【連載⑤】日本人の駐在員・現地採用者の給与の取り扱いについて~タイの経理現場から~

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表題のテーマで取り扱ってきた内容が書き始めたらそれぞれ深かったため、これまで4回にも渡って主に日本からの赴任者いわゆる駐在員を中心に取り上げてきました。今回、本テーマの最後にあたって、今やその存在も時に駐在員以上の成果や期待などのプレゼンスも出始めている現地採用されている方向けの目線で取り上げたいと思います。
前回の記事はこちら:【連載④】日本人の駐在員・現地採用者の給与の取り扱いについて~タイの経理現場から~

 

タイの日本人現地採用(プロパー社員)の取扱い

現地採用されている方については、ご存知のとおり日本から赴任してくるわけでもなく、その所属先も完全に現地法人のみになるため、駐在員の場合に考えるべき日本からの所得の合算や本社-現地法人間の給与負担按分のことは考える必要がありません。そのため、源泉処理のところでグロスアップ前の手取りベースなのか、グロスアップ後の通常の額面給与で契約なのか、という入り口のところで、少し論点があるかもしれないところさえ気を使えば良いということになります。

あれっ?それだけ?となると、あまりに単純な話にもなってしまいますが、ご安心ください、現地採用者だからこそ留意すべき点はあります。またそれを知った上で、プロパー社員ならではのメリットも享受できることも多いのです。お気づきかもしれませんが、プロパー社員という言葉に置き換えることもできる現地採用者ですが、ここからはまさにプロパー社員という観点が中心の話になります。
ここで言うところのプロパー社員とは、現地ローカルスタッフと日本人の現地採用者を合わせたものとして読み進めていくことにしましょう。

 

タイの現地採用は就業規則に注目

早速ですが、そのうち本コラムで取り上げようと考えている、現地法人での就業規則をまず思い浮かべてみてください。各国の特色毎に少しずつ違いもあるかと思いますが、概ねどの国でも大抵はこの就業規則があるはずです。国によっては強制的に定めることになっていることもあります。ちなみにタイの場合は以前は従業員が10名以上になった時点で強制的に定めることとなっていました(最近制度変更があり、強制力はなくなりましたが、労働法自体は変わりません)。

この就業規則こそ、プロパー社員にとっての恩典の宝庫となりえるのです。通常、日本からの駐在員は現地での役職がら、登記上取締役などになっていることも多く、その場合は適用外であったり、あるいは日本本社の規則が適用されるので、重複して適用されることはあまりありません。知る限りASEAN各国の労働法は労働者に優しいので、そういう意味ではプロパー社員である現地採用者こそ、しっかりと入社前や採用面談時に確認することが重要です。

実はその場で逐一確認する前に、各国の労働法で最低限定めているものとして福利厚生的な事項が多いので、事前に頭に入れておいたうえで面談の臨むくらいのほうが良いとも言えます。このときにしっかり答えられないような面談者の会社だと少し警戒したほうが良いかもしれません。そのくらい、経営者側でも把握しておくべき事項だからです。

 

