【連載⑦】就業規則の大解剖~タイの経理現場から~

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昨年から始まったタイからお届けするこのコラム。前回の続きで就業規則を引き続き取り上げていきますが、皆様のお役に立てるよう現場からの事例も適宜踏まえてお届けしますので、本年もよろしくお願いします。

 

タイの就業規則における、雇用の定義付け

早速続きから話をつなげていきます。前回と同様、実際の就業規則の目次構成に沿ってご案内していきます。今回は全11章構成中の第3章と4章で、いよいよ具体的な内容に入っていきます。

目次
第 3 章 従業員の雇用と配属
3.1 従業員としての資質
3.2 試用期間の通過
3.3 仕事の役職と任務の変更、異動

第 4 章 通常の勤務日、勤務時間、休憩時間、休日及び勤務時間の記録
4.1 事務所勤務の従業員
4.2 慣習に則った休日
4.3 年次有給休暇
4.4 勤務時間の記録

 

前回までのところで、就業規則が適用されるべき従業員の定義付けがされていました。今回の第3章従業員の雇用と配属ということで、従業員が会社が認める資質を有し、権利義務を果たすための前提となるべき雇用の定義などが記載されてます。

まず最初の項目の資質という部分に関してですが、こちらには一般的に会社が採用面談時にスクリーニングするような内容を定めることになります。例えば、会社が必要とする学歴・スキルを具備していることや、健康状態や健全な精神状態にあること、国籍もタイ国籍者と外国籍者に適用するというようなこともここで定義されます。

 
また、支払いが困難な借金や刑罰を過去に受けていないこと、以前の職場で退職勧告による事由による退職でないなども、こちらに記載されもします。これらの前提が入社後において虚偽に該当する場合は、会社は雇用を解除することができると定める箇所にもなります。
さすがに被雇用者に有利な労働法を持つタイにおいても、会社に損害や秩序の混乱をきたすことは企図したものでないので、健全な労働環境を会社が供するという意味でも、規定上定めることが当然認められている一般事項となります。

実務上は、この規定に定める以前に最初に述べたとおり、採用面談時のスクリーニングと、その後に締結する労働契約書にも雇用者としては被雇用者から記載事項に虚実がないことを表明し、違反する場合には雇用解除も受け入れるという文言を設けて対応することが多く、皆さんも一度や二度ご経験はあるでしょうから、それほど違和感のない内容かと思われます。

 

タイの労働法を守りつつ、雇用者・被雇用者がそれぞれに有利な規定を目指す

次に試用期間の通過という項目が続いてますが、こちらは前回定義した試用期間中の被雇用者が、正規の従業員になるときの定義として記載されるところです。例えば試用期間後は会社が文書で通知するなどで試用期間が満了し、正規の従業員となることなどが記載されます。ここは意外と雇用側も被雇用側も忘れがちですが、通知とされている場合はきちんと雇用側は通知をする必要がありますので、お気をつけください。非雇用者の立場でも、この規定があればきちんとした通知をもらっておきたいところです。

最後の項目には役職や任務変更、勤務地の異動といった内容となっており、会社が持っている権利としてこれらの内容を変更する権利を持つことが定義されてます。ちなみに、業務が重責となって昇進などがあった場合それを任ずる権利がある一方、それと同時に必ずしも昇給するとは限らないとも記載していたりもします。労働法上はあくまでも法律上抵触しない限りはぎりぎりまで厳しい内容にし、それを後日あるいは実務上のところで緩和する分には、会社側としてやはり自社を守るために必要な措置なので、そういった意図があるものとして認識しておくと良いでしょう。一般的にはそういった記載があったとしても、昇進と同時に昇給します。ただ、昇進と昇給のタイミングが会社の人事査定時期などによってずれることもあるので、そういった実務対応の部分と捉えることもできます。

 

土曜出勤はあり?なし?有給休暇に対するタイ人の認識

さて、ようやく各種定義や従業員に対する会社の権利などから次の第4章において、通常の勤務日、勤務時間、休憩時間、休日及び勤務時間の記録ということで、被雇用者の具体的な権利としての内容に入っていきます。

それぞれの項目は表題に沿った内容になり、一番重要な勤務日の設定から有給休暇の権利などについての一般的な記載になります。労働法上週に48時間までが勤務時間の上限となっており、それを超える設定は無効になります。特に工場など勤務する従業員が大多数のメーカーなどにとっては、この範囲で勤務シフトなどを組む必要が出てきますが、事例で使っている当社の場合はサービス業でその限りではないので、一般的なサービス業という形で読み替えてもらえればと思います。

