【タイ労働法コラム】第2回:タイにおける試用期間

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GVA法律事務所・タイオフィス代表の藤江です。
本コラムでは、タイの労務管理について日本との違いを踏まえた上で、法的に解説していきます。第1回目はタイの休日について取り上げました。第2回目の今回は、タイにおける試用期間について取り上げたいと思います。

 

1. 試用期間を定めると雇用期間が無期限になる?

タイでは日本と同様に、雇用期間の定めのある有期雇用と、雇用期間の定めのない無期雇用があります。有期雇用の場合、定められた雇用期間が満了すれば、雇用が終了する点は日本と変わりませんが、1点注意すべき点があります。それは、有期雇用として雇用契約書で雇用期間を定めていたとしても、試用期間を定めた場合には無期雇用とみなされてしまうという点です(労働者保護法17条2項)。

したがって、例えば1年間の有期雇用のつもりで採用しても、試用期間を定めてしまうと、1年経過したからといって雇用を終了することはできず、会社から一方的に雇用を終了しようとする場合には解雇にあたってしまうのです。

 

2. 試用期間満了時の不採用は解雇に当たる?

雇用契約で試用期間を定める場合、日本では3ヶ月程度に設定されることが一般的ですが、これは慣習上の理由からそのように設定されているに過ぎません。一方タイでは、119日に設定されることが一般的です。これは120日以上勤続した労働者を解雇する場合には、解雇補償金を支払う義務が発生してしまうため(労働者保護法118条)、本採用を不採用とした場合の解雇補償金の支払いを回避するためです。

それでは試用期間満了時、つまり雇用開始から119日目に不採用とする場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。試用期間満了による不採用も、雇用の一方的な打ち切りであることに変わりはないため、解雇に当たります。この点は日本と同様です。

 

3. 適法に不採用とするための手続きは?

試用期間満了時に不採用とする場合も、法的には解雇に該当するため、解雇の要件を充たした上で適切な解雇手続きを踏むことが必要となります。具体的には、1賃金期間以上前に不採用(解雇)通知を行うか、あるいは事前通知に変わる賃金相当額の支払いを行う必要があります。

この点については、119日の試用期間中であれば解雇補償金も事前通知も不要となるという誤解が多いようですが、119日以下であっても事前通知義務は免除されていませんので、事前通知を行わなければ119日以内に適法に解雇することはできません。その結果、勤続期間が120日以上となり、解雇補償金の支払義務が適用されることとなってしまいます。

そこで会社としては、試用期間満了日より1賃金期間前の時点で採用・不採用の判断を行う機会を設け、その日までに試用者をしっかりと評価できるようなシステムを設定・運用できると良いのではないかと思います。

 

4. 最後に

試用期間については、基本的な考え方は日本の労働法上の考え方と大きな違いはありませんが、試用期間を設定すると無期雇用と見なされる点、119日以下の試用期間中であっても事前通知義務は免除されない点には注意が必要です。
上記の点を念頭に置きつつ、試用期間を適切に設定・運用していただければと思います。

 
 
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GVA法律事務所パートナー
タイオフィス代表・日本国弁護士:藤江 大輔
Contact: info@gvathai.com
URL: https://gvalaw.jp/global/3361

日本国弁護士

日本国弁護士

ICONIC

09年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

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