日系企業がマレーシアに進出する際に、さまざまな投資恩恵を受けられることは前回解説しましたが、一方で、外資企業の進出・参入が認められていない産業も存在します。
本稿では、マレーシアにおける外資規制の概要について解説します。
1. マレーシアの外資規制
i. マレーシアの外資規制の概要
マレーシアの外資規制は、政府による規制と各業界における所轄官庁の規制の2つから構成されます。特に、政府による規制は存在しなくても所轄官庁の許認可(ライセンス)において、実質的に外資規制の縛りがある点、留意が必要です。
【マレーシアの外資規制の概要】
ii. 政府による規制
一般に国家権益に関わる事業、すなわち水、エネルギー・電力供給、放送、防衛、保安等に関して、政府は外資出資比率(上限)を30%または49%に制限しています。
これは、マレーシアの国益に関わる事業について、100%の外資参入を認めてしまうと、必ずしもマレーシア国内の発展に寄与する経済活動が取られない可能性があるためです。
iii. 所轄官庁のライセンスによる規制
製造業、金融業、その他のサービス業等の区分に応じて、所轄官庁が異なり、基本的には各業種の所轄官庁の定めに基づく、許可・規制に応じて、外資の参入可能比率が決定されます。
特に、製造業には広く外資100%の参入が認められているものの、金融業やその他の流通・サービス業の多くに対しては、100%の参入が認められておらず、マレーシアの外資規制は依然として強く残っているといえます。この背景にあるのが、ブミプトラ政策と言われるマレーシア人の雇用維持によるものです。業種・業態によっては、日系企業の100%参入が難しく、特に49%以下の参入しか認められない場合には、株主総会における意思決定権限が付与されない留意が必要です。
2. 外国企業の土地所有
日系企業がマレーシアのローカル企業に出資をする場合に合わせて留意する必要があるのが、土地の所有権です。
マレーシアの土地は州の管轄となっており、土地・不動産の所有に関しては州当局の認可が必要となるため、マレーシア会社の株式の取得に合わせて土地の取得も行う場合には、留意が必要です。
特にこちらもブミプトラ政策の一環で、マレーシア人や政府機関の不動産所有割合が希薄化する場合には、経済企画庁(Economic Planning Unit:EPU)の承認と取得条件を充たす必要があります。
日系企業がマレーシア企業に出資する際の外資規制の概要を解説しましたが、マレーシアの外資規制は表面的な政府許可の有無だけでなく、各業界の所轄官庁のライセンス許可と密接に絡んでおり、非常に複雑です。
そのため、現地の法制度に精通した専門化のアドバイスを受けながら、実際の参入条件を検討すべきと考えられます。