【マレーシア法務ブログ】第11回:商標の定義

TNYグループのマレーシア事務所の弁護士の荻原です。今回からマレーシアにおける商標制度について解説していきます。

 

1.根拠法令等

マレーシアの商標制度は、商標法(Trade Marks Act 1976)及び取引表示法(Trade Description Act 2011)によって規律されています。
商標法はマドリッド協定議定書への加盟を主な目的として改正が行われました(以下「新商標法」といいます)が、執筆時点(2019年11月13日時点)ではまだ公布はされていません。

 

2.定義

新商標法において、「商標」は、

any sign capable of being represented graphically which is capable of distinguishing goods or services of one undertaking from those of other undertakings

ある事業体の商品又はサービスを他の事業者のそれと区別することを可能とする、画像として表現可能な標章

と定義されています。
また、商標の主たる要素である「標章」は、

includes any letter, word, name, signature, numeral, device, brand, heading, label, ticket, shape of goods or their packaging, color, sound, scent, hologram, positioning, sequence of motion or any combination thereof

文字、単語、名称、署名、数字、図案、焼印、織端、ラベル、下げ札、商品・梱包の形状、色、音、香り、ホログラム、位置、動き及びこれらの組み合わせが含まれる

とされ、「音」、「香り」、「ホログラム」等も商標として登録の対象となりうることが明記されました。

もっとも、「商標」の定義の中に「画像として表現可能な」(capable of being represented graphically)という表記があることから、「音」や「香り」単独での商標登録が認められるかについては明確ではない部分が残っています。また、「色」については、従来は付随的な要素として位置付けられていましたが、新商標法の下では「色」単体での商標登録も認められうることとなります。

「標章」に含まれうる要素のうち、「文字」、「単語」、「名称」、「署名」、「数字」、「商品・梱包の形状」、「色」、「音」、「香り」は字義どおりの意味で用いられるものと考えられます。
「図案」(device)については、「3.立体商標について」で述べるとおり、立体商標を含むかを巡り議論が存在しています。
「ブランド」(brand)は、現代では無形的な価値も含めた意味で使われることもありますが、ここでは伝統的な意味に近い、商品に焼き付け等の方法で記された名称等の意味で用いられているものと思われます。
「織端」(heading)は、繊維製品の端に織り込まれ又は縫い込まれた糸を意味します。
「ラベル」(label)は、広口瓶やボトル等に貼り付けられた名称等が印字された紙を意味します。
「下げ札」(ticket)は、刻印され商品に緩く取り付けられた金属片等を意味します。
「ホログラム」(hologram)は、図形等の標章がホログラフィー等の方法により見る角度によって変化する標識を意味します。
「位置」(positioning)とは、図形等の標章とその付される位置との組み合わせにより構成される標識を意味し、図形等の標章だけでは識別力の要件(次回以降に解説をします。)を満たさない場合に、その図形等の標章を付す位置を組み合わせることにより、識別力の要件を満たすことを意図するものです。
「動き」(sequence of motion)とは、図形等の標識が時間の経過に伴って変化する標識を意味します。

また、「標章」はその定義において「含む」(includes)という表現を用いているため、上記以外のものについても商標登録が認められる余地があります。

 

3.立体商標について

新商標法において、梱包又は商品の形状が商標登録の対象となりうることが明記されたものの、立体商標全般が登録の対象となりうることを明示する規定は置かれませんでした。そのため、立体看板のような立体商標を商標として登録できるかは、依然として解釈に委ねられています。

マレーシアにおいて、立体商標を登録しうる可能性を示唆した裁判例として、Kraft Foods Schweiz Holdings GmbH v Pendaftar Cap Dagangan事件([2016] 11 MLJ 702)があります。

同判決は、最終的に、原告が登録申請をした商標が十分な識別力を有していることについて証明がなされていない等の理由から商標としての登録を認めませんでしたが、以下の理由から、立体商標も登録に対象になりうるとの判断を示しました。

① マレーシア商標法はイギリス商標法を基礎としているため、商標の定義についてイギリスの裁判例を参照することができる。そして、イギリス貴族院はSmith Kline and French Laboratories Ltd v Sterling-Winthrop Group Ltd 事件([1975] 2 All ER 578)において立体商標も商標に含まれうると判示している
② 「標章」の定義に含まれている「図案」はその辞書上の意味からすれば、立体商標を含みうる
③ 「標章」の定義は「含む」という文言を用いていることから、「標章」の範囲は広く捉えられるべきである

そのため、識別力等の他の要件を満たせば、マレーシアにおいても梱包又は商品の形状以外の立体商標の登録が認められるものと考えられます。

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