【連載①】日本人の駐在員・現地採用者の給与の取り扱いについて~タイの経理現場から~

タイに赴任される方、あるいは進出される企業の方からよくご相談いただくのは、「日本人の給与に対する課税って現地でどうすれば良いの?」という質問です。

赴任者の立場といった前提条件によって対応は異なりますが、そもそも「どうやって個人の所得税を納付すれば良いのか」という疑問を紐解いていく必要があるでしょう。

先に結論を言ってしまうと、駐在員と現地採用者、どちらの場合でも会社が個人の所得税を 毎月源泉処理してくれます。日本と同様ですね。確定申告も、駐在員の場合は会社が外部委託するか内製化をして処理してくれます。現地採用者は自分で対応するか、場合によっては会社が面倒を見てくれるところもあるでしょう。

つまり赴任予定の方にとって、所得税の納付はあまりに気にすることではありません。
ただし、会社の数字に責任を持つ立場の駐在員や、本社管理・海外事業部門の方にとっては、それなりに考慮すべき問題が発生します。グロスアップ所得の合算をどう算定するか、親子会社間の給与負担按分をどうするか……。
何やら聞いたこともない専門用語が出てきたところで、順を追って説明しましょう。

 

タイにおける所得税の算出方法

冒頭でお伝えした源泉処理は、日本と同様に会社が本人の給与所得から税額を算出し、タイの税務署に毎月納付してくれます。給与明細上にはTaxやPIT(Personal Income Tax)といった所得税に関する記載と、控除がされているはずです。すでにタイで給与を受け取っている方は、明細を見てもらうと分かります。

毎月計算する所得税の算定根拠には、駐在員であれば日本本社から日本円で支払われる給与を含めて計算するのか、という論点があります。さらに、税務申告書上の計算ルールとして、各人毎に暦年(個人所得税の対象期間は、法人の決算年度と関係なく暦年ベース)で一旦年税額を算出した後に、当月分に割り戻すという手続きが定められています。日本でいう年末調整処理のような作業です。
現地採用者は、雇用されている現地法人からのバーツ建て給与となるため、話はもう少し単純になります。そのため、ここからは話が複雑になる駐在員の取り扱いに焦点を当てていきます。

 

所得税のグロスアップの仕組み

次にグロスアップについて見ていきましょう。グロスアップはタックスオンタックスとも呼ばれるもので、所得税算出時に発生する(本来であれば本人が負担すべき)税金の一部を、会社が給与として支給し負担する分のことです。
日本とタイでは所得税率や課税対象となる所得の範囲、所得控除額などが違うため、どうしても避けられない問題となります。

税率のテーブルを使ってまで説明はしませんが、タイにおける個人所得税率は最大35%、日本は地方税を入れれば半分を超えるため、それよりはまだ低くなります。さらにタイでは個人の地方税もないため、総額としては少なくて済む印象です。

しかし、実際に計算してみると、日本で納付する税額よりも少し多くなることが分かります。これは、会社が別途負担することの多い住居手当が課税所得に含まれる上、所得税控除額が日本よりも実額ベースで少ないため、課税所得が日本と比べて相対的に膨らんでしまう…ということが原因です。

少し回りくどくなりましたが、手取りベースの金額を先に決めて、その手取り額に対する税金を回帰計算して算出し、その分を上乗せして給与総額を決めるのがグロスアップです。今までと変わらないか少し上がる程度の給与総額で、手取りが減るのでは誰も赴任しないですよね?そのための対策が、この作業の意味するところです。
会社のポリシーによって、グロスアップに対する見解は様々ですが、おおむねこのような処理がなされていると認識しておけば良いでしょう。

 

日本の給与はタイのもの?全世界所得上の合算処理

3つ目は所得の合算、即ち全世界所得上の合算処理についてです。
さて、全世界所得という聞きなれない言葉が出てきましたね。これは、駐在員が日本に籍を残している場合、日本側で支給された給与所得をタイにおける所得としても認識の上、タイで支給される給与と合算して申告納付するものです。

通常、駐在員の就業場所はタイ現地で、就業内容も現地のためにあるはずです。所属しているのは日本の会社ですが、労働力の提供先はタイになります。すると、その国に税金を納めるという考えが自然でしょうし、国外の拠点から給与が出ていたとしても、やはり提供先である国に帰属するのが筋でしょう。

課税権はどの国においても争奪戦ですが、世界的な大枠としては、この全世界所得という考え方が主流です。個別に相対締結する租税条約上の考え方も、全世界所得を軸に展開されています。まずは大前提として、覚えておくと良いでしょう。

 

タイ駐在の初年度は要注意

最後に、みなさんは183日ルールというものを聞いたことがありますか?
これは滞在日数の合計が183日以上あれば、滞在国において居住者とみなされる基準です。カウント方法は国によって様々ですが、タイでは暦年で181日以上の滞在者が居住者とみなされます。

そのため、タイ駐在の初年度は、どの時点からカウントするのかによって取り扱いが全く異なります。最も留意が必要な点と言えます。ビザやワークパーミットを取得するタイミングとも密接に絡んでくるため、これついては今後の記事で具体的に取り上げていく予定です。

 
連載初回から込み入った内容になってしまうため、今回はここまでとさせていただきます。
次回は上記の続きとして、“所得の合算”をより具体的に取り上げて解説します。

 
<本記事に関するお問い合わせはこちら>
Accounting Porter Co., Ltd.
Web:http://aporter.co.th/

タイ在住歴8年・累計100社以上のご相談に対応

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Accounting Porter Co., Ltd.にてManaging Directorを勤めています。弊社は日本からの進出や会計サービス全般をタイ国で提供して6年経つ会計事務所です。代表である私が日本で2社の上場会社のCFO通算6年の経験を活かして親身なサービスを提供できるよう心がけております。 これまで累計100社以上のお客様からご相談いただいた様々な実例もあり、本コラムではそんな実例の中からタイで就業するあるいは就業を想定した方向けに駐在員、現地採用の方を問わずお役に立てる情報をお届けしようと思います。 内容としては身近な給与などの取扱いから、経理処理、はたまたそれらをひっくるめたタイの日系企業で身近に起きたことなど雑感的なところも交えながら、気軽に読めるようなトーンで展開していきますのでどうぞよろしくおねがいします。

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