みなさん、明けましておめでとうございます。
パクチー丹羽です。
クリスマスが終わったと思えば、年を越して、気が付くと2017年を迎えていました。
ちなみに、ベトナムでは新暦ではなく旧暦のお正月(テト)の方が重要なので、1月1日のカウントダウンイベントはあるものの、特別何かをすることはありません。
さて、そんなホーチミンにいるまもるとあやな。
クリスマスを一緒に過ごして良い雰囲気になったかと思えば、最後に怪しい影が?
2017年は、油断できないドキドキの幕開けになりそうです。
第6話
Suoi Tien park in Ho Chi Minh
~知らない君と僕らの時間~
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この間、ホーチミンに転勤になった友達が来越するから一緒に観光地に行こうって連絡が来た。
会社以外であやなと会うのは、クリスマス以来だ。
ここ2週間、あやなは少し忙しそうだった。
相変わらず、退社は早いけど、いつもみたいに「一緒に帰ろう」とも言ってこなくなったし、ご飯にも行かなかった。
まあ、付き合っているわけじゃないし、2週間何もないくらい普通だよな。
今日は、噂のスイティエンパーク(Suối Tiên Amusement Park)へ。
どうやらこの公園は、観光地としても有名で、地元の人もよく訪れるらしい。
あやなは、一旦友達を迎えに行ってからスイティエンパークに来るから、今日は現地集合だ。
詳しいことは聞いていないけど、その“友達”というのは……男らしい。
ホーチミン中心部から1人バスに20分くらい揺られたところで、目的地のスイティエンパークに着いた。
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エントランスから……す、すごいカオス、いや、迫力だ。
中に入ってまっすぐ進んだあたりに、2人がいた。
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『あ! まもるおはよう!』
あやなが気づいて駆け寄ってくる。
その後ろから、あやなの友達もついてきた。
「初めまして! こうすけです。今日は、お邪魔します!」
「あ、まもるです。よろしくお願いします」
『ちょっとー。堅いよ、まもるっ』
この人が、言ってた男友達か。
背はあやなより少し高いくらい、整った顔立ちで、爽やかだ。
なんか、すごく仲良さそうな雰囲気が出てる……。
「じゃあ、行こうか」
こうすけが、先に歩き始める。
『ちょっとこうちゃん待ってよー! まもるも行くよっ』
「あ、うん」
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彼に駆け寄るあやなの後ろをついていく。
「こうちゃん」って呼んでるんだ……。
『わー、綺麗。写真撮ろう!』
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僕らを置いて、あやながはしゃいでいる。
「えっと、まもるさんはおいくつですか?」
「28です」
「あ、そうなんですね! 僕は26なので、あやなの1個上です」
「なるほど」
他愛のない話をしながら、とにかく派手でつっこみどころが多いスイティエンパーク園内を3人で歩き回る。
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『ねえ、ジェットコースター乗ろう!!』
「ええ、俺はいいや」
こういうアトラクション系はかなり苦手だ。
あやなはジェットコースターみたいな絶叫系が大好きって言ってた。
『えーもったいない。こうちゃんは?』
「乗る乗る! ベトナムでジェットコースターとか超面白そう!」
『やったー! 行こうっ! まもるちょっと待っててね』

あやながこうすけの手を引っ張り走って行く。
クリスマスの時に、あやなと手を繋いだことを思い出す。
あの時、僕はかなり緊張したけど、あやなにとっては……普通なことなのかな。
楽しそうにジェットコースターに向かう2人。
僕は目が離せなかった。
『楽しかった~』
「な! もう一回乗りたいくらいだわ」
「おかえり」
2人が帰ってきた。
『次は何のアトラクションに乗ろうかなー』
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2人はずっとケラケラ笑いながら、楽しそうに話している。
今日のあやなは異様にテンションが高い。
ほんとにこの2人、仲良いな……。
「ちょっと、トイレに」そう言って、こうすけは出かけていった。
『あれ? こうちゃんは?』
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「トイレだって」
『あ、そうなんだ』
「・・・」
沈黙が流れる。
『まもる。こっち来てよ。今日・・・なんか遠いよ?』
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「えっ」
沈黙を破って、突然僕の方を見てくる。
今日のあやなはずっとこうすけと話をしていて、僕とは目が合わなかったから、こっちを見られると変に緊張してしまう。
「あ、ごめん」
『もう、私とこうちゃんに、嫉妬しちゃった?』
「い、いや、そんなことあるわけないだろ」
『ふーん』
やっといつものあやなの感じで話してくれた。
そうやっている間に、こうすけが帰ってきた。
「暑いわー、ビール飲みたくない?」
『えっ飲みたーい!』
「乾杯~!」

