【ミャンマー法務ブログ】第10回:ミャンマーの労働組合に関する法規制と実務

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本稿ではミャンマーの労働組合に関する法規制と実務を解説します。

 

第1.はじめに

近時、ミャンマーにおいても工業団地に所在する工場等において賃金の増額等を求めるストライキが増加しています。背景としては、物価の上昇に比して賃金の増加率が低いことやストライキを扇動する活動家等の存在が挙げられます。このようなストライキに関する法律として、労働組合法が存在します。現在の労働組合法は、労働組合法(The Trade Union Act, 1926年)を改正する形で、2011年10月11日に成立しました。同法は、1962年以降結成が禁止されていた労働組合の結成について、一定の条件を満たした場合には認め、ストライキの規制等について規定しており、同法の概要等について解説します。

 

第2.労働組合の結成及び権利

労働組合に関して、複数の階層の労働組合が予定されており、単位労働組合、タウンシップの労働組合、地域または州の労働組合、労働連盟、ミャンマー労働連合が存在します。基本となる単位労働組合の組成については、30人以上の労働者によって結成する必要があり、かつ、関連する事業または活動1の単位の10%以上の労働者からの推挙が必要となります。労働者が30人未満の事業または活動の場合、同じ性質の他の事業または活動の単位と共に結成することができます。単位は、工場、事業場、製造業等の職業で、結成した労働組合は、訴訟を起こし、訴えられる権利を有します。また、労働組合は登録を強制されており、登録官または主任登録官に登録を申請しなければなりません。

労働組合は、労働者が解雇された場合、解雇理由が労働組合員であること等を理由とすると、信ずるに足る理由がある場合、使用者に再雇用を求めることができます。また、労使間の紛争や政府に対する不服申し立ての場合等に代表者を参加させる権利および団体交渉権を有します。


1. 事業または活動とは、ミャンマー国内での国営または民間企業の工場、事業場および生産現場、建設業、修繕業、工業、輸送業、サービス業その他の訓練作業を意味し、政府の部局および組織を含む。

 

第3.ストライキ

ストライキとは、紛争事項に関係する生産やサービスを低下させる意図を持って、一部または全員の労働者の決定による労務提供の拒否、または仕事の能率低下、その他の集団的行為と定義されています。但し、労務提供拒否によって生命や健康に突然申告な危険をもたらす恐れがあると信じる正当な理由がある場合の労務提供拒否は含まれません。

ストライキ権を行使するためには、所定の手続を経て行わなければなりません。この手続は公益事業か否かで異なります。公益事業とは、運輸業、港湾業および港での荷物運搬業、郵便、テレックス、ファックス業、情報・通信技術に関する事業、石油採掘・石油配送業、糞尿処理業・清掃業、電気または燃料の生産、配送、分配に関わる事業、金融業および政府によって公益事業と指定される事業をさします。

公益事業以外の事業においては、労働組合は、過半数以上の組合員の賛成によって、少なくとも3日前に関連する使用者および管轄調停機関に対して予告することによってストライキを実行することができます。予告内容として、日、場所、参加者数、方法および時間が要求されます。
公益事業の場合、過半数以上の組合員の賛成に基づきストライキを行うときは、関連する労働連盟の指令に従い、少なくともストライキの14日前までに関連する使用者および管轄調停機関に通知を行う必要があります。

 

第4.実務上の留意点

1.組合員への対応
使用者は、日本と同様に、労働者が労働組合に加入していること、あるいは、本法に従って、組合活動を行い、ストライキに参加したことを理由として労働者を解雇することはできません。
また、関係する執行委員会の推薦に基づき何らかの任務を割り当てられた労働者に対して、別段の合意がない限り、1ヶ月に2日を超えない範囲で当該任務を遂行することを容認しなければなりません。この期間については、当該労働者の本来の職務義務を遂行したものと看做されます。
更に、労働組合が労働者の利益のために使用者に援助を求めた場合、使用者は可能な限り援助を与えなければなりません。但し、使用者は、その財政的手段またはその他の手段による支配または統制の下に、労働組合の設立または運営を促進する意図を持って、いかなる行為も行ってはいけません。

2.ストライキへの対応
使用者はストライキが労働組合法に従った適法なものであるかを慎重に見極めた上で適切に対応する必要があります。
すなわち、適法性の主な判断要素として、①当該労働組合が労働組合法に基づき登録された労働組合であるか(労働組合の適法性)、②ストライキを行うための手続が適切であるか(適切な事前通知が行われているか、管轄調停機関の許可を得ているか等)(手続の適法性)、③ストライキが賃金、福利厚生および労働時間等の労働条件または労働者の職務利益に関係するその他の事項との関連を有するか(目的の正当性)等が挙げられます。

適法なストライキに対しては、要求事項を確認し、他社における待遇や一般的社会水準を考慮した上で適切に対応する必要があります。
違法なストライキに対しては、法律に違反しており、そのようなストライキに加担した労働者は罰則が科されるため、労働組合にその旨を伝え、冷静な対応を求め、管轄労働事務所に対しても協力を求める必要があります。それでも解決できない場合、労働紛争解決法に基づく調停機関等を利用することとなります。これまでの経験上、第一審に相当する機関においては不当な判断が多いものの、上の機関に行くほど公正な判断がなされる可能性が高くなります。

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