【連載②】日本人駐在員の所得の合算を決める基本軸とは~タイの経理現場から~

前回は日本人の駐在員・現地採用者の給与の取り扱いについて、源泉処理とグロスアップ、所得の合算についてお伝えしました。今回は本質的な部分とも言える所得の合算を深掘りするとともに、より分かりやすくご説明していきます。

課税対象かは【居住属性】×【所得の源泉地】で決まる

広義での全世界所得合算という観点で、前回の要旨としては、課税所得対象となる前提条件には①居住者・非居住者か②対価である労働提供先の所得の源泉地はどこになるのか、という2軸があるとお伝えしました。これをマトリックス的にまとめると、下記のようになります。

※1 暦年ベースでタイ国内に累計181日以上滞在する者が居住者で、それ以外が非居住者となる
※2 タイ国外の法人が給与を支払い、タイ国内法人が負担しなければ非課税となる
※3 タイ国外に所得の源泉があることを証明する必要がある
(日タイ租税条約14条短期滞在者免税規定より)
但し、本規定は出向者においては適用されない。

実際には、先述の2軸に加えて所得の支払国という3軸目が存在しますが、考え方の大きな軸はやはり個人の居住属性が居住者・非居住者なのか、源泉地はどこか、という捉え方です。個人所得税に限らず、グローバルで課税を考えるときの大きな軸となるため、覚えておいて損はないでしょう。

マトリックス表からも読み取れるとおり、課税対象とならない非課税に該当するためには、非居住者としてタイでの滞在が暦年181日未満、かつタイで就業した分に対する給与所得等を得ていない必要があります。満たされない場合、課税からは免れられません。そのため、課税対象外となるのは通常は日本からの出張者(短期滞在)に限られます。

 

全世界所得は【赴任日数】と【所得の源泉地】から判断

さて、ここからは所得の合算の本丸についてご説明しましょう。
前回でもお伝えしたとおり、現地採用者はあまり気にする必要がないのですが、駐在員は赴任日の起点の見解によって合算額が変わるため、注意が必要です。時々、全世界所得という言葉が独り歩きして、「赴任初年度は180日未満だったから赴任後もタイで納付しなくて良いのでしょうか?」という質問をいただくことがあります。

確かにこの場合、全世界所得という点では日本での合算申告が原則となりますが、マトリックス表からもわかるとおり、タイ赴任後の給与はタイで就業した対価と見なされます。タイが所得の源泉となるため、タイでの納付を免れるわけではありません。その給与の支払い元が、親会社である日本からの給与支給だとしても同じ取り扱いになります。

そのため、原則としては、タイで納付した分を日本で全世界所得として合算所得し、算出した税額から外国税額を控除することになります。但し、日本の税法等から1年以上赴任する見込みがある場合は別です。赴任日までの分を、日本で年末調整と同様に税額を確定して納付し、その後は赴任地における合算所得納付の基準に従い、日本側は所得税を源泉しないという処理になることがほとんどです。

 

取締役の駐在は扱いが異なる

このときにもう1点注意すべきは、日本側で登記上取締役となっている人が駐在員として赴任する場合です。日本側で給与を支給する際、復興特別所得税を含めた20.42%の源泉納付として処理する必要があります。中小企業規模ですと、本社役員がそのまま駐在するケースもあるため、この取り扱いに従う必要があります。なお、登記上役員ではない執行役員などは該当しません。

そもそもの起点を定義しますと、赴任日とは「会社が駐在員に対し、人事発令における赴任日として定めた日」となります。会社が定めた日ということが分かれば、必ずしも紙としての辞令である必要はありません。暦年後の申告で必要な書類は、日本側で赴任直前日までの年末調整票や、場合によっては賃金台帳などで日付が明記されていれば大丈夫です。

 

賞与の発生を考慮して納付する

起点さえ決まれば、あとはスムーズです。先述した全世界所得の考え方や、駐在員が取締役かどうかを把握し、(課税対象期間が暦年となっているため)赴任日から12月31日までの分をタイ側で合算所得を元に税額を算出して納付、という流れです

なお、赴任後に日本側で賞与の支払いがある場合は、赴任日以降の賞与の対象期間分だけを納付します。これは赴任日前までの分を日本側で納付することが前提です。タイと日本、どちらの国にも納付先が該当しない……ということがないよう注意しましょう。

賞与対象期間と支給期間のずれを防ぐために、はじめから賞与の見込み額を日本側の給与として毎月支給する、という対応も有効です。支給時に差額が発生する可能性はありますが、大きな差でなければ、支給時の月として取り扱うことも許容範囲かと思われます。

 

例:取締役の駐在(賞与あり)に対する所得の合算

では、所得の合算について具体例を見ていきましょう。
下記のようにまとめましたので、改めてご参照ください。

【前提条件】
◎駐在員Aさん
・赴任日:2018年8月1日
・日本での役職:取締役のまま赴任
・賞与支給日:6月と12月の年2回
・賞与対象期間:10月~3月を6月に支給、4月~9月を12月に支給

【所得税の取扱い】
●日本側での処理
・2018年7月31日まで支給した分を、通常の年末調整と同様の処理で源泉徴収票を作成
・賞与対象期間分に該当する4月~7月分を、可能であれば先に算出のうえ、上記源泉徴収票に含めて対応。難しい場合は支給時に別途源泉徴収して対応となるが、具体的な手順等については日本側の顧問税理士等に要確認
・日本側で支給する8月以降の給与から復興特別所得税を加えた20.42%の源泉税を毎月控除して日本で納付

●タイ側での処理
・月次の申告として8月支給分から毎月源泉納付
・年度申告も必要なため、8月1日~12月31日分の月額支給分と賞与対象分として8~9月分のみ所得合算して差額が生じた場合、その差額を申告納付
・厳密には10~12月分の賞与対象分も対象になるが、6月支給時にまとめて取り扱うことで実務上対応することが多い(もちろん先に見込み分を含んで年度末に取り込むことも可能)

以上、所得の合算について本記事を大幅に使ってご説明しました。次回は最後のキーワードである給与負担按分について取り上げます。

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Accounting Porter Co., Ltd.
Web:http://aporter.co.th/

タイ在住歴8年・累計100社以上のご相談に対応

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Accounting Porter Co., Ltd.にてManaging Directorを勤めています。弊社は日本からの進出や会計サービス全般をタイ国で提供して6年経つ会計事務所です。代表である私が日本で2社の上場会社のCFO通算6年の経験を活かして親身なサービスを提供できるよう心がけております。 これまで累計100社以上のお客様からご相談いただいた様々な実例もあり、本コラムではそんな実例の中からタイで就業するあるいは就業を想定した方向けに駐在員、現地採用の方を問わずお役に立てる情報をお届けしようと思います。 内容としては身近な給与などの取扱いから、経理処理、はたまたそれらをひっくるめたタイの日系企業で身近に起きたことなど雑感的なところも交えながら、気軽に読めるようなトーンで展開していきますのでどうぞよろしくおねがいします。

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