【ミャンマー法務ブログ】第16回:ミャンマーにおける新型コロナウイルス関連の主な規制

第1.新型コロナウイルス関連のミャンマー政府の発表

世界中で新型コロナウイルス(以下「COVID-19」という。)の影響が出ており、ミャンマーにおいても現時点(2020年4月30日時点。以下同じ。)ではCOVID-19の感染者計151名が公表されている。それに伴い、相次いでミャンマー政府からCOVID-119の影響に基づく関連する政策が発表されている。主な政策は以下のとおりである。

1.政策金利
3月12日付けで、ミャンマー中央銀行は、政策金利を0.5%引き下げ年9.5%にすると発表した。政策金利の変更は2012年以来、8年ぶりとなる。ミャンマーでは政策金利に応じ、民間銀行の融資及び預金の金利の幅が決まる形となっており、担保付き融資の上限は現在の13%から12.5%に、預金金利の下限は8%から7.5%にそれぞれ引き下げられる。当初は4月1日から施行とされていたが、翌日3月13日に急遽3月16日より施行する形で前倒しする旨のアナウンスが発布された。更に、同月24日付けで、4月1日より政策金利を更に1%引き下げ、8.5%にすると発表した。その後、4月27日付で5月1日より7%に引き下げると発表。

2.社会保障
3月20日付けで労働・移民・人口省より社会保障に関する2つの通知及び1つのインストラクションが発布された。COVID-19の影響で事業所を一時閉鎖した場合、社会保障委員会が本当に閉鎖しているかを審査し、真に閉鎖していると認められた場合、業務再開までの期間は社会保障料の支払が停止される旨のInstructionを発布した。また、社会保障料の支払について、通常は翌月15日までに支払う必要があるが、3か月以内に支払えば良いという形に変更になった。さらに、社会保障法に基づく医療給付などはCOVID-19の影響で失業しても1年間は利用可能である旨も規定されている。

4月28日に同省より一定の要件を満たした会社に給料の40%を支給する旨の通知。

3.入国規制
3月24日付で、外務省より同月25日から全ての外国人(外交団及び国連職員を除く)に対して、COOVID-19陰性証明書の提示及び14日間の施設検疫を義務付ける旨発表された。その後、4月11日よりCOVID-19に感染した疑いがある人の隔離期間を合計28日に延長する旨発表。
国際旅客航空便のミャンマーへの着陸禁止措置、e-visaなどのビザの発給停止。

上記措置は当初は4月30日までとされていたが、5月15日まで延長される旨発表されている。

4.集合禁止や工場などの検査義務
4月16日付けで、保健・スポーツ省は企業や工場の業務などの一部の例外事項を除き、原則5名以上で集まることを禁止する通知を感染症予防管理法に基づき発布した。

4月19日付けで、労働・入国管理・人口省よりミャンマーにある工場、ワークショップ、商業施設は保健・スポーツ省が発表しているインストラクション及び指示に遵守している場合のみ、再開が認められる旨の通知が突如発布された。したがって、労働・入国管理・人口省及び保健・スポーツ省が協力して、関連する部門は2020年4月20日から2020年4月30日までの期間内に、各工場、ワークショップ及び商業施設で職場検査を行う。指示に準拠している場合は、再開が許可される。ここで言う保健・スポーツ省が発表しているインストラクション及び指示とは、4月19日に発布された従業員のために職場までの往復の交通手段を提供すること、混雑を避け従業員が6フィート離れて出入りできるよう就業時間を指定すること、手洗いを促進するポスターを掲示すること等の基準を規定したインストラクションを意味する。

 

第2.今後の対応

上記は規制の一部であり、上記以外にも省、管区、タウンシップなど多くの公的機関が多数の通知を発布している。

多数の通知が出ているため、全ての詳細を把握することは困難と思われるが、少なくとも概要は確認した上で、自社の事業に関連する可能性がある通知については詳細を理解した上で対応することが望ましい。また、各種給付や支払い猶予について今後更に発表されていくと思われ、これらの措置も該当する場合には積極的に最大限活用されることが望ましい。さらに、休業時や退職時の取り扱いについても改めて体制を整備し、全従業員に対し、公平な対応をとることが紛争を回避することにつながると解される。

参考として、ミャンマーの保健・スポーツ省のウェブサイトにおいてCOVID-19に関する情報が掲載されている(http://mohs.gov.mm/Main/content/publication/2019-ncov)。

 
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