【マレーシア法務ブログ】第13回:商標登録の出願②

TNYグループのマレーシア事務所の弁護士の荻原です。今回は、商標登録の出願手続における実体審査について解説していきます。

 

1 概論

実体審査においては、絶対的登録拒絶事由及び相対的登録拒絶事由の有無が審査されます。

絶対的登録拒絶事由においては、当該登録出願商標がそれ自体として識別力を有するか等、当該登録出願商標それ自体の性質等が問題とされます。他方、相対的登録拒絶事由においては、既存の商標と混同を生じさせるおそれ等、他の商標等との関係における当該登録出願商標の性質等が問題とされます。

 

2 絶対的登録拒絶事由

(1)2019年商標法(TRADEMARKS ACT 2019)23条
2019年商標法23条は、絶対的登録拒絶事由を以下のように定めています。

ア 同条第1項
同条第1項は、当該登録出願商標それ自体が十分な識別性を有しない場合等を絶対的登録拒絶事由として定めています。

a. 画像として表現することができず、ある事業者の商品又はサービスを他の事業者の商品又はサービスと区別させることができない標章
b. 際立った特徴のない標章
c. 取引において商品又はサービスの種類、品質、量、使用目的、価格、生産地その他特徴又は商品の生産又はサービスの提供にかかる時間を指定するのに有用な標章又は表示のみから構成されている標章
d. 領域内の現在の言語又は誠実な取引慣習において慣例となっている標章又は表示のみから構成されている標章

ただし、b.及びc.については、登録申請よりも前に実際にその標章が使用された結果として、その標章が際立った特徴を獲得した場合には登録拒否事由とはならないものとされています(同条第2項)。

イ 同条第3項
同条第3項は、当該登録出願商標が以下の要素のみから構成されている場合には、登録が拒否される旨を定めています。

a. 商品それ自体の性質から生じる形状
b. 技術的成果を得るために必要な商品の形状
c. 商品に実質的な価値を与える形状

ウ 同条第4項
同条第4項は、地理的名称に紐づけられた信頼等を保護するために、以下の商標については登録を拒絶する旨を定めています。

a. 専ら国の名前で構成されている商標
b. 認証地理的表示から構成されている又はそれを含んでいる商標

エ 同条第5項
同条5項は、上記以外の類型の絶対的登録拒絶事由を定めています。

a. その商標使用が公衆を欺く又は混乱させる若しくは法令違反にあたる可能性が高い場合
b. それが商品又はサービスの性質、品質、生産地に関して公衆を欺く又は誤解させるような性質を有する場合
c. 公益又は道徳に反している商標
d. 中傷的又は攻撃的な内容その他裁判上の保護を与えられないような内容から構成されている又はそのような内容を含んでいる商標
e. 登録官の意見によれば国の安全又は利益にとって有害である内容を含んでいる商標
f. (既に亡くなっているか否かを問わず)人の名前又は他者を表現する内容から構成されている又はそれらを含む商標(存在している者については本人の同意、死亡している者については代理人の同意を提出した場合を除く)
g. 国旗、国章、紋章、記章又は王室の紋章から構成されている又はそれらを含む商標(申請者が第78条又は第79条で指定された法定機関、国際機関、政府間機関による承認を提出した場合を除く)
h. 混合物とは区別された単一の元素又は化合物として一般的に使用され又は受け入れられている単語、WHOにより国際的な非占有名称として宣言されている単語若しくはこれらと混同されうる類似の単語から構成される又はそれらを含む商標。ただし、以下の場合を除く。
(i)単にブランドを示すために又は商標の所有者又はそのライセンシーが製造した元素又化合物と他者に製造された元素又は化合物を区別するために用いる場合
(ii)一般の使用に供されている適切な名前又は表現と共に用いられている場合
i. 以下の標章又はこれらの標章と誤認されるおそれのある標章から構成されている又はこれらを含んでいる商標
(i)「特許」、「特許を受けた」、「特許状」、「登録」、「意匠」及び「著作権」という単語又は同様の意味を持つ言葉(言語を問わない)
(ii)規則において指定された標章

(2)2019年商標規則(Trademarks Regulations 2019)4条
2019年商標規則4条は、2019年商標法23条第5項i(ii)を受けて、「登録商標」という文言、国王である「Seri Paduka Baginda Yang di-Pertuan Agong」を示す言葉、人物の絵画表現等を用いることを絶対的登録拒絶事由として定めています。

 

3 相対的登録拒絶事由

2019年商標法24条は、相対的登録拒絶事由を以下のように定めています。

(1)同条第1項
同条第1項は、先に登録された商標と同一であり、商標の申請対象となっている商品及びサービスが先に登録された商標の対象と同一である場合には、登録は認められないものとしています。

(2)同条第2項
同条第2項は、以下の場合において、公衆に混乱の可能性がある場合には登録が認められないものとしています。
a. 商標が先に登録された商標と同一であり、先に登録された商標の対象と類似した商品又はサービスについて登録申請がされている場合
b. 商標が先に登録された商標に類似しており、先に登録された商標と同一又は類似した商品又はサービスについて登録申請がされている場合

(3)同条第3項
同条第3項は、以下の場合には登録は認められないものとしています。
a. マレーシアにおいて登録されていない周知商標と同一である又は類似しており、対象が本来の所有者と同一の商品又はサービスである場合
b. マレーシアにおいて登録されている周知商標と同一又は類似しており、対象が周知商標が登録されている商品又はサービスとは同一でも類似してもいない商品又はサービスであり、
(i)その商標の使用が対象となる商品又はサービスと周知商標の所有者との関係を示す場合 かつ
(ii)公衆の側に混乱の可能性が存在する場合 かつ
(iii)周知商標の所有者の利益が損害を受ける可能性がある場合

(4)同条4項
同条4項は、以下の効果によりマレーシアにおける当該商標の使用が禁止される場合には、商標の登録を拒絶するものとしています。
a. 詐称通用に関する法を含む未登録の商標その他取引過程において用いられる標識の保護に関する法の効果
b. 著作権法または工業意匠法に基づくものを含め、a.又は(1)から(3)において定められたものを除いた、先使用権の効果

(5)先使用権の保有者の同意による例外(同条第7項)
上記の相対的登録拒絶事由に拘わらず、先使用商標権者その他の先使用権の保有者が所定の方法で登録に同意をした場合には、登録官は、公衆の利益及び公衆の側に混乱が生じる可能性を考慮したうえで、その商標の登録を行うことができるものとされています。

(6)誠実な同時使用等(同法第25条)
また、登録官又は裁判官が以下の事情を認めた場合には、同法24条が定める相対的登録拒否事由があったとしても、商標の登録が認められることがあります。
a. その商標と先使用商標又は先使用権との間に誠実な同時使用関係がある場合 または
b. 他の特別な状況の理由により、商標を登録することが適切である場合

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日本国弁護士:荻原 星治
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