【タイ労働法コラム】第11回:タイの懲戒解雇について

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GVA法律事務所・タイオフィス代表の藤江です。
本コラムでは、タイの労務管理について、日本との違いを踏まえた上で、法的に解説していきます。今回はタイの懲戒解雇に関して解説します。

 

タイにおける懲戒解雇の意味とは?

懲戒解雇とは、従業員の規律違反を理由として、その違反の制裁として行われる解雇のことをいいます。日本法において、普通解雇と懲戒解雇には、解雇における予告義務などに違いがありますが、タイにおける懲戒解雇は、「解雇補償金を支払う必要があるか否か?」という点で決定的な違いがあります。

タイの解雇補償金の性質については、「第9回:タイの退職金・解雇補償金に関するルール」で詳しく説明していますが、解雇補償金とは、会社が従業員を解雇する際に、会社が支払う一定の金銭のことです。一般的に賃金の数カ月分に及ぶものであるため、会社にとっては安いものではありませんし、一部の従業員は、この解雇補償金があるから解雇されても良いというような態度を取る場合もあります。しかし、懲戒解雇が適用される場合では、会社は、この解雇補償金を支払うことなく、従業員を解雇することができます。

 

タイにおいて懲戒解雇ができる場合とは?

労働者保護法第119条は、会社が従業員を懲戒解雇できる場合として、以下を定めています。

1) 職務上の不正又は使用者に対する故意の犯罪行為を行った場合
2) 使用者に対して故意に損害を与えた場合
3) 使用者に対して過失により重大な損害を与えた場合
4) 使用者が文書で警告書を交付したにもかかわらず、就業規則、社内規程又は使用者の合法かつ合理的な命令に違反した場合(ただし、重大な違反の場合には、警告書を交付せずに解雇することができる)。警告書は労働者の違反日より1年間有効である。
5) 正当な理由なく、3労働日連続して職務を放棄した場合
6) 確定判決に基づき禁固刑を受けた場合(ただし過失犯や軽犯罪の場合は使用者に対して損害を与えた場合に限る)

このように懲戒解雇できる場合が、就業規則ではなく、法律に明記されているのが特徴的ですが、この中で最も登板頻度が高いのが、第4号の警告書に対する違反です。この第4号は、「警告書で注意したにも関わらずに、1年以内に、再度同じルール違反を行った場合に、懲戒解雇できる」という内容を定めていますが、これだけが社内のルール基づいた処分を定めているためです(他のものは全て社内ルールに関わらない事情)。

 

警告書はどんな場合に出せる?

しかし、会社としては、警告書を出して、それと同じルール違反があったら懲戒解雇できることが分かりつつも、「どのような場合に警告書を出せるのか?」という疑問が残ります。

タイの法律は、どのような場合に警告書を出すことができるのかについて、明確に定めているわけではありませんが、上記第119条の理解として、「就業規則、社内規程又は使用者の合法かつ合理的な命令に違反した場合」に、会社は警告書を出すことができると考えておいて良いでしょう。

例えば、就業規則の服務規律に明記されているルールに違反した場合、雇用契約に定められている手続きを怠った場合はわかりやすく警告書を出すことができる場面です。しかし、それに限らず、会社内で通用している内規に違反した場合や、口頭での業務命令に違反した場合であっても、警告書を出すことは可能と考えられます。

もっとも、疑義を回避するために、雇用契約書や就業規則には、従業員に遵守しておいてもらいたいルールをはっきりと明記しておいた方が良いでしょう。そして、警告書には、警告書の発効日、従業員の氏名、違反行為の詳細とそれがどのような規律に違反するのかについて明記した上で発行する運用が一般的かつ合理的です。

警告書は、タイの労務管理上で非常に重要な意味を持ちます。この警告書制度を理解して、懲戒解雇に関するルールを正しく理解頂ければと思います。

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GVA法律事務所パートナー
タイオフィス代表・日本国弁護士:藤江 大輔
Contact: info@gvathai.com
URL: https://gvalaw.jp/global/3361

日本国弁護士

日本国弁護士

ICONIC

09年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

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