マレーシアビジネスの最前線⑤(2017年版)

国内市場の縮小を受けて、日系企業の東南アジア進出は、今後、益々増加していくものと予想されます。
通常、日系企業がマレーシアで現地企業を設立する場合には、株式会社の形態を取りますが、それ以外にも様々な会社の設立形態が認められています。

本稿では、そのマレーシアの会社設立形態について解説します。

 


1. マレーシアの会社設立形態

 
i. 株式会社
日本と同様、通常、マレーシアに会社を設立する場合、株式会社の形態を取ることがほとんどです。株主は、その出資額を限度として責任を負うのみであり、出資額以上の責任を負うことはありません。
また、株式会社はさらに、株式の譲渡性の有無により①非公開会社と、②公開会社に区分されます。基本的には、公開会社=上場会社と考えていただくのが分かりやすいと思います。
また、これは会社名からでも区分でき、公開会社は、社名の最後にBHDが付き、非公開会社は、SDN.BHDが付きます。

ii. 保証有限責任会社
保証有限責任会社とは、定款によって、株主の責任を、会社清算時において、株主それぞれが引き受けた額に限定するとの原則により設立される会社のことであり、設立時ではなく、清算時にその引受額に応じて出資を行うこととなります。

iii. 無限責任会社
上記2つと異なり、株主の責任を無限に定めた会社形態です。

 
 

2. 資本金

 
株式会社の形態で会社を新規設立する際には、資本金を設定しなければなりません。
マレーシアの会社法においては最低資本金の定めはありませんが、属する業種のライセンス取得のための最低資本金要件や、外国人を雇用するための最低資本金要件等が存在するため、そういった要件を加味した資本金の設定が求められる点、留意が必要となります。

 
 

3. その他の会社形態

 
i. 支店
現地法人ではなく、支店を作り、その支店で事業を営むことが可能です。但し、サービス業等の業種・業態によっては支店での営業活動が認められないケースもありますので、その点留意が必要です。

ii. 駐在員事務所
駐在員事務所の設立は、会社法の枠組みではなく、政府承認の下に行われます。つまり、駐在員事務所は、通常、現地の情報収集やリサーチ業務等、直接の商業活動にならない範囲で、その設立を認められており、法人設立の準備期間として設置されることがあります。

iii. LLP(有限責任組合)
有限責任事業組合(LLP:Limited Liability Partnership)は、有限責任と自由な内部自治を両立した組織形態です。有限責任事業組合は会社法ではなく、有限責任事業組合契約法によって認められる組合です。出資者間における配当の取り決め等、株式会社に比して柔軟な取り決めが可能な点が特徴で、LLPは法人格がないため、法人税がかからず構成員へ直接課税される「パス・スルー課税」が適用されます。

 
 


上では、日系企業がマレーシア進出する際の会社設立形態の概要を解説しましたが、どの制度においても実際の設立において当局との密なコミュニケーションや必要書類の十分な準備が不可欠です。
各形態のメリット・デメリットを事前に十分に把握し、必要に応じて現地に精通した専門化のアドバイスを受けながら、自社の受けられるメリットが最大化される形態を選択すべきと考えられます。
 

人と人とのつながりから生まれる幸せを大切に

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とーます(外部ライター)

マレーシア大手会計事務所勤務の会計士。会計・税務・M&A・ベンチャー支援・アジア進出支援等、大小さまざまな日系クライアントの経営課題と向き合う。クライアントの課題解決に向けて、クライアントと共に成長していくことを生きがいとする。

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