シンガポールでの妊婦生活2(妊婦に優しい社会事情)

前回の記事「シンガポールでの妊婦生活1(現地の医療事情と出産計画、社会保障制度)」では、現地で妊婦として過ごすにあたって検討すべき点をまとめました。今回は、実際にシンガポールで妊婦生活を過ごしている私だからこそ気がつくことのできた、日常の出来事や生活環境を共有することで、これからシンガポールで妊婦生活を送るかもしれない方々にとって重要な「生活の質(quality of life)」を考えていきたいと思います。

 

1. 公共交通機関では必ず席が譲ってもらえる

真っ先に伝えたいのは、市内の電車(MRT)や公共バスでは性別・国籍など関係なく、誰かが真っ先に気が付いて、すぐに席を譲ってくれます。東京で通勤していた時は、「マタニティマーク」をつけていてもほとんど譲ってもらえないまま、耐えられない時はその場でしゃがんでしまったり、途中下車したりと様々な苦労がありました。もちろん、日本でも気が付いて譲ってくれる方もいましたが、狭い車内の中であったり、仕事で疲れきったサラリーマンにしてみれば、譲るほど余裕がないのも理解できます。こちらにきて特に驚いたのは、バスの運転手が気づいて席を譲るよう乗客に指示してくれた時です。やはり、女性や高齢者・子供、多様性を尊重する社会的背景が関係しているのだと思います。

 

2. 至る所にナーシングルーム(授乳室)が設置されている

街中のデパートには必ずといっていいほど、トイレの近くにナーシングルームが設置されているのを見かけます。子連れの家族にとっては、嬉しい設備ですよね。実は私の勤務先の会社にも女性社員専用のナーシングルームが設置されています。妊婦期間中は長時間の座り仕事で足の浮腫みがひどくなるので、昼休みには足の浮腫みを解消するためのマッサージルームとして非常に重宝しています。授乳や搾乳機を利用する女性も多いです。日本で働いていた際は、そのような設備は会社にはありませんでした。ちなみに、会社の徒歩圏内には新生児から預けられる託児所がいくつかあり、働きながら一日に何度か授乳することができます。

 

3. 妊婦を気にかけてくれる周囲の人

ハードだけでなく、ソフト面でもシンガポールにきて良かったと感心してしまう点です。とにかく周囲からの気配りを多く感じながらマタニティライフを過ごせています。勤務先では出産を経験した女性が多いということもあってか、体調を気にかけてくれたり、栄養のあるものをもってきてくれたりしてくれます(シンガポールでは日本ほど体重管理が厳しくないこともあり…逆に太ってしまった原因にもなりました(笑))。ある時は、同僚から料理がまともにできないだろうと手作りのラザニアやサトウのごはんをもらったり、近所に住んでるから何かあったらいつでも連絡してと連絡先を教えてもらったりしました。また立ち話をする時はすぐに椅子を用意してくれたり、どうしてこんなに温かいのでしょうか。少し驚いた出来事は、街中でも遭遇しました。妊婦期間中はカフェインを取りすぎないよう大好きなコーヒーは避け、カフェでチャイティーラテを注文した際には、カフェのインド人店員が「チャイにもカフェインが含まれているから、やめたほうがいいよ」と警告してくれました。一瞬「大きなお世話!」と思うのですが、これも優しさからだと思って、改めて感謝しなければいけないところですよね。

 

4. ちょっとした驚きと注意事項

こちらにきて少し驚いたこともいくつかあるので紹介したいと思います。中華系の多いシンガポールでは、妊婦は必ずといっていいほど「温かい飲み物」を取ります。私は日本でもよく冷たい飲み物をとっていたのですが、冷たい飲み物を飲んでいると周囲に「妊婦は体を冷やしちゃだめ」と常に怒られてしまいます。お店の店員にも、”ice water”を注文すると、妊婦に冷たい水は出せないと断られることがあるくらいです。確かに中国料理を食べる時は必ず食後は皆温かいお茶を飲んでいて、こんな暑い国であるにも関わらず、体の代謝を上げて油の多い料理をきちんと消化する体質を整えることが習慣化しているのだと感じました。そのように考えると少し納得して、今ではお水はなるべく常温か温かいものをとるようにしています。
また現地では外食文化が強く、料理はマレー系やインド系・中華系が主流で、味が濃いので、塩分や油の量が多いです。ついつい食べ過ぎて、シンガポールに来てからというもの体重が一気に増加してしまいました。こうした食生活は太りやすく、自炊がしづらい妊婦にとっては厳重注意が必要です。

もう一つ注意事項としては、室内で過ごす場合の「冷え」でしょうか。会社でも街中でも、室内はクーラーが効き過ぎていて、すぐに体が冷えてしまいます。特に妊婦は血流が滞ることから、下半身の浮腫みに悩まされることがあるので、日本人にとっては足首まである冬用靴下が必須に感じるでしょう。ところが、シンガポールの人々はあまり靴下を履かず、素足・サンダルで過ごすことが多く見受けられるので、これには驚きます。

さて、ここまでの主要な点からシンガポールが妊婦にとって過ごしやすい国であることは察していただけたのではないでしょうか。ただ妊婦への優しさだけに甘える社会では決してなくて、出産直前までバリバリと働き、出産直後もすぐに復帰して働きはじめる女性の姿がこの国の経済を支えているからこそとも言えるのだと思います。日本では社会の目線が冷たく感じ、妊婦としての居場所がどこかわからなくなり、妊娠していることを周りに隠したがる自分がいたのを思い出しました。しかしシンガポールに来てからはビジネスパーク内にも、街中にも、電車にも、お腹が大きい女性が気を使わず、活発に堂々としている様子を見て、とても励みになっています。シンガポールでの女性の存在がここまで大きいというのは、世界的にも、特にアジアの中では珍しいのではないかと思う次第です。

日本の川育ち。海を越えシンガポールに渡りました。

日本の川育ち。海を越えシンガポールに渡りました。

ICONIC

東南アジアにいながら、実は南アジアが専門。日本の低気圧が苦手で、常夏のシンガポールでは何故か活力がみなぎる。小籠包とJolliebeeを愛する外資系ウーマン。日本に残るサラリーマンの夫を連れてくるため、戦略検討中。

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