『ってうわっ! こぼしちゃった』
「何してんだよ」
乾杯の勢い余って、少しこぼしてしまったみたいだ。
『ちょっと洗ってくる~』
僕とこうすけ、2人きりになった
「まもるさんは、あやなと同じ会社の方なんですよね」
「あ、そうです。こうすけさんとあやなはどこで知り合ったんですか?」
「ああ、高校と大学が同じなんですよ。ってあやな何も言ってないんだ」
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「・・・実は、僕たち前付き合ってたんですよ」
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・
・
「っえ」
え、ええええええ!
こうすけが、あやなの元彼……!?
ホーチミンに来る前に別れて、忘れられなかったって言ってた元彼ってやつが、この、こうすけ!?
『お待たせ~! ん? まもるどうしたの?』
“元カレ”……衝撃の事実を聞いてびっくりしすぎて、あやなをじっと見てしまった。
「ああ、いや何でもない」
『そう?』
また普通に会話が始まるが、もう2人の関係のことで頭がいっぱいだ。
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なるほど、どおりで仲良いわけだ。
「確かに、お似合いだな・・・」
つい本音が出てしまう。
こうすけは、ホーチミンに転勤してきたって言ってたから、これからずっとこっちにいるのか。
別に、僕は彼氏でもないから、何ってことはないはずなのに。
変な心のモヤモヤが、消えない。


「腹減ったなぁ」
『私もお腹空いた~』
気づいたらもう2時だ。
スイティエンパークは、とにかく広くて1日中遊べる。
朝から来ていた僕らも、だいぶ歩き回って疲れたので、ご飯を食べることにした。
園内には、野外レストランや、露店があちらこちらにある。
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露店がいっぱい並んでいるスペースを見つけ、それぞれ食べたいものを頼んでいる。
僕はテキトーに麺を頼んで、2人のいる席にもどる。
『miが麺で、xaoは炒めるって意味だから、これは焼きそばみたいなもの!』
「へぇー、よく知ってんじゃん」
『もう、すぐ上から目線になるんだから~』
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まあ、そりゃあ仲良いはずだよな。
だって、付き合ってたんだし。

変な気を遣ってしまって、後ろを歩いてしまう。

『え、ハリーポッター!? 楽しそう!』
2人がチケットを買って中に入ろうとする。
「俺は、いいから、2人で行ってきなよ」
ああ、どんどん余計な気を遣ってしまう。
そんな自分にイライラして、ずっとモヤモヤが消えない。
『え、また? まもるも一緒に行こうよ』
ダメだ。
このままだと、イライラが態度に出てしまいそうだから、一旦離れよう。
2人を置いて、とりあえず歩き出す。
「・・・はぁ」
ああ、大人げない。
雰囲気を悪くしてしまったかな。
……いや、きっと2人は楽しんでるんだろうな。
楽しそうな2人を想像しながら、1人園内をぶらぶらする。
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『まもる!』
「え?」
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「え、何してるの」
『何してるのじゃないよっ! 探してたんだからね』
「こうすけさんは?」
『知らないよっ。もう、なんでまもるどっか行っちゃうの?』
「いや、だって...いや、ちょっと体調悪くなってさ」
だって、2人は付き合ってたんでしょ……とか言えない。
それで嫉妬していることとかばれたら、かっこ悪すぎる。
なんとか冷静になって、2人のところに戻る。
あやなが僕を探しにきてくれたことが、情けなくも、正直嬉しかった。


気が付いたら5時だ。
けっこう長い時間滞在してたな。
帰りは3人でバスで帰る。
『はあ~、楽しかった! けど、疲れちゃったね』
バスに乗ってすぐ、こうすけは寝てしまった。
僕もかなり疲れたから寝たかったけど……今が、あやなに聞くチャンスだ。
「あのさ・・・こうすけさんとどういう関係なの?」
『え? どういう関係って、何にもないよっ』
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「本当に?」
ゴトンっ
バスの運転が荒く、左右に揺れ、寝ていたこうすけが、あやなの方に傾く。
『・・・ほ、本当だよっ』
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やっぱり、言わないんだ。
「そっか」
いつもの笑顔で微笑んでくるから、それ以上、何も言えなかった。
もしかしてまだ、未練とか……ヨリ戻す気とか、あるのかな。

『じゃあ、帰るね。今日はありがとう。こうちゃん、また後で連絡してっ。バイバーイ!』
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「こうすけさん、あやなと後で会うんですか?」
「あ、はい。お店とかまだ全然分からないから、晩飯連れてってくれるって」
「そうなんですね」
「っていうか、まもるさんって、あやなのこと、好きなんですか?」
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「えっ」
「バスで問い詰めてたから」
「っ・・・」
周りからそんなはっきり聞かれたことないし、自分でも考えたことなかった。
手を振って帰っていったあやなの方を、もう一度見る。
好き……なのか?
もうそこにあやなの姿は見えないけれど、雲のないオレンジ色の夕暮れ空に、なぜだか胸が苦しくなった。
スイティエンパーク編―完―
まさかのあやなの元カレ登場に、焦るまもる。
順調に見えたあやなとまもるに、波乱の予感。
1月末は、テトの長期休暇で会社も休み。しばらく会えなくなる前に2人に動きが?
次回もお楽しみに!
【スイティエンパーク(Suối Tiên Amusement Park)】
住所:120 AH1, Tân Phú, Hồ Chí Minh, Tân Phú
営業時間:平日 7:00~17:00
土日 7:00~18:00