【ベトナムの不動産事情】外国人・外資企業がベトナムで住宅を所有する場合の概要

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ベトナムでは、2015年7月1日から住宅法(65/2014/QH13)と不動産事業法(65/2014/QH13)が施行されています。また、その下位法令も多数施行されています。特に住宅法に関しては、それまで非居住者の外国人が所有できなかった住宅の購入や賃貸を認めたことから、施行以降、多数の外国人がベトナムで不動産を購入しています。

もちろん、ベトナム不動産を購入するリスクは小さくありません。検討される場合には、しっかりと法律やリスクを確認した上で検討してください。ここでは、法律上の規制の内容を説明したいと思います。

<目次>
① ベトナムの不動産を個人名義で購入する場合
(1) 購入の資格
(2) 賃貸・転売
② ベトナムの不動産を法人名義で購入する場合
(1) 住宅目的の場合(購入/賃貸・転売)
(2) 事業目的の場合(事業目的の場合に必要な条件/外資企業に可能な業務/住宅の購入及び転売目的による制約)
③ 外国人・外資企業がベトナムの不動産を購入する場合の規制
④ まとめ

 
 

① ベトナムの不動産を個人名義で購入する場合

原則として、ベトナムの不動産を個人名義で購入する場合には、不動産業はできず住宅目的のみ認められることになります。
2015年に新しい住宅法が施行される以前は、外国人が住宅を購入するためには、ベトナムに直接投資している、ベトナム国民と結婚している、勲章等を受けたという条件を満たした上で、ベトナムに居住している等の条件も満たしている必要があるなど、外国人による住宅の購入は非常に制限されていました。
これに対して住宅法施行後は、非居住の外国人個人による住宅所有を認めているだけでなく、第三者に対する賃貸についてもこれを認めています。

 
 

(1) 購入の資格

ベトナムの不動産は、ベトナムに入国できる外国人個人、ベトナムに住所を持つ外資企業が購入することが可能です。個人については、日本人のようにノービザで入国できたことをパスポートの入国スタンプにより証明できれば、ビザがなくても問題ありません。
また、外国人の場合は、デベロッパーか外国人からしか物件を購入できません。そのため、中古物件の購入を検討される場合は、外国人が保有できる物件かどうかを明確にする必要があります。

 
 

(2) 賃貸・転売

外国人個人の場合、購入した住宅を第三者に賃貸・転売することが可能です。もっとも、事業目的は認められないため、あくまでも住宅目的で購入したものについて、賃貸・転売に出すという形になります。
個人で購入・賃貸・転売をする場合には、ベトナムで銀行口座を開設の上、すべての手続きをその口座を通して行う必要があります。また、不動産所得に関しては、個人所得税の納付も必要となります。

 
 
 

② ベトナムの不動産を法人名義で購入する場合

法人名義の場合、不動産業を営む場合とそれ以外とに分けられます。
不動産業を営むという業務目的ではない場合は、①(1)購入の資格の個人の場合と同じく住宅法に基くことになります。一方、不動産業を営む業務目的の場合は不動産事業法により規定されることになります。

事業目的か事業目的外かは、不動産の運用が小規模かつ不定期といえるかどうかが基準となります。大規模または定期的に不動産取引を行っている場合には、業務目的となります。これについて現時点では明確な基準がなく、どちらの法令が適用されるか不明確な部分もあるため、注意が必要です。

 
 

(1) 住宅目的の場合

– 購入
ベトナムに住所を持つ外資企業(日本企業の現地子会社など)が購入することが可能です。日本企業などの、ベトナムに住所を有しない企業は所有できませんが、日本から出資しているベトナムの現地法人であれば、問題なく購入できます。
外資企業の場合も、外国人からしか物件を購入できませんので注意が必要です。

– 賃貸・転売
外資企業の場合、購入した住宅は「社宅」としてしか利用できず、第三者に賃貸することはできません。賃貸目的では購入できないということになります。他方、転売することは可能です。

 
 

(2) 事業目的の場合

– 事業目的の場合に必要な条件
不動産業を営む目的で行う建物の所有は、不動産事業法の適用を受けることになります。
同法上、外国人が不動産業を営む場合には、以下の2要件を満たす必要があります。

