【ベトナムの相続法の仕組み】ベトナムで資産を持って亡くなったときの対処は?

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経済発展が続くベトナムにおいては、毎年日本人の居住者も増加しています。また、ベトナムに居住していなくても、ベトナムの不動産を購入している方もいます。そうした中、ベトナムに不動産や預金・証券などの資産を有したまま亡くなった場合、相続はどのようになるのでしょうか。今回は、ベトナムでの相続の概要について解説します。

<目次>
1. ベトナムの相続法
2. 相続の開始、遺産、相続人
3.相続財産の管理
4.相続放棄、時効
5.法定相続
6.遺産分割
7. 相続の準拠法
8. 終わりに

 
 

1. ベトナムの相続法

ベトナムでの相続は、大きくいえば日本と類似の制度となっています。

相続については、民法において規定されていますが、2017年1月1日から新しい民法が施行されています。
民法第609条から第662条が相続について定めており、第609条から第623条が「総則」、第624条から第648条が「遺言による相続」、第649条から第655条が「法定相続」、第656条から第662条が「遺産の精算・分割」という構成となっています。
この構成からもわかるとおり、遺言がある場合には遺言が優先されますが、それがない場合には法定相続分に基づいた相続となります。

 
 

2. 相続の開始、遺産、相続人

相続は、財産を有するものが死亡した時点から開始されます(民法第611条)。

遺産は、被相続人の固有の財産及び被相続人が他人と共有している財産のうち非相続人の財産持分で構成されます(民法第612条)。
また、相続人は、相続開始時点で生存している者及び相続開始時点で胎児であり相続開始後に出生された者が対象です(民法第613条)。

 
 

3.相続財産の管理

相続財産の管理については、遺産管理者を選定することが可能です。遺産管理者の選定までは、その財産を占有、使用、管理する者が引き続きその遺産を管理しなければなりません(民法第616条)。

遺産管理者は、遺産リストの作成、第三者が占有する遺産の回収、遺産の保管、相続人への遺産の状態の通知などを行います。また文書よる相続人の合意がある場合には、その財産を引き渡し、処分する等の対応をすることができます(民法第617条)。

 
 

4.相続放棄、時効

相続の受領拒否(放棄)の手続は、相続人、遺産管理者への文書での通知を行うことで行うことが可能です。受領拒否の意思表示は、遺産分割前に表明されなければなりません(民法第620条)。

 
 

5.法定相続

以下の場合、相続財産は、法定相続人に対して相続がなされます(民法第650条)。
①遺言がない法定相続の場合
②遺言が合法でない場合
③遺言による相続人が相続開始時点以前(同時を含む)に存在しなくなった場合
④遺言による相続人が遺産受領を拒否した場合

法定相続人の順位は以下のとおりです(民法第651条)。

第1順位 配偶者、実父、実母、養父、養母、実子、養子
第2順位 父方・母方の祖父母、実兄弟姉妹、実孫
第3順位 曾祖父・祖母、おじおば、実甥・姪、曾孫

 
各順位内の相続分は均等となります。また、先順位の相続人がいる場合、それより下の順位の相続人には相続分はありません。 

たとえば、第1順位の相続人が亡くなっている場合、遺産受領を拒否した場合で、第1順位の相続人が一人もいない場合には、第2順位の者が相続分を有することになります。

なお、相続人となるはずの子が先に亡くなっている場合、その相続人の子(被相続人からみて孫)が相続できる、遺産を相続できるはずの孫が先になくなった場合、相続人の子(被相続人からみて曾孫)が相続できるという「代襲相続」も制度も存在します(民法第652条)。

 
 

6.遺産分割

相続開始が通知された後、又は遺言が公表された後、遺産分割協議のために相続人が集まることができます(民法第656条)。この場合、遺産管理人及び遺産分割人の指定と、遺産の分割方法を協議します。相続人間の合意はすべて文書でなされなければなりません。

遺産分割人は、遺言又は相続人間協議で選定されますが、遺産管理人を兼任可能です。遺産分割人は、遺言又は遺産分割協議の合意どおりに、遺産を分割します(民法第657条)。

遺産を分割する際、相続人は遺産の現物での分割を請求する権利を有しますが、現物で均等に分割できない場合、価格を算定した上で現物を受け取る者について合意することができます。合意ができない場合は、現物を売却し、対価を分割します(民法第660条)。

なお、遺産分割が存命している家族の生活に著しく影響を与える場合、存命している家族は、裁判所に対し3年を超えない期間で遺産分割を行わないように請求することができます。また、3年の期間が満了した後も、同様の状況であれば、もう1回延長も可能です(民法第661条)。

 
 

7. 相続の準拠法

では、そもそも日本人が亡くなった場合の相続については、日本法が適用されるのでしょうか、それともベトナム法が適用されるのでしょうか。
ベトナム民法上準拠法が規定されています(民法第680条)。

これによれば、相続は、相続される遺産を残した者が死亡の直前に国籍を有していた国の法令に従って確定されます。ただし、不動産に対しては、当該不動産の所在する地の国の法令に従って確定されます。

 
 

8. 終わりに

上記によれば、日本人がなくなった場合、日本法により相続が確定されるのが原則となります。
しかし、ベトナムで不動産を所有したまま亡くなった場合、ベトナム法となります。

ベトナムに預金・証券等がある場合、日本法により相続人が確定しますが、ベトナムの金融機関での手続きが必要になるため、金融機関に日本法に基づく相続人であることを証明することになります。また、不動産の場合には、ベトナムの登記機関での登録変更が必要になりますが、この場合はベトナム法準拠で判断されることになります。この場合、上記のベトナム法における相続人であることを証明する必要が出てきます。

これらの場合、日本法・ベトナム法いずれであっても、相続人であることの証明のために被相続人・相続人の日本の戸籍、相続人間の遺産分割協議書、本人の証明などを公証し、ベトナム語訳した上で提出するということになります。また、日本法準拠の場合、日本の相続法がどのような内容になっているかについての日本弁護士からの意見書も必要となる可能性が高いです。これらは、非常に煩雑な手続きとなるため、専門家のサポートを必要とするのが通常です。ベトナムに資産を有する場合には、早めに対策を検討することが必要となるでしょう。

なお、ベトナムで遺言を作成することで、相続手続きがスムーズになる可能性もありますので、次回はベトナムにおける遺言制度について解説します。

 
<本記事に関するお問い合わせはこちら>
CAST LAW VIETNAM
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CAST LAW VIETNAM 代表、弁護士法人キャスト・パートナー。日本国弁護士(大阪弁護士会所属)、ベトナム外国弁護士。 2011年から弁護士法人キャストに参画し、2013年から中国上海、2014年からベトナムへ赴任。2015年より弁護士法人キャストホーチミン支店長、2017年より現職。ベトナムを拠点に、在ベトナム日系企業に対して進出法務、M&A、労務、知的財産、税関および不動産などの分野で幅広いサポートを行う。著書に『メコン諸国の不動産法』(大成出版社、2017年、共著)、『これからのベトナムビジネス』(東方通信社、2016年、共著)など。

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