【タイ労働法コラム】第5回:労働者保護法の主な改正ポイント

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GVA法律事務所・タイオフィス代表の藤江です。
本コラムでは、タイの労務管理について、日本との違いを踏まえた上で、法的に解説していきます。今年の5月5日に、改正労働者保護法が施行されました。そこで、今回と次回の2回に分けて、改正労働者保護法の主な改正ポイントについて取り上げたいと思います。
 

 

 

1. 改正の趣旨

今回の改正は、既存の労働者保護法の規定の中で現代の労働環境に即していない部分の改定、また、国際標準に合わせて労働者保護のレベルをさらに引き上げることを目的として行われました。労働者保護のレベルを高めるということは、企業側にとっては規制が厳しくなることを意味しています。
もともとタイの労働者保護法は、日本の労働法と同じように、労働者保護の観点から企業側に厳格な規制の遵守を求める傾向にありましたが、今回の改正により、いくつかの点に関してさらに企業側に求められる水準が引き上げられましたので、改正後の法規制に従った労務管理を行えるよう、よく理解しておく必要があります。

 

2. 改正の主なポイント

今回の改正の中でも、特に重要な点をいくつかご紹介します。
 
(1) Business Leave
企業の日常の労務管理の中でもっとも影響が大きいのは、Business Leaveに関する改正点と言えるでしょう。これまで労働者は、会社の定める就業規則等の内容に従いBusiness Leaveを取得する権利がある、といった抽象的な規定しかありませんでした。したがって企業は慣習を参考にしつつも、自由にBusiness Leaveの日数を定めることができ、また有給休暇とすべき義務はありませんでした。
しかし、今回の改正により以下の通り具体的に付与すべき最低日数と、賃金の支払義務のある日数、つまり有給休暇として取り扱うべき日数が規定されました。

・付与すべき最低日数:1年に3日以上(34条)
・有給休暇として取り扱うべき日数:1年に3日以下(57/1条)

 
(2) Maternity Leave
Business Leaveに次いで企業の日常の労務管理への影響が大きいのは、Maternity Leaveに関する改正点です。Maternity Leaveについては、改正前の労働者保護法においても、取得できる日数や有給休暇として取り扱うべき日数が規定されていました。
今回の改正では、Maternity Leaveを取得できる日数が増加しました。また、出産前の検診等についてもMaternity Leaveを取得することができる旨が明記されました。

・付与すべき最低日数:90日以上⇒98日以上(41条1項)
・有給休暇として取り扱うべき日数:45日以下(59条)※変更なし
・出産前の検診等についても、Maternity Leaveを取得可能(41条2項)

 
(3) 解雇補償金
解雇補償金についても改正がなされています。
解雇補償金は、継続勤務期間の長さに応じて金額が定められています。これまでは継続勤務期間の区分は10年を基準として、5つの区分に分けられていました。
しかし、今回の改正により以下の通り20年を基準として6つの区分に分けられることとなり、解雇補償金の最大金額が引き上げられました。

継続勤務期間 解雇補償金
120日以上1年未満 最終賃金の30日分以上
1年以上3年未満 最終賃金の90日分以上
3年以上6年未満 最終賃金の180日分以上
6年以上20年未満 最終賃金の240日分以上
10年以上20年未満 最終賃金の300日分以上
20年以上 最終賃金の400日分以上

 

3. 最後に

このように、Business LeaveやMaternity Leave、解雇補償金の金額など、日頃の労務管理に直結する点が改正されていますので、労務管理方法の見直し、就業規則の改定など、新報にしっかりと対応していく必要があります。

 
 
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GVA法律事務所パートナー
タイオフィス代表・日本国弁護士:藤江 大輔
Contact: info@gvathai.com
URL: https://gvalaw.jp/global/3361

日本国弁護士

日本国弁護士

ICONIC

09年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

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