以前の記事「シンガポール移住までの期間と流れ」では、海外転職活動後に「妊娠」が発覚後も、日本に旦那を残し妊婦一人でシンガポールに移住してきた経緯をご紹介しました(笑)。
初めての妊婦生活を異国で過ごしている期間は、検診や出産の医療環境や妊婦生活、子育てに関して、特に日本との違いについて、色々と聞かれることが多いです。また、「なぜそこまでして日本を離れて移住を決めたのか」など、周囲からよく疑問視されます。
駐在員の旦那に同行し、現地で妊婦生活を送られている方や現地出産を経験する方も多いかと思います。異国での出産に対する家族の心配もあるでしょう。今回はシンガポールにおける妊婦生活の過ごし方についてまとめてみました。
1. まずは現地の医療事情、病院探しからスタート
異国での妊婦生活や現地での出産を経験する可能性があるとなれば、まずは現地の医療制度や妊婦検診・出産ができる病院をリサーチするところから始まります。幸いシンガポールは、多くの日本人奥様による現地出産の体験報告がブログなどに紹介されたり、病院情報などが発信されています。またネットだけでなく、現地で実際に妊娠・出産を経験された知り合いがいれば、生の声を聞いてみると非常に参考になるでしょう。シンガポールはアジアの他国に比べても現地での出産実績は多い国として認知されているので、出産環境として他の途上国に比べても安心して検討することができます。
次に医療の品質や設備水準は、日本と同等かそれ以上と言われています。さらにシンガポールには多くの日系病院もあり、日本人産婦人科医から日本語で健診を受けることが可能ですので、日本で健診をうけるのと環境的にもなんら変わりはありません。大きな違いがあるとすれば、習慣や文化的な理由での治療や診察方法です。例えばシンガポールでは「無痛分娩」が主流であるのに対し、日本ではいまだ「自然分娩」が一般的で、無痛分娩を選択できる産院は限られています。また早い段階から胎児のリスクを見つけ出すために、日本ではあまりやらない超音波スクリーニングと呼ばれる精密検査(非常に高額)も推奨されています。
他に病院選びで重要な比較要素があるとすれば、妊娠期間中の費用です。日本ではほとんどの市区町村から妊婦健康診査の助成制度があり費用の負担を軽減できますが、国外ではもちろんそうした助成制度はありません。そのため健診にかかる費用は(自身あるいは旦那が所属している)会社か個人で加入している医療保険でカバーできない限りは、全額自費になります。全額自費の場合は、目安として日系の大きな病院の一度の健診で200-300シンガポールドル(日本円で16000円~24000円)くらいは負担する覚悟でいましょう。政府系の病院ならば、言語や医師も現地式ですが、もう少し費用は抑えられると思います(が、その分待ち時間も多いといわれています)。
シンガポールの病院では、妊婦健診の費用は前半・後半にわかれ、それぞれパッケージ費用(パッケージには母親学級、予防接種、検査、出産費用などが含まれていることがありますので、個別に病院に内容を確認しましょう)になっていることがありますが、一定期間内での妊婦健診に合わせてアラカルト(単品)での支払いも可能です。
こうした健診にかかる費用の事情もあり、現地で加入する医療保険で妊婦に関連する治療が保障されるかなどは、事前にしっかりとチェックしておくことをお勧めします。
私の場合は、会社が加入している医療保険では妊娠関連の治療費はカバーされないのですが、代わりに会社が提供する別の人事制度として、出産前後の治療費3,500~5,500ドルまで助成されることになっています。そのため会社系列の病院にこだわる必要はありませんでした。また安定期に入るまでは日本で妊婦健診をうけていたり、出産は9ヶ月目に地元での出産を検討していたことから、紹介状や母子手帳の翻訳などの手間が発生しない日系クリニックを選択しました。その他の病院選びの基準として、自宅や勤務先からのアクセスのしやすさ(いざとなった時に自力で駆けつけやすい距離)や信頼や実績、医療設備の整備、クリニックで過ごしやすい環境かどうかなどで決めました。シンガポールの病院では、日本人産婦人科医の数も限られていますので、1つの病院に担当医師は1人しかいないこともしばしば。産婦人科医ではなかなか病院が選べないという事情はあります。
2. 通う病院が決まったら、出産・育児の計画を立てる
通う病院が決まったら、担当産婦人科医や家族と相談しながら、出産計画(妊婦期間中の過ごし方や現地出産か里帰り出産か、後者であれば里帰りのタイミングや妊婦健診期間)を計画する必要があります。特に現地出産か日本で出産するかは、個人によって検討要素が様々なので、簡単に決められることではないと思います。私の場合も、シンガポール人の上司は現地出産を望み、私の家族は日本での出産を望んでおり、なかなかすぐには出産する国や産休期間が決まりませんでした。また米国のようにシンガポールは出生地主義ではないので、現地で産んでも子供にシンガポール国籍は付与されませんし(昔は出生地主義であったようですが)、妊婦健診は日系クリニックでも、大きな病院ではお産は現地の施設と共用し、現地の助産師が英語で担当するといったことも普通です。現地で出産となれば、出産前後でのサポートや育児の運用なども重要な検討要素の1つです。一方日本に帰国するとなれば、お産を予定している病院などに事前に連絡をとり、何週目まででどのような条件であれば受け入れてもらえるかなどを確認しておく必要もあります。そして、日本へ帰国時に利用する航空会社にも搭乗条件を確認しておくことが大前提となるでしょう。
私の場合は、現地出産のためのサポートが得られないということが最大の理由で、34週目までであれば地元の病院で受け入れが可能であったことから、日本への里帰り出産をなんとか認めてもらえることになりました。実際この記事を書いている現在が妊娠9ヶ月に入ったところですが、シンガポールでは雨季に突入し、高温多湿の気候で寝苦しく感じてきました。日中は体も重く、体調も疲れやすいため、会社に毎日通勤し、8時間働くのがなかなか辛くなってきました。2週間後に旦那が迎えにきて日本に帰国しますが、10ヶ月までは日本の自宅からシンガポールの仕事を継続し、10ヶ月目から16週間の産休に入る予定です。
3. 出産に関する日本の社会保障制度
出産育児一時金は、健康保険に加入していれば海外出産でも支給されます。私は産休後に旦那が1年間育休を取得し、一緒にシンガポールに帰国し、育児をバトンタッチします。シンガポールでは新生児の託児所サービスが充実しているので、日本のように育休を取得する概念がありません。その分、産休期間中は給与が全額支払われます。(日本の場合は産休・育休期間中は無給であることが多いので、健康保険で出産手当金や育児休業給付金などが支給されると思います)。
もう少し細かく出産後の費用を検討すると、日本の市区町村から支給される児童手当や予防接種、児童医療費助成制度などなど、住民税を払い続ける前提で日本に住民票を残したままであれば、受けられる助成も多いですよね。市区町村ごとに海外出産への助成制度も異なると思いますので、保健師や市役所などに相談して決めるのも手かもしれません。
随分と長くなってしまったので、実際の妊婦生活の過ごし方などについては、次回の記事にまわしたいと思います。まずはここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!