【マレーシア法務ブログ】第5回:雇用関連の法規制⑤

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TNYグループのマレーシア事務所の弁護士の荻原です。今回は解雇以外の雇用契約の終了原因について解説していきます。
 

 

1. 労働者からの雇用契約終了の通知

使用者から雇用契約を終了させる場合(解雇)と異なり、労働者は特段の理由なく雇用契約を終了させることができます。

もっとも、労働者側から雇用契約を終了させる場合であっても、事前通知期間を遵守する必要はあります。この事前通知期間は契約において定められます。但し、雇用法(Employment Act 1955)の適用対象となる労働者(原則として、月額賃金RM2,000以下の労働者や肉体労働者等に適用されます)との雇用契約においては、使用者側からの事前通知期間と労働者側からの事前通知期間は同じでなければならず、また、雇用契約において事前通知期間の定めがない場合には事前通知期間は雇用法が定める期間を下回ることができません(勤続2年未満の場合4週間、勤続2年以上5年未満の場合6週間、勤続5年以上の場合8週間)。

 

2. フラストレーションによる雇用契約の終了(Frustration of Contract)

特殊な場合ですが、フラストレーションと呼ばれる事由により雇用契約が終了することがあります。これは、労働者がコントロールできない事情により労働者による労務の提供ができなくなった場合(具体的には労働者が病気や障害により労務を提供できなくなった場合や、業務に必要なライセンスが取り消された場合)に契約を終了させるものです。

労務の提供ができなくなったか否かは、生じた事由の性質のほか、欠勤の期間、労働者が置かれている環境、その労働者が担当していた業務の規模・性質・緊急性等を考慮して実質的に判断されます。

もっとも、通常、使用者から労働者に対する通知により労働契約が終了すること、雇用契約を終了させることができるだけの正当な理由がないと労働者が考えた場合には、労使関係裁判所に申立をすることができることから、その実質は解雇の一類型といえます。

 

3. 契約期間の満了(有期雇用契約)

(1) マレーシアにおける有期雇用契約の有効性
マレーシアにおいても、雇用契約に期間の定めを設けることができます。有期雇用労働者も、無期雇用の場合と同様、雇用法の適用対象となる場合には、同法の保護を受けることになります。

 
(2) 雇用期間に関する規制
雇用法は雇用期間の上限・下限についての定めを置いておらず、業務の必要性に応じて雇用期間を設定することができます。
もっとも、雇用期間の満了を理由とする雇用契約の終了を主張するためには、その契約が実質的にみても有期雇用契約であること(”genuine fixed term contract”)が必要とされています。

有期雇用契約としての実質を欠く場合、その契約は無期雇用契約と同視され、雇用期間満了(更新拒絶)の通知は解雇として扱われることになります。裁判例を見ると、有期雇用契約としての実質を有するか否かの判断に際しては、雇用期間の定めが明確に定められていたか、契約の更新が専ら使用者の裁量に委ねられていることが明確にされていたかといった点が考慮されていますが、雇用期間を定める実質的な必要性(担当する業務が季節的なものであること、特定のプロジェクトを担当させることを目的としていること、労働者の年齢等)を重視する裁判例もあります。
有期雇用契約が無期雇用化するリスクについては、下記「4. 定年退職」「(3) 有期雇用契約と定年の関係」もご参照ください。

 

4. 定年退職

(1) 最低退職年齢法
最低退職年齢法(Minumum Retirement Act 2012)は、労働者の最低退職年齢を60歳と定めています。

同法は、最低退職年齢よりも前に労働者を退職させることはできないとしています。また、雇用契約又は労働協約において最低退職年齢を下回る年齢が定められていた場合、その定めは無効となり同法が定める最低退職年齢に置き換えられることになります。

 
(2) 適用除外
同法は、以下の労働者には適用されないものとされています。
 
・連邦政府、州政府、法定機関、地方機関によって雇用され給与を支払われている者
・試用期間中の者
・見習契約に基づき雇用される者
・マレーシアの国籍を有しない者
・家事労働者
・パートタイム労働者(その雇用契約においてフルタイム労働者の通常の労働時間の70%以下の労働時間が定められている者)
・臨時雇用契約に基づき雇用される学生(就学休暇中の者及び定時制で就学する者を除く)
・(更新を含め)24か月以下の期間の有期雇用契約に基づき雇用される者
・(更新を含め)24か月を超え60か月以下の期間の有期雇用契約に基づき雇用され、月給がRM2万以上の者
・最低退職年齢法の施行日(2013年7月1日)よりも前に55歳以上の年齢で退職し、その後引き続き再雇用された者
 
また、最低退職年齢法は、任意退職制度による退職や年齢以外の理由による雇用契約の終了は同法にいう「退職」に含まれないとしています。

 
(3) 有期雇用契約と定年の関係
「(2)適用除外」で述べたとおり、最低退職年齢法は、年齢以外の理由による雇用契約の終了は同法の規制対象となる「退職」に含まれないとしています。

しかし、裁判例の中には、適用除外の対象とならない有期雇用労働者には同法が適用されることを根拠に、そのような有期雇用労働者は契約上の雇用期間を超えて60歳まで就労をする権利があると判示したともとれるものがあります。この裁判例の考え方が及ぶ範囲やこの考え方が他の裁判でも採用されるかは定かではありませんが、このような裁判例があることには注意を払う必要があります

 
 
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マレーシア弁護士と共に、会社設立手続き、各種ライセンス取得手続き、雇用契約書や就業規則の作成等の労務関連、売買契約書等の各種契約書の作成、法規制の調査、意見書の作成、DD等のM&A関連、訴訟・紛争案件、不動産譲渡手続き、商標登録等の知的財産権関連等、幅広い法務関連サービスを提供している。多くの日系企業と顧問契約を締結している。 また、ヤンゴン(SAGA ASIA Consulting Co., Ltd.)、バンコク(TNY Legal Co., Ltd)、大阪・東京(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、テルアビブ(TNY Consulting (Israel) CO., LTD.)にも関連事務所を有する。

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