【マレーシア法務ブログ】第18回:登録商標の侵害

TNYグループのマレーシア事務所の弁護士の荻原と下田です。今回は登録商標の侵害について解説していきます。

 

第1 商標の侵害

1.侵害行為
取引の過程において、登録商標所有者の同意なしに、登録された商品又はサービスと同一の商品又はサービスについて登録商標と同一の標識を使用することは、登録商標の侵害にあたるものとされています。

また、同様に、取引の過程において、登録商標所有者の同意なしに、登録された商品又はサービスと類似した商品又はサービスについて登録商標と同一の標識を使用し若しくは登録された商品又はサービスと同一又は類似した商品又はサービスについて登録商標と類似した標識を使用しており、結果として公衆の一部に混乱を生じさせる可能性がある場合にも、登録商標の侵害にあたるものとされています。

ここでいう標識(商標)の「使用」とは以下の行為を指すものされています。

a) 標識を商品又はその梱包につけること
b) 標識の下で販売のため商品を提供又は陳列すること
c) 標識の下で商品を市場に出すこと
d) 販売のために提供又は陳列するため若しくはそれらを市場に出すために標識の下で商品を在庫として保有すること
e) 標識の下でサービスを提供又は供給すること
f) 標識の下で商品を輸入又は輸出すること
g) 請求書、カタログ、ビジネスレター、ビジネスペーパー、価格表その他の商用の書類(他の媒体における同様の書面を含む)に標識を使用すること
h) 広告において標識を使用すること

 

第2 侵害行為の例外

(1)侵害に当たらない行為
1.に該当する場合であっても、以下の場合には、侵害行為を構成しないものとされています。
 
a) 誠実な意図をもって、自分の名前又は自分の事業所の名前を使用した場合
b) 誠実な意図をもって、事業の前任者の名前又は前任者の事業所の名前を使用した場合
c) 誠実な意図をもって、以下の内容を表すために標識を使用した場合
• 商品又はサービスの種類、品質、量、用途、価値、地理的期限その他の特徴
• 商品の製造時期又はサービスの提供時期
d) 産業又は商業上の事項に関する誠実な慣行に従い商品(付属品、予備の部品又はサービスを含む)の用途を示すために標識を使用した場合

また、登録商標と同一又は類似した未登録商標を登録された商品又はサービスと同一又は類似した商品又はサービスについて使用したとしても、以下の日のうちいずれか早い日よりも前から、取引の過程において、継続的にその未登録商標をその商品又はサービスに使用していた場合には、侵害とは扱われないものとされています。

• 登録商標の登録日
• 登録商標所有者、その事業の前任者又は廃止された法律に基づき登録された使用者が最初にその商標を使用した日

(2)使用目的等による例外
以下のような場合には、商標の使用は侵害を構成しないものとされています。

a) 非営利目的での使用
b) ニュース報道又は時事解説目的での使用
c) 登録所有者又はそのライセンシーから明示又は黙示に同意された使用
d) 実質的に同一と認められる2つ以上の登録商標のうちの1つを、本法が規定する登録によって生じる当該商標の使用の権利を行使して使用すること

 

第3 登録商標所有者がとりうる手段

1.民事訴訟
登録商標所有者は、登録商標を侵害した者、現に侵害をしている者又は侵害を引き起こす可能性のある行為を行った者に対し訴訟を起こすことができます。この訴訟において、裁判所は、登録所有権者に対し、以下のような救済を与えることができます。

a) 裁判所が適切であると考える条件を付した差止命令
b) 損害賠償命令
c) 利益返還命令
d) 裁判所が適切であると判断した追加損害賠償命令

また、登録商標所有者の暫定的差押の申立に応じて、裁判所は以下の命令をすることができます。
• 侵害が疑われる商品、材料又は物品の差押・保管
• 侵害に関連する証拠書類の提供

加えて、裁判所は侵害者が保有、管理又は支配している商品、素材又は物品から登録商標を侵害している標識を消去、削除又は除去するよう命じること若しくはその消去、削除又は除去が合理的に実行可能ではない場合には当該商品、素材又は物品を破棄するよう命じることができるものとされています。

2019年商標法は、マレーシアにおける商標登録日以前に生じた侵害については、上記救済は与えられないものとしています。そのため、商標登録日以前に生じた侵害については、判例法上認められてきた詐称通用に基づく救済を求めることになるものと思われます。詐称通用については、次回以降に解説をいたします。

 
2.行政上・刑事上の措置
(1)輸入禁止措置
登録商標所有者又は権限を与えられたライセンシーは、一定の時間及び場所において登録商標を侵害する商品が取引目的で輸入されることが予想される場合、商標登録官に対して輸入禁止措置の申請をすることができるものとされています。

この申請が認められた場合、裁判所が定めた期間中輸入された商品は留置され、申請者はこの間に民事訴訟を提起することとなります。

(2)調査の申立
2019年商標法は、一定の登録商標の侵害について、罰則を定めています(一例として、登録所有者の同意を得ることなく、他者を欺罔する意図をもって登録商標と同一又は類似する標識を作成した場合、判決により、100万リンギッの罰金又は5年を超えない懲役若しくはその両方が科されるものとされています。)。

そのため、登録商標所有者は、侵害者の処罰を求めて、国内取引・消費者省(Ministry of Domestic Trade and Consumer Affairs)に侵害の事実を申告することができます。

 
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マレーシア弁護士と共に、会社設立手続き、各種ライセンス取得手続き、雇用契約書や就業規則の作成等の労務関連、売買契約書等の各種契約書の作成、法規制の調査、意見書の作成、DD等のM&A関連、訴訟・紛争案件、不動産譲渡手続き、商標登録等の知的財産権関連等、幅広い法務関連サービスを提供している。多くの日系企業と顧問契約を締結している。 また、ヤンゴン(SAGA ASIA Consulting Co., Ltd.)、バンコク(TNY Legal Co., Ltd)、大阪・東京(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、テルアビブ(TNY Consulting (Israel) CO., LTD.)にも関連事務所を有する。

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