【ミャンマー法務ブログ】第9回:ミャンマーの汚職に関する法制度

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本稿では、ミャンマーの汚職に関する法制度について解説します。

 

1. ミャンマーでの汚職の現状

NGOトランスペアレンシー・インターナショナルが発表した2018年腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index)によると、ミャンマーは180位中132位に位置付けられています。かかる順位が示しているとおり、ミャンマーにおいては、場面によっては賄賂を要求され、特に裁判や許認可の取得の際に金銭を渡す事例が多く存在します。しかし、安易にこのような要求に応えることは法律上非常にリスクが高いです。ミャンマーにおいても贈収賄を禁止する法令が存在し、その中心となる法律が、2013年から施行された汚職禁止法(以下「本法」という。)です。そこで、本稿においては、本法を中心に解説します。

 

2. ミャンマーでの汚職の定義及び処罰対象行為

「贈収賄」とは、職務の不正利用、適法行為の不作為、利益供与、または法律に基づく権利の不法な禁止等を目的として、権限を有する者が、自己、第三者、もしくは組織のため、利害関係者から、直接もしくは間接に、賄賂の提供、受領、取得、要求、申込、約束、もしくはその他の手段により賄賂を入手するための協議を意味します。

次に、「賄賂」とは、贈収賄を目的として、金銭、財物、贈物、サービス、もしくは娯楽その他の違法な利益を正当な対価を得ることなく受領又は提供することと規定されています。
刑罰は主体によって異なる重さが規定されており、政治家が贈収賄の主体の場合には最も重く15年以下の懲役又は罰金の併科、次いで権限者 の場合には10年以下の懲役又は罰金の併科、政治家及び権限者以外の者の場合には7年以下の懲役又は罰金の併科が規定されています。

 

3. ミャンマーの汚職禁止法の適用範囲

ミャンマー国内の行為又はミャンマー国民およびミャンマーの永住者が国内若しくは海外において行う行為が適用対象となる旨が規定されています。したがって、ミャンマー国内の行為については、行為主体がミャンマー国民であるか外国人であるかにかかわらず処罰対象となります。他方、ミャンマー国外の行為については、ミャンマー国民およびミャンマーの永住者のみが処罰対象となり、外国人の行為については処罰対象外とされます。

 

4. ミャンマーのその他の法令

汚職禁止法以外の汚職に関する一般的として刑法が存在します。しかし、刑法は収賄に関する処罰のみ規定しており、贈賄に関する処罰規定を有していません。それ以外の特別法としては、商業税法などが特定の場面や特定の者との間における贈収賄行為を処罰する旨を規定しています。
また、汚職禁止に関する条約の加盟状況について、ミャンマーは、国際連合腐敗防止条約に2005年に署名し、2012年に批准しています。

また、汚職禁止法上は贈収賄に関する例外は規定されていないものの、2016年4月に大統領府より各省庁に出された指令においては、以下の場合は例外として認められる旨が規定されています。
(a)25,000チャットを超えない贈物(1年間に団体又は個人が100,000チャットを超えて贈物を受領してはならない)
(b)贈物が公的な役職によるものではなく、家族又は個人的関係に基づく場合(当該贈物は5条の禁止規定に影響を与えない)
(c)ティンジャンやクリスマスなどの特別な日における1年に1回の表敬としての贈物は100,000チャットを超えてはならない

 

5. おわりに

以上のとおり、汚職禁止法は贈収賄に関する処罰対象行為を広範に規定しており、ミャンマーにおいても、他の先進国と同様に政府の職員等と接触する際には細心の注意が必要であり、社交的儀礼行為についていかなる範囲の行為が除外されるか等を慎重に見極める必要があるといえます。なお、ミャンマーにおける贈賄行為であっても、日本の不正競争防止法、英国の贈収賄法及び米国の海外腐敗行為防止法の適用があり得ることについても留意が必要です。

 
 
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