【ミャンマー法務ブログ】第5回:ミャンマーの商標に関する法制度

第5回となる本稿では、ミャンマーの商標に関する法制度について解説します。

 

1. はじめに

会社にとって自社のブランドや技術等を保護するために知的財産権に関する法律は重要である。ミャンマーにおいては長年商標法が存在しない状態が続いていた。しかし、ようやく2019年1月30日、ミャンマー商標法(以下、「商標法」という。)が成立した。本法の施行日は、大統領の通達により決定される。大統領の通達は2019年4月1日時点では未だ発布されていないので、本法がいつ施行されるのか明らかでない。関係者によると、商標法が施行されたとしても、商標の登録を担う機関である知的財産庁が設置されるのは、早くとも2020年になるとのことである。したがって、商標法が成立したものの、現時点においては既存の法制度下においてどのような保護が存在し、どのような対策が可能かを理解し、必要な措置を講じることが重要である。
 
既存の法制度では、登記法や刑法等により一定の保護が与えられている。また、不正に商標を使用する者に対してコモンローの原則に基づき損害賠償請求を行い得ると解されている。そこで、刑法及び登記法に基づく保護の内容を解説する。

 

2. 刑法上の保護

刑法は、商標を定義しており、特定の者の製品または商品であることを示すため使用する標章を商標という旨規定している。
 
その上で、以下の行為に対しては刑罰を科す旨規定し、それにより一定の商標侵害に対処している。
①自己以外の者の製品または商品であることを合理的方法により信じさせるために、物品、包装、容器等に商標を付す行為
②自己以外の者の商標を侵害する行為
③商標を侵害する目的で、金型、金属板、その他の道具を作成または所持する行為
④侵害商標を付した物品等またはそれらの包装や容器の販売、展示、または製造等を目的とした所持

 

3. 登記法上の保護

(1) 登記手続
登記法および登記指令13に基づき、商標の登記が認められている。ミャンマーにおいては、先使用の原則が採用されており、最初の使用者が優先して登記する権利を有する。
 
商標の登記は必要書類および情報を農業・畜産・灌漑省管轄の証書登記事務所に提出して行う。具体的な流れは次のとおりである。
①出願様式及び委任状と認証済みの所有権宣言書を証書登記事務所に提出。
②4~6週間後に登記手続き完了。登記手続完了後、出願書類に出願日、登記日及び登記番号が付与され、公印が押印されているので、当該書類を受領する。
③新聞に警告通知を掲載する。
④3年毎に掲載を繰り返す。

商標の登録は出願登録ではなく、権利者であることを宣言し、その宣言書を証書登記事務所に登記するというやり方で行われる。

 
(2) 登記の効果
商標を登記したとしても、登記者が商標の所有者と看做されるわけではなく、登記を行っていることを理由として直ちに差止め等を行うこともできない。しかし、商標を不正に使用された場合等に裁判を提起した場合、登記の事実が所有権の立証のための有力な証拠の一つとして取扱われる。

 

4. 望ましい対応

登記法上の商標の登記は上述のとおり、完全な権利の保全手段とはならないが、現在のミャンマーの法制度上採ることができる有効な手段であり、今後商標法が施行された暁には、円滑に商標法上の登録ができるような制度が検討されている。また、中国において多くの問題が生じたように、ミャンマーにおいても先に多くの商標を取得する企業や個人が現れる可能性があり、その際に当該商標の取消や譲渡を求めることは手続き的、時間的、金銭的に大きな負担となる。
ミャンマーにおいて自社の商標の権利を主張するためにはミャンマーで登記する必要があり、ミャンマーに会社を設立していない状態であっても商標の登記は可能であることから、ミャンマーに進出を検討している企業及び進出済みの企業は商標の登記を行うことが望ましい。

 
 
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