【ミャンマー法務ブログ】第15回:年次報告書の提出義務

第1.はじめに

2019年10月22日、DICAよりミャンマー企業オンライン(以下「MyCO」という。)に登録している企業が年次報告書の提出を怠らないことを勧める旨のアナウンスが公表された(以下「本アナウンスメント」という。)。本アナウンスメントによれば、合計67,443企業(新規+再登録)がMyCOに2018年8月1日から2019年10月16日までに登録されている。MyCO上、2019年10月16日時点で、合計2,792企業が年次報告書の提出を怠っていることが示されている。

 

第2.本アナウンスメントの内容

2017年ミャンマー会社法(以下「会社法」という)第97条で、全ての企業は設立から2か月以内及び少なくとも毎年(ただし、設立日から1か月を超えない)、年次報告書と呼ばれる報告書を登記官に提出しなければならない。

公開会社は、公開会社の財務諸表フォームG-5を使用して、会社法第266条第(a)項に基づき年次報告書と同時に最終の財務諸表を登記官に提出しなければならない。
国内で事業を実施する全ての海外法人は会計年度末から28日以内に登記官に年次報告書を提出しなければならない。

年次報告書フォームが13カ月以内に提出されない場合、システムはフォームI-9Aを用いて企業に終了通知を送付する。年次報告書フォームがI-9Aの受領から28日以内に提出されない場合、システムは企業の現状を停止(Suspended)に変更する。企業が停止の現状にある場合、初回年次報告書フォーム及び遅延料(年次報告書+遅延料)が提出されなければならず、同状態の停止をフォームI-9Dを用いて提出する。停止企業は年次報告書代(50,000)+遅延料(100,000)+I-9D企業復帰料(100,000)=250,000チャットを支払うことで停止を取り消す必要がある。停止が登録された日から6か月以内に年次報告書フォームが存在しない場合、システムは会社の現状を削除(Struck Off)として表示する。

 

第3.会社法上の規定

会社法上、上記のとおり、現地法人及び海外法人いずれの場合においても毎年提出義務が課されている。しかし、提出する時期及び内容は異なる。

1.現地法人の場合
現地法人の場合には、設立から2か月以内、及びその後は毎年1回。但し、毎年設立日から1か月後以降であってはならない。
他の法律により除外される場合を除き、年次報告書には株主等の所定の情報を記載しなければならない。
なお、登記官に提出した当該年次報告書及びその写しは、当該会社の取締役又は秘書役により署名されている必要があり、当該リスト及びサマリーに当該日付における事実が記載されている旨の文言が記載されていなければならない旨会社法上規定されている。

2.海外法人の場合
海外法人は、登記官に対して各会計年度の末実から28日以内に年次報告を提出する義務がある。
また、少なくとも年に1回、15か月を超える期間を空けずに、以下の財務諸表を提出しなければならない。
(i)直近会計年度の末実時点における貸借対照表
(ii)直近会計年度のキャッシュフロー計算書の写し
(iii)直近会計年度の損益計算書の写し

なお、本店所在地の法律上、上記3つの財務諸表が必要とされない場合、登記官は会社に対してミャンマーにおける事業に関する当該財務諸表のいずれかの作成及び届出を要求することができる。この場合、当該財務諸表は等が異界者は公開会社として設立された場合に作成することが必要となる様式又は所定の様式にて作成されなければならない。

 

第4.まとめ

以上より、ミャンマーに進出している企業は、自社が現地法人であるか海外法人であるかに応じて必要な年次報告書について対応済みかを直ちに確認し、対応が未了の場合には直ちに対応する必要がある。また、対応済みである場合も、今後も毎年必要となることから、担当者が帰任などで交代したとしても、会社として今後も対応を失念しないような体制構築を行うことが重要である。自社で対応が難しい場合には弊事務所等の法律事務所に相談することが望ましい。

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TNY国際法律事務所 TNYグループ
日本国弁護士:堤雄史
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