【ミャンマー法務ブログ】第6回:ミャンマーの弁護士、裁判官等

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第6回となる本稿では、ミャンマーの弁護士や裁判官等について解説します。


 

1. はじめに

ミャンマーに限らず、いかなる場所、事業分野においても予想外の問題が生じ、話し合いで解決できない場合には紛争解決制度を利用することとなります。合弁契約等の契約書を締結する際には、紛争解決に関する条項も入れることが一般的です。

紛争解決制度は大きく分けて裁判による方法と仲裁による方法が存在し、国によって制度内容が異なる点もあるため、紛争に備え、事業を行う国の裁判および仲裁制度について把握する必要があります。また、その際には、制度のみならず、制度の担い手である法曹の現状も認識する必要があります。

 

2. 法曹の概要

ミャンマーの法曹を構成する職種は日本と同様であり、日本の裁判官に相当する司法官(Judicial Officer)、検察官に相当する法務官(Law Officer)、弁護士に相当する法廷弁護人(Advocate)と上級抗弁人(High Grade Pleader)(以下、総称して「弁護士」という。)が存在します。

もっとも、日本と異なり、資格を得るための方法は職種毎に異なり、研修も職種毎に異なるため、それぞれが全く別の職種であるとの考えが強く、同じ法曹であるとの一体感は少ないです。

 

3. 法務官

法務官は連邦司法長官府(Union Attorney General’s Office)の一つの部署である検察部に所属します。

法務官になるためには、司法長官府が実施する国家試験に合格する必要があり、その試験科目は大別すると、法学(民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法・証拠法・特別法)、一般知識、英語、ミャンマー語の各筆記試験と面接試験となっていますが、同試験は定期的に実施されるものではなく、人員に不足が生じたときなど、必要に応じて不定期に実施されます。合格者は、公務員一般に要求される研修や法務官独自の研修を経て、法務官として採用されることになります。
※参考:鮎京正訓編『アジア法ガイドブック』298頁以下(名古屋大学出版会、2009年)

 

4. 司法官

司法官は、裁判所に所属します。
司法官は、最高裁判所によって選任されることを除けば、基本的に法務官と同様の制度によって採用されています。

 

5. 弁護士

弁護士は、法廷弁護人と上級抗弁人の2種類に分けられます。両者の差異は、法定弁護人は最高裁判所を含めた全ての裁判所での立会いを認められているのに対し、上級抗弁人は最高裁判所における立会いが認められていません。しかし、それ以外には両者の権限に差異はありません。

上級抗弁人になるためには、ミャンマーの大学の法学部を卒業して法学士を取得後、1年間のインターンを経験する必要があります。インターンの時代には、10年以上のキャリアを有する法廷弁護人の下で一定の回数以上の裁判に立ち会った上、その1回毎に裁判官からの推薦状をもらい、一定数以上の推薦状を添付した申請書を最高裁判所に提出し、上級抗弁人の資格を取得します。

法廷弁護人になるためには、上級抗弁人の資格を取得後、3年間かけて、タウンシップ裁判所5ヶ所の裁判官、地区裁判所1ヶ所の裁判官、州・管区高等裁判所1ヶ所の裁判官から、合計7枚の推薦状を取得した上で、最高裁判所に法廷弁護人への昇格を申請します。最高裁判所から法廷弁護人への昇格について認可されれば、すべての裁判所で立会いが可能となります。

最高裁判所は、各弁護士に対し、顔写真入りの身分証明書を交付しており、それぞれ資格を取得した順に番号が付されています。ミャンマー国内の弁護士数は、2012年時点で法廷弁護人が約8,000名、上級抗弁人が約30,000名とされています。

なお、弁護士会として1944年に設立されたヤンゴン弁護士会(Yangon Bar Association)が存在します。同弁護士会は、弁護士に依頼する経済的余裕のない貧しい国民の利益・権利を擁護するため、当時の弁護士が自主的に設立した民間団体です。日本と異なり、弁護士の弁護士会への加入は強制ではなく、任意加入となります。そのため、加入していない弁護士も多く存在します。
また、日本と異なり、外国法弁護士制度も存在しません。

 

6. 小括

以上より、ミャンマーの弁護士資格はミャンマーの大学の法学部を卒業して一定の研修を行うだけで取得可能であり、日本のような試験が存在しません。そのため、知識や能力の格差が大きく、ローカルの弁護士に依頼することは慎重に検討する必要があります。

ミャンマーには筆者の所属する法律事務所も含め、日本の弁護士が常駐している事務所が4つ存在しますが、ローカルの弁護士に依頼した結果、期待した対応をしてもらえずに筆者のような外資系法律事務所に相談に来る日系企業も多く存在します。

 
 
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TNY国際法律事務所 TNYグループ
日本国弁護士:堤雄史
連絡先:yujit@tny-legal.com
HP:http://tny-myanmar.com

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