加え(実際の就業時間が「所定労働時間」下回る場合も含む)、通常の賃金額の2日分を支払わなければなりません。また、その日の勤務時間が「所定労働時間」を超える場合、使用者は通常の時給額の3倍以上の時給額で計算した金額を支払わなければなりません。

 

5.マレーシアの年次有給休暇

雇用法は年次有給休暇についても定めており、勤続年数が2年未満の場合は年8日、2年以上5年未満の場合は年12日、5年以上は年16日が与えられます。また、労働者は有給取得権を与えられた年もしくはそれに続く1年の間に有給休暇を取得しなければならず、当該期間内に有給休暇を取得しなかったときはその権利を喪失します。もっとも、労働者が会社の要請により有給休暇の取得権の全部または一部を行使しない旨を書面により同意した場合は、有給休暇に代わる手当の支払いを受けることができます。
不正行為を理由とする解雇の場合を除き、雇用契約がいずれかの当事者からの申入れによって終了されたときは、使用者には労働者に対し未取得の有給休暇の日数に対応する賃金相当額を支払う義務が生じます。

 

6.マレーシアの病気休暇

雇用法は、病気休暇についても定めています。病気休暇は医師による診断を条件に付与されるもので、その日数は勤続年数が2 年未満の場合には年14日、2 年以上5 年未満の場合は年18日、5 年以上の場合は年22日まで取得が認められます。入院が必要な場合には、年60日まで取得が認められます。
病気休暇は医師による診断を受けていることを条件とするものであるため、そもそも医師による診断を受けていない場合には無断欠勤とみなされます。診断を受けていたとしても休暇の開始から48時間以内に使用者に連絡をせず、かつ連絡をしようとしなかった場合も同様に扱われます。

 
 
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