【ミャンマー法務ブログ】第1回:雇用関連の法規制

初めまして、弁護士の堤と申します。2012年よりミャンマーで業務を開始し、TNYグループとして2016年にタイ、2017年にマレーシア、2018年にイスラエルに拠点を設立しております。
今後私の連載はミャンマーの法規制を中心に解説しますが、マレーシアに関しても当グループで担当させて頂きますのよろしくお願いいたします。
第1回となる本稿では、ミャンマーで事業を開始する際に必ず直面する、雇用に関する法規制について解説します。

 

1. ミャンマーの採用に関する規制

ミャンマーにおける採用方法について法的規制は存在しません。会社が労働者を募集する場合、主な選択肢としては、①労働事務所を通じた募集、②人材紹介会社の利用、③新聞や雑誌への求人広告の掲載、④知り合いの紹介等が存在します。②を利用する場合、ミャンマーにおいても、人材紹介業を適法に行うためにはライセンスが必要であり、無用な紛争を避けるため、ライセンスを有する人材紹介会社を利用することが望ましいと解されます。
また、最近はインターネット上の求人を専門とする人材紹介会社も増加しつつあります。日系の人材紹介会社も複数存在します。

 

2. ミャンマー国民の雇用義務

隣のタイと異なり、国民の雇用義務は厳格ではありません。投資法上、熟練技術を必要としない業務については、ミャンマー国民のみを雇用しなければならないとされていますが、単純労働を行う労働者に外国人を採用することは通常ないため、実務上は特に障害になっていません。

熟練技術を必要とする業務においては、原則としてミャンマー国民の雇用義務は規定されておりません。ただし、経済特区法に基づく投資許可を取得した会社においては、熟練技術を必要とする事業のためにミャンマー国民の熟練工、技術者及び専門職員を雇用する場合、原則として、事業開始から2年で25%以上、次の2年(事業開始から4年)で50%以上、更に次の2年(事業開始から6年)で75%以上の割合となるよう、ミャンマー国民の雇用義務を負います。

 

3. ミャンマーの雇用契約

雇用契約については法律上詳しく規定されています。すなわち、会社は、政府における常勤労働者、研修者及び試用期間中の者を除き、労働者の雇用開始後30日以内に労働者と雇用契約を締結しなければなりません。単に雇用契約を締結するのみならず、以下の表に記載している事項を雇用契約書に記載しなければならない旨規定されています。

①職種、②試用期間、③給与、④勤務地、⑤契約期間、⑥労働時間、⑦休暇及び休日、⑧時間外労働、⑨勤務中の食事の手配、⑩住宅施設、⑪医療手当、⑫仕事及び出張における車の手配、⑬労働者が遵守すべき規則、⑭研修参加後に継続して勤務しなければならない期間、⑮退職及び解雇、⑯期間満了時の対応、⑰契約において規定されている遵守すべき義務、⑱合意退職、⑲その他、⑳契約書の規定の修正及び追記の方法、㉑雑則

 
雇用契約締結後、当該契約書の写しを管轄労働事務所に提出し、承認を得なければなりません。この規制がミャンマーの実務上は非常に問題になっています。すなわち、原則として政府が公表しているモデル雇用契約書を用いなければ原則として労働事務所からの承認を取得できない状況になっています。労働・入国管理省は2017年に雇用契約書の雛形を公表しています。当該雛形はミャンマー語版のみであり、工場での労働者を想定しています。そのため、事務所で働く労働者に合わない内容が含まれております。

また、通常は雇用契約書は各会社の事情に応じて個別に作成するものであり、一律に同じ内容を用いることには無理があります。それにもかかわらず、実務上、当該雛形の使用を労働事務所の職員が強制し、当該雛形以外の条項を用いた場合に承認しない事例が多数生じており、会社が独自に雇用契約書を作成する際の妨げとなっています。

雇用契約書の言語に関する法的規制は存在しないものの、当該規制との関係で、労働事務所の職員がミャンマー語以外の言語を解さないことが多いため、事実上ミャンマー語版の提出も強制されます。

 

4. ミャンマーの就業規則

ミャンマーにおいては、一定人数以上を雇用したとしても就業規則の作成義務などは課せられておらず、法律上は就業規則について何ら規定されていません。しかし、上記のとおり雇用契約書を各会社が自由に作成できないため、就業規則を別途作成し、その中に会社独自の基準を盛り込む場合が多く存在します。

 

5. まとめ

ミャンマーにおいても、近時、法令の遵守状況が徐々に厳しくチェックされるようになってきたため、必ず人を雇用した際にはミャンマーの労働法に沿った雇用契約書を用いて雇用契約を締結する必要があります。

 
 
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TNY国際法律事務所 TNYグループ
日本国弁護士:堤雄史
連絡先:yujit@tny-legal.com
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会社設立手続き、各種ライセンス取得手続き、雇用契約書や就業規則の作成等の労務関連、売買契約書等の各種契約書の作成、法規制の調査、意見書の作成、DD等のM&A関連、訴訟・紛争案件、不動産譲渡手続き、商標登録等の知的財産権関連等、幅広い法務関連サービスを提供している。 ヤンゴン(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)、クアラルンプール(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)、バンコク(TNY Legal Co., Ltd)、テルアビブ(TNY Consulting (Israel) CO., LTD.)東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、メキシコシティ(TNY Legal (Mexico) Co.,Ltd.)に拠点を有する。

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