① 不動産業のライセンスを持った会社を設立すること
② 出資金として200億VND(約1億円)の出資をすること

 
この資本金の要件により、不動産事業には一定のハードルが課せられているといえます。

 
– 外資企業に可能な業務
外資企業には、以下の業務のみが認められています。

① サブリース(転貸)のために住宅および建物を賃借すること
② 国家より賃借を受けた土地への賃貸用の住宅建築に対する投資、並びに売却、賃貸または購入賃貸用以外の住宅、および建物の建築に対する投資
③ 販売、賃貸または購入賃貸用の住宅、および建物を建築する目的で投資家から不動産プロジェクトの全部または一部を譲り受けること
④ 国家から割り当てられた土地に販売、賃貸または購入賃貸目的の居住用住宅を建築することに対する投資
⑤ 工業団地、工業地帯、輸出加工地区、ハイテクパーク内で賃借を受け、譲渡される土地について、土地使用目的に従った事業を営むための住宅および建物を建築することに対する投資

 
– 住宅の購入及び転売目的による制約
上記②、④、⑤の行為はいずれも不動産開発行為であり、外資企業にも認められています。また、①により住宅等を賃借し、それを転貸(サブリース)することは可能です。

他方で外資企業には、賃貸または販売用の建物の購入は認められていません。したがって、外資企業には、業として建物を購入し、それを単純に賃貸または転売することはできないということになります。外資でこのような事業を行いたいという希望は多いですが、法令上認められていません。

現状、日系のディベロッパーも多数ベトナムに進出していますが、前述のとおり、単純な建物の転売や賃貸を行うことができないため、一からプロジェクトの承認を受けるか、③のプロジェクトごと購入するという方法が多く見られます。

 
 

③ 外国人・外資企業がベトナムの不動産を購入する場合の規制

不動産を所有する場合、以下のような規制がありますので整理します。特に、住宅目的の場合において、物件ごとに外国人が購入できる軒数が決まっていること、所有年数の制限があることについては注意が必要です。

主体 購入 目的 一定区域による制約 期間 その他の制約
ベトナムに入国することができる個人 住宅目的のみ(利益を上げる転売目的の禁止) <アパート> 一つのWardレベル行政区画・建物・ブロック内の住宅の数の30パーセントを超えない限度
<個別住宅> 一つのWardレベル行政区画・プロジェクト内で、10%または250軒のいずれかを超えない限度
・所有は50年
・延長1回可能
・中古は外国人
・外国組織からのみ購入可能
外国組織 住宅目的(利益を上げる転売目的の禁止) 同上 ・所有は投資登録証明書または企業登録証明書の期限まで
・延長1回可能
・社宅のみ可能で、賃料収入は認められない
・中古は外国人・外国組織からのみ購入可能
※業務目的は2.3参照
ベトナム人と結婚した外国人 住宅目的 不明確 ベトナム人と同様に制限なし ベトナム人と同様に制限なし

 

 
 

④ まとめ

上述のように、住宅法や不動産事業法では、一定の場合に外国人/外資企業に不動産所有を認めていますが、規制が多くあるのが現実です。実際に私のところに相談いただく案件の多くが、実務上難しいスキームの場合があります。
また、法令や実務は随時変わっていっているため、ベトナムでの不動産所有を検討される方は、常に最新状況を確認しながら進めてください。

 
<本記事に関するお問い合わせはこちら>
CAST LAW VIETNAM
Web:http://cast-group.biz/
Mail:info-v@cast-law.com

工藤拓人

ICONIC

CAST LAW VIETNAM 代表、弁護士法人キャスト・パートナー。日本国弁護士(大阪弁護士会所属)、ベトナム外国弁護士。 2011年から弁護士法人キャストに参画し、2013年から中国上海、2014年からベトナムへ赴任。2015年より弁護士法人キャストホーチミン支店長、2017年より現職。ベトナムを拠点に、在ベトナム日系企業に対して進出法務、M&A、労務、知的財産、税関および不動産などの分野で幅広いサポートを行う。著書に『メコン諸国の不動産法』(大成出版社、2017年、共著)、『これからのベトナムビジネス』(東方通信社、2016年、共著)など。

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