【マレーシア法務ブログ】第12回:商標登録の出願①

TNYグループマレーシア事務所の弁護士の下田です。今回は、マレーシアにおける商標登録の出願手続について解説していきます。

 

1. 概論

登録商標は商標法に基づく登録によって取得される財産権であり、登録商標の所有者は商標法に基づく権利を有し同法に基づく救済を受けることができます。
マレーシアの商標登録手続は、1976年商標法(Trade Marks Act 1976)及びその下位規範によって規律されています。同法は今年改正が行われ、12月9日付で公布されましたが、執筆時点(2019年12月15日時点)ではまだ施行日の指定はされていません。(以下では、改正後の商標法を「新商標法」と表記します。)

 

2. 申請権者

1976年商標法は、商標登録の出願について、自身が使用し又は使用する予定である商標につき正当な権原を有すると主張する者は、当該商標の登録を出願することができると定めています。

他方、新商法は、商標の真正な所有者であると主張する者は、以下の場合に、商標の登録を出願することができると定めており、1976年商標法では明示されていなかった専ら他者に商標を使用させる目的での登録の出願が規定されています。

① 取引の過程で商標を使用している又は使用するつもりである場合
② 取引の過程で他の者に商標を使用することを許可する又は許可するつもりである場合

 

3. 予備的助言制度

(1)1976年商標法
1976年商標法は、商標の出願を希望する者が、登録官に対して、当該商標が商標の登録要件である識別力を有していると一応考えられるか否かについて助言を求めることができる予備的助言制度について定めています。

予備的助言制度に基づき肯定的な助言を得たうえで、当該助言を受けてから3か月以内に当該商標の登録出願をしたものの、調査又は審査の結果、登録官が当該商標は識別性を有さないとの理由により拒絶の通知をした場合は,出願者は通知の受領から1か月以内に出願を取り下げることにより,納付済みの出願手数料の返還を受けることができます。

(2)新商標法
新商標法も、商標登録の出願を希望する者は登録官に対して当該商標が登録可能な商標であるかどうかについて予備的な助言及び調査結果を求めることができる旨を定めています。
そして、1976年商法と同様、肯定的な助言を得たうえで一定期間内に当該商標の登録出願をしたものの、更なる調査又は審査の結果、登録可能な商標ではないという趣旨の拒絶の通知を受けた場合、一定期間内に出願を取り下げることにより納付済みの出願手数料の返還を受けることができるものとされています。

このように、新商標法は1976年商標法とほぼ同様の制度を維持していますが、1976年商標法が「識別力」に関する「助言」に限定していることに対し、新商標法は「登録可能」か否かについての「助言及び調査結果」を求めることができるとしており、登録官から得ることができる情報の対象が拡張されています。

 

4. 申請

(1)申請の単位
1976年商標法は1つの申請で2 以上の分類に属する商品又はサービスを対象とすることはできないとしていましたが、新商標法は1つの申請で複数の分類に属する商品又はサービスを対象とすることができると定めています。

(2)連続商標
新商標法は、1976年商標法同様、本質的に同一である複数の商標を「連続商標」として単一の願書で出願することができるものとしています。新商標法によれば、具体的には以下の場合に連続商標としての申請ができるものとされています。

① 重要な特徴について相互に類似している場合
② 以下の事項についてのみ差異がある場合
(i) それらの商標が使用され又は使用される予定の商品又はサービスに関する記述又は表示
(ii) 数量、価格又は品質に関する記述又は表示
(iii) 商標の独自性に本質的な影響を与えない標準フォント
(iv) 商標の一部の色

1976年商標法と比較すると、②(ⅱ)から「場所の名称」が除外された点、②(ⅲ)が識別性を有さずかつ商標の独自性に本質的な影響を及ぼさない「その他の事項」の差異から「標準フォント」の差異に限定された点、②(ⅳ)が商標の「色」から「商標の一部の色」と改められた点に違いが存在します。

 

5. 登録審査

(1)形式審査
商標登録の申請に際しては申請書の提出や手数料の支払が必要となるほか、ローマ字以外で構成される商標については補足資料(音訳、翻訳、その他所定の資料)の提出が必要となります。形式審査においては、これらの資料に不備がないかが審査されます。
また、所定の期間内に手数料の支払いや補足資料の提出が提出されない場合、申請は取り下げられたものとみなされます。

(2)実体審査
形式審査が終了すると、実体審査が開始されます。
実体審査の詳細については、次回以降に解説します。

 

6. 早期審査

商標の登録申請者は、所定の期間内に、所定の料金の支払いとともに登録官に対し申請書を提出することにより早期審査を請求することができます。1976年商標法は同制度についての規定を置かず、商標規則(Trade Marks Regulations 1997)によってのみ定められていましたが、新商標法は同制度について明文の規定を置いています。

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