こんにちは、パクチー丹羽です。
ホーチミンでは、乾季の終わりが近づき、じわじわと暑さが増しています。
そんな、季節の変わり目である3月。映画館に行くことになったまもるとあやな。
バレンタインを経て仲直りした2人の関係に早くも変化が!?
最後まで目が離せません……!
第9話
Cinema in Ho Chi Minh
~映画の中の君と~
もう2月が終わってしまった。
バレンタインが終わったと同時に、2月も一瞬にして終わってしまった感覚だ。
❝『なんで好きになっちゃったんだろう』❞
バレンタインの時にあやなが言った言葉を思い出す。
あれはどういう意味だったのか。何度も頭で反芻してしまう。
『もう、まもる遅い! 始まっちゃうよっ』
「あ、ごめんごめん……って早くない?」
あやなが、韓国の恋愛映画が見たいって言うから、今日はダイヤモンドプラザにあるロッテシネマに来た。
ダイヤモンドプラザの外観は春仕様の飾りになっていた。
そうか。ホーチミンは今からまた暑さが厳しくなるけど、北部では一応春の季節だしな。
ダイヤモンドプラザの4階まで進み、奥に見えるエレベーターで映画館へ向かう。
事前に予約はしていなかったが、空いていたので、すぐに席が取れた。
『ポップコーン美味しいんだよね~。甘いのとチーズ、どっちが好き?』
「うーん」
『甘いのねっ』
「えぇ」
自分から聞いておいて……。
まあ、僕が優柔不断だから、あやなのはっきりした性格は実はありがたい。
『はいっ』
大きなポップコーンを抱えながら、ジュースを渡してくる。
「ありがとう」
『楽しみだな~。この映画、初恋の人に10年ぶりに会って、また両想いになるっていう話なんだって』
「おい、観る前のネタバレやめろよ」
『いいのっ! だからこの映画はまもると観に来たかったんだ~』
「え? なんで?」
出た。
たまに出る意味深なあやなの発言。何なんだ。
『え、映画! もう始まっちゃうよ! 行こうっ』
中に入ると、映画はすぐに始まった。
ベトナムの映画館は、前の映画が終わったらすぐ清掃が入り、5分後には次の上映が始まるという、なかなかハードなスケジュールでやってるみたいだ。
『まもるはさ、初恋とか・・・覚えてる?』
暗闇の中、あやなが僕の耳元で聞いてくる。
「は、初恋? 小学校とかなんじゃないかな、多分」
距離感にドキドキしてしまって、つい適当に返してしまった。
『・・・。多分って』
「そう言うあやなは?」
『私は・・・はっきり覚えてる。小学生の時、家が近かった3つ上の幼馴染の男の子のことが好きだったんだ』
「へー。俺と同い年じゃん」
よく覚えてるな。
初恋とか、この年になったら覚えてないだろ、普通……。
映画が終わり、観客はすぐに立ち始めた。
ベトナムでは、エンドロールを観ずに本編が終わったと同時に一斉に帰ってしまう。
僕とあやなは、もうちょっと映画の余韻に浸っていたかったから、エンドロールまで観てから出た。
「想像以上に映画感動した~。昔の俺もこんな感じだったっけな~」
『え・・・思い出したの?』
「何を?」
『なんだ。もう、まもるのバカっ』
ん……?
『福岡市城南区。私の出身地』
え……
それって僕が小学校までいた場所……
ってまさか……! そんな偶然って。
必死に記憶を辿る。
僕が小学校の時、引越しの日に泣きながら車を追いかけてきた幼馴染の女の子がいた。
❝『私は・・・はっきり覚えてる。小学生の時、家が近かった3つ上の幼馴染の男の子のことが好きだったんだ』❞
あの時の子が、あやな……?
だけど、まさかホーチミンで再会するなんて、そんな超確率が低いことが起こるのか……?
「もしかして、あやなさ……」
『きょ、今日友達と予定あるから、先に帰るねっ』
「あっあやな、ちょっと待って……!」
「はあ。嘘だろ……」
きちんと確かめようと思ったのに、あやなはちょうど来たエレベーターに乗って行ってしまった。
あやなが行った後のエレベーターのボタンを押す。
“ピコんっ”
こうすけからLINEかよ。
“俺、あやなとヨリ戻すつもりです”
「えっ!?」
ついさっきのあやなの話で混乱しているところに、一体今日は何なんだ。
こうすけは……やっぱりヨリ戻す気あったんだ。
“ホワイトデーに、告白するって決めましたから”
急いで携帯のカレンダーを見る。
やばい。ホワイトデーはもうすぐだ。
あやなとこうすけが、その後も飯に行っていることは知っていたけど、あやなは何もないって言ってたのに。
いや、色々考えている暇はない。
モタモタしていると、あやなはこうすけとヨリを戻してしまう……。
ダイヤモンドプラザの外に出ると、もう日は沈み始めていた。
「こうすけ、告白するのか……」
まだ気温が高い夕方の風に吹かれながら、赤く染まるホーチミンの空を見上げる。
確かに、こうすけの方が、あやなと一緒にいた年月は圧倒的に長い。
だけど……
「あやなのことは……渡したくない」
映画館編-完-
まもるとあやなの関係って、そういうことだったの!?
何年ぶりに再会した幼馴染のまもると、長年付き合って大事にしてくれていたこうすけ。
あやなはどっちを選ぶのか!?
決戦のホワイトデーは、もうすぐそこに……!
次回もお楽しみに。
ホーチミンの映画館まとめ
ベトナムでは映画館市場のシェアのうち、韓国系2社とインドネシア系1社の上位3社だけで83%を占めています。
ハリウッド映画は、日本よりも早めに上映。
人気のジャンルはアクションやホラーで、日本と同じように映画は娯楽の1つとして人々の生活に身近なものになっています。
ここで、ホーチミンでおすすめの映画館3選をご紹介します。
・CGV
韓国系の映画館で、ベトナム国内でのシェアは43%の最大手。
国内で38か所で展開しています。
・BHD STAR CINEPLEX
ホーチミンの象徴的なビル、ビテクスコ内にある映画館。
街の中心部の分かりやすい場所にあるので、ぜひ行ってみてください。
・LOTTE CINEMA
ホーチミン市内だけで8店舗ある、韓国発の映画館。
ベトナムでは2番目のシェアを誇っています。
韓国映画が観られますが、作品によってはベトナム語字幕のみの映画もあります。詳細はお出かけ前に公式HPでご確認ください。
※情報は、2017年3月現在調べです。