第1.はじめに
2019年10月3日、ミャンマー投資委員会(MIC)及び管区、州投資委員会の許可及び是認に基づき投資を行っている会社における時間外労働について告知(Announcement)(以下、「本告知」という。)がMICより発布された。
第2.本告知の内容
本告知において、MIC及び管区、州投資委員会の許可及び是認に基づき投資を行っている会社は以下の事項を遵守しなければならないと規定されている。
・時間外労働は、平日(月曜日から金曜日)に3時間又は土曜日に5時間を超えない範囲でのみ認められる、また、その場合においても、会社は時間外労働を求める従業員より、承認の署名を得なければならない。
・日曜日又は祝日の時間外労働に関して、会社は従業員から承認の署名を得て、かつ、職場調整委員会の了承を得なければならない。
・全ての従業員は、4週間の期間内で1日を超える日曜日勤務を行う必要はない。
第3.本告知の影響
本告知の文言上は、対象企業は明確にMIC許可又はエンドースメントを取得した企業と規定されており、それ以外の企業は対象外と解される。
しかし、2019年11月4日にMICのInvestment division 2のAssistant Directorに確認したころ、本告知はMIC企業へのリマインドのために出した告知であるが、本告知に記載されている時間外労働規制は工場及び一般労働法検査部が出している内容と同じであり、同部署は労働省管轄下である。そのため、ミャンマーに設立されている会社全てが本告知に従った方が良いとの回答を得た。
また、工場法60条(b)において、工場管理者は、その日の前までに、週休日で、工場の必要性のために労働者が作業する必要がある場合、使用者又は工場管理者は労働者の承認を得て、工場を管轄する検査官に届け出て、一般労働部によって承認され許可を得た場合、働くことを許可されるものとする旨規定されている。
更に、休暇及び休日法施行規則においても、休日又は祝日に労働させる場合、労働者の同意を得た上で事前に労働局に届け出て許可を得なければならない旨規定されている。
以上より、確かに法律上は少なくとも休日又は祝日に労働をさせる場合には労働者の承認及び当局からの許可が必要であることが規定されており、それが実務上はあまり運用されていなかったものを厳格に法律通り運用することを明確化したものとも解される。
したがって、全ての企業において時間外労働を行わせる場合には本告知の内容を念頭に運用を行うことが問題になることを防ぐためには安全と解される。また、その際には上記のとおり日曜日又は祝日の時間外労働に関して労働者の承認のみならず職場調整委員会の承認も得る必要があり、労働者が30名以上の企業は早急に職場調整員会を設置する必要がある。近時、労働事務所より職場調整委員会を設置するよう指導を受けた企業も存在し、職場調整員会の設置を促すことも本告知の目的の1つに含まれていると解される。
<本記事に関するお問い合わせはこちら>
TNY国際法律事務所 TNYグループ
日本国弁護士:堤雄史
連絡先:yujit@tny-legal.com
HP:http://tny-myanmar.com