福利厚生を充実させて、タイのローカル人材を確保

また、タイの場合に限るのかもしれませんが、ローカルスタッフの面談時には必ずといって良いほど福利厚生の内容や条件を詳しく聞いてきます。

タイで通常考えられる福利厚生費としては、次のようなものがあります。

  • 民間保険…社会保険制度はありますが、それだけだと不十分なため。
  • プロビデントファンド…民間の年金基金。労使折半での契約が通常。
  • 健康診断補助…年に一度健康診断を会社で受けさせる、もしくは一部補助。
  • 社員旅行…もちろんタイ国内の近場でも構わない。これがあるほうが指揮が高まると言われている。
  • ニューイヤーパーティー…いわゆる忘年会・新年会が一緒になった全社規模の飲み会。パーティーらしくプレゼント交換会や抽選会、出し物がある会社も多い。
  • 賞与…これ自体は福利厚生費ではなく、労働法上も強制されるものではないが、定期的に支給実績があるかどうかはやはり聞かれることが多い。
  • 制服の支給…これは不思議なもので、いわゆる会社統一のポロシャツなどの制服で、税務上も年に一人2枚までは所得に含めないことができるとされている。
  • 出張手当…税務上所得とされない範囲の指針があるため、出しすぎは禁物。
  • ゴルフ会員権…会社名義のものを使えるかどうかだが、通常は役員に限る場合が多い。
  • 初年度の有給休暇数…初年度は法律上は会社は与える必要はないが、試用期間後にある程度与える会社もある。
  • 残業の有無…これは両方意味があって、残業代がつくから残業をしたい人と、残業があるところは敬遠するというそれぞれの人がいます。

ただ、基本は今どき無駄に残業しないというのは当たり前なので、聞かれることも会社から言うことも最近は減っています。もちろん、残業代は法律上規定があるので会社側は支給が必要です。

 
と、思い出す限りでもこれだけあります。上記は原則的には所得とみなされないものが多いですが、形式主義的な面もあるタイ社会では、これらを会社の就業規則に定めることで、税務上も個人所得とならないように備えていることもあります。但し、何事も行き過ぎは認められません。例えば毎月パーティーがあるとかは記載して、実行していたとしたら、社員それぞれの遊興費として所得課税されるでしょう。

最近では特に日系の現地法人については、現地での知名度がないなかで優秀な人材を確保するために、大体上記に列記したようなものは備えている、あるいは導入を検討しているところが多いように感じます。特にタイは統計上も完全雇用社会に近いので、その中で優秀な人材を確保すること自体が難しく、基本給で上げていくのが難しいとなると、会社側としては福利厚生メニューのバラエティさで他社と差別可を図ろうというのが実態です。

 

プロパー社員も福利厚生を活用しよう

プロパー社員で働いている皆さん、今働いている先の福利厚生メニューにどういったものがあるか、改めて確認してみる気になったことでしょう。
タイの場合ですが、プロビデントファンドの制度などは、日本での年金をすでに期待しない人には、会社が自分と同額の積立をしてくれるので実質給与増ですし、ある程度就業年数がたてば、会社が積立した分もきちんと自分に還ってくるので、大変お得な制度で、入らない手はないのですが、意外と関心のない方も多いので勿体ないです。

気になることがあれば、このあたりは日本人とはいえプロパー社員なわけですから、どんどん会社に聞いて良いと思います。あとは私のようなその国の専門家が、こういった類のコラムを公に書いている場合もありますので、探してみるのも良いでしょう。

 
ようやく、表題の給与の取扱については一旦今回のコラムで区切りとしますが、話の流れで就業規則のことがでてきたので、そのうちと言わず次回からタイにおける就業規則とそれにまつわるエピソードを踏まえながら、会社と従業員との狭間にあるそれぞれの事情など踏まえながら内容をご紹介していきます。

 
<本記事に関するお問い合わせはこちら>
Accounting Porter Co., Ltd.
Web:http://aporter.co.th/

但野和博

ICONIC

Accounting Porter Co., Ltd.にてManaging Directorを勤めています。弊社は日本からの進出や会計サービス全般をタイ国で提供して6年経つ会計事務所です。代表である私が日本で2社の上場会社のCFO通算6年の経験を活かして親身なサービスを提供できるよう心がけております。 これまで累計100社以上のお客様からご相談いただいた様々な実例もあり、本コラムではそんな実例の中からタイで就業するあるいは就業を想定した方向けに駐在員、現地採用の方を問わずお役に立てる情報をお届けしようと思います。 内容としては身近な給与などの取扱いから、経理処理、はたまたそれらをひっくるめたタイの日系企業で身近に起きたことなど雑感的なところも交えながら、気軽に読めるようなトーンで展開していきますのでどうぞよろしくおねがいします。

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