【ミャンマー法務ブログ】第2回:社会保障法

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第2回となる本稿では、ミャンマーの社会保障法について解説します。

 

1. ミャンマーの社会保障法の制定

社会保障法(The Social Security Act, 1954)を改正する形で、2012年8月31日に新たな社会保障法(The Social Security Law, 2012)が制定されました(社会保障法104条)。同法は2014年4月1日に施行され、同月2日に施行細則(Notification No.41/2014, Ministry of Labor, Employment and Social Security)が制定されました。

 

2. ミャンマーの社会保障制度への加入対象

施設(製造業、政府機関、開発機関、金融機関、株式会社、店舗等)において5名以上の労働者を雇用している会社は、社会保障制度に加入しなければなりません。強制加入の対象外の業種は非営利組織や国際機関等に限定されており、使用者の家族以外の労働者は原則として社会保障制度の強制加入の対象となります。日本と同様に、強制加入義務のない業種の使用者及び労働者であっても、任意に社会保障制度に加入することは可能です。
社会保障事務所は登録後、使用者に対して登録証明書を発行し、労働者に対して社会保険カードを発行しなければなりません。

 

3. ミャンマーの社会保障料

社会保障に関する使用者及び労働者の社会保障料は以下のとおりであり、いずれの負担率も対象労働者の月給に基づきます。但し、現在は月給の上限を30万チャットとして運用されており、30万チャット以上の月給労働者は、一律30万チャットを基準として社会保障料の計算がなされることとなります。

基金の種類と負担率は次の通りです。

[1] 1年間の労災永続障害給付受給者及び遺族給付受給者が全労働者の5%未満の場合には、当該負担率が継続される。
次のいずれかの場合には、当該状況を継続しないよう社会保障委員会より警告を受ける。①労働者が50人未満の場合に災永続障害給付受給者及び遺族給付受給者が2人以上いる場合、②労働者が50人以上の場合に災永続障害給付受給者及び遺族給付受給者が5%以上いる場合。当該状況が継続した場合、負担率は1.5%に増加する。

 
使用者は労働者が負担する社会保障料を労働者の給与から控除し、使用者が負担する社会保障料とともに、社会保障事務所に対して支払わなければなりません。支払時期につき、使用者は上記①及び⑤については、社会保障法の施行日から支払を開始しなければならないものの、②ないし④については、労働省が通知により決定した日より支払いを開始しなければならず、現時点(2019年2月7日時点)において当該通知は発布されていません(2019年2月7日時点)。

基準となる月給について、最低賃金法により定められた最低賃金を下回ることはできません。当該月給には、基本給、特別手当、時間外手当、その他の毎月の追加的支払が含まれます。月給を判断する際は、歴月が基本となります。

支払期限について使用者は、当該月の終了後15日以内に負担を支払わなければなりません。支払を遅延した場合、使用者は保障料の10%(継続して保障料を支払わなかった場合には、未払い保障料総額の10%)を制裁金として支払わなければなりません。

 

4. ミャンマーの社会保障制度の使用者の義務

使用者は社会保障料や給付金の支払記録を、規定に従って保管しなければなりません。また、使用者は規定に従い、①労働者の出勤記録、②新規雇用者、労働者の労務の変更、雇用の停止・退職・解雇、③報酬の増額及び支払、④労働者、支配人、代表者及びそれらの変更についての記録を正確に保管し、所定のタウンシップ社会保障事務所に提出しなければなりません。当該届出は、いずれも各事由が生じた日から10日以内に行わなければなりません。

 

5. ミャンマーの社会保障制度の内容

社会保障制度の内容としては、主に以下の内容が規定されています。

①健康社会医療制度
社会保障加入者のうち、加入期間に応じて定められた期間において負担を支払っていた場合、治療の提供を受ける権利を有する。
治療開始日から26週を限度として、病院又は診療所において治療を受ける権利を有する。但し、継続的疾患等については52週を限度として治療を受けることができる。
社会保障加入者は、病気発症時に6か月以上当該会社にて勤務しており、その間4カ月以上の負担を支払っていた場合に疾病給付金を受給する権利を有する。
妊娠及び出産の場合、許可された病院又は診療所において無料で治療を受けることができる。出産後1年間は子供の治療を受ける権利を有し、出産前6週間、出産後8週間の産休を取得する権利を有する。産休時に1年以上勤務しており、かつ6か月以上負担を支払っている労働者は、産休期間中に平均賃金の70%を産休給付として受給できる。また、出産時に出産が1児の場合には平均賃金の50%を、2児の場合には平均賃金の75%を受給できる。
妻が出産した男性は、幼児の世話のため15日間の休暇を取得でき、その間妻が社会保障加入者の場合には平均給与の70%を受給でき、妻が非加入者の場合には半額となる。

②障害給付、老齢退職年金、遺族年金保険制度
障害給付又は老齢退職年金受給者は、180カ月以上保障料を支払っていた場合、治療を受ける権利を有する。
労災以外の原因による障害給付、老齢退職金、遺族給付金について、当該基金に支払った額の25%を年利2%の利息と共に受給することができる。老齢退職年金は60歳になった時点において受給できる。

③失業保険制度
社会保険加入者が36カ月以上保険料を支払っており、自己都合退職、違法行為等を原因とする解雇の場合を除き、失業給付を受給できる。給付金額は直近1年間の平均賃金の2か月分であり、社会保障料を36カ月以上支払っている場合には、12か月ごとに1カ月追加され、最大6か月分を受給できる。

④労災保険の内容
労働保険加入者は、労災時の治療、一時的に就労不能となった場合の無料の治療及び労災前4ヶ月の平均賃金の70%の一時就労不能給付を最長12か月間受給できる。また、永久的に一部障害が生じた場合、障害により失った能力の程度に応じて平均賃金の70%を一定期間受給できる。
労災保険加入者が労災により死亡した場合、負担金を支払った期間に応じて、指定された遺族に対して給付が支払われる。
なお、労災保険に加入している労働者は社会保障法のみ適用され、労働者災害補償法(Workmen’s Compensation Act)は適用されない。

 

6. 実務上の留意点

近時、社会保障事務所が会社の事務所に突然立ち入り、社会保障に未加入の場合には加入するよう指導する事例も見られるようになりました。したがって、加入義務が生じた場合には速やかに社会保障の加入手続きを行う必要があります。

また、上述のとおり、現時点では社会保障料の支払い時の給与の上限が月額30万チャットであることから、支給される額も当該支払額の基準月給がベースとなります。この場合、より高級を得ているマネージャークラスの労働者にとっては、社会保障法に基づく制度のみでは社会保障が不十分な場合が多いです。そのため、民間の保険に加入させる会社も徐々に増加しつつあります。

 
 
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