タイでは今でもやはりメーカー系など、あるいはサービス業でも流通系などといったところは土曜日出勤も残ってますが、昨今の多くの会社では土曜日も休日に定めることが一般的となってきております。たまに土曜日勤務も可能ですという候補者もいるのはそういった名残ですが、やはり良い人を取りたいとなると、条件として土曜日休みのところを候補者側としては優先するのは時代の流れです。

 

タイの旧正月「ソンクラーン休み」に留意

また、休日の設定については、慣習に沿った祝日を年間で13~15日くらい定めると規定するのも一般的で、イメージとしては日本の祝日と同じくらい祝日があります。ただ、お国柄が違うといえば、タイの場合は日本で言うところの盆と正月がまとめてやってくる感覚なのが、毎年4月の中旬に設定されるタイの旧正月、いわゆるソンクラーン休みと言われる大型連休です。
この期間はほとんどの田舎からの上京者組は帰省しますが、街は静かというわけでもなく、別名水掛け祭りと言われるとおり観光地などに出るとものすごい数の人が祭りに興じている姿がここ最近の風景となってきており、皆さんもテレビのニュースなどでも一度は目にしたことがあることでしょう。

ベトナムで言うところのテト期間に近いのかもしれませんが、ベトナムは都心部の街は静かになるということでそこは大きく異なります。年末年始の休みは少なくカレンダー上は31日と1日のみが祝日となっているのは、その長いソンクラーン休み(通常は3営業日程度だが会社によっては前後の週末を挟むように特別休暇を設定し、最長9日になるところもあります)があるためです。

 

突然の休日や社内アナウンス等、柔軟な姿勢で対応を

休日の設定については、実は毎年12月の年末までに会社側は通常来年1年分の祝日のアナウンスを社内に掲示するなどして、案内するようになっています。会社によっては、飛び日で祝日になっているところは、連休になるように工夫していたりもしますが、タイの場合不思議なことに、年度中に突然政府より飛び日になっている間の月曜日や金曜日も、景気浮揚対策として祝日に定めます、というのを1ヶ月前くらいにアナウンスしたりすることもあるので、そのときは会社側としては休みにするかどうかの判断が都度必要となります。
こういったときの祝日については強制というわけでないのですが、多くの会社は納期の関係や繁忙期でない限りは祝日にする傾向があるようです。

それから有給休暇についてこれは意外ですが、法律上は初年度に定められておらず、入社後1年したら最低3日となっております。なので、会社によっては流石に初年度に1日もないのは不憫だろう、ということで別途規定内で設けることもあります。ただし、以前に紹介したとおり、一度定めたらそれより条件を悪くすることはできませんので、会社側は設定時に留意が必要です。逆に従業員側は権利として確保するためにも、よく内容を把握しておきたいところです。

最後の項目の勤務時間の項目では、会社が定めた勤務時間の算定方法に従うとだけ記載してあることが通常ですが、実際は通常はタイムカードなど入出退記録と出張時は、上長への申請と承認などで記録していると思いますので、そういったことに従うということです。

 
次回は時間外手当など、労働賃金の査定部分など核心的なところに入っていきますので、引き続きご拝読ください。 

 
<本記事に関するお問い合わせはこちら>
Accounting Porter Co., Ltd.
Web:http://aporter.co.th/

タイ在住歴7年・累計100社以上のご相談に対応

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Accounting Porter Co., Ltd.にてManaging Directorを勤めています。弊社は日本からの進出や会計サービス全般をタイ国で提供して6年経つ会計事務所です。代表である私が日本で2社の上場会社のCFO通算6年の経験を活かして親身なサービスを提供できるよう心がけております。 これまで累計100社以上のお客様からご相談いただいた様々な実例もあり、本コラムではそんな実例の中からタイで就業するあるいは就業を想定した方向けに駐在員、現地採用の方を問わずお役に立てる情報をお届けしようと思います。 内容としては身近な給与などの取扱いから、経理処理、はたまたそれらをひっくるめたタイの日系企業で身近に起きたことなど雑感的なところも交えながら、気軽に読めるようなトーンで展開していきますのでどうぞよろしくおねがいします。

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