みなさん、こんにちは。
ホーチミン在住のベトナム人Hanです。
みなさんはホーチミン観光の際に、どのエリアを見て回りますか。
サイゴン大聖堂、サイゴン中央郵便局、ホーチミン市民劇場……これらの有名な建築物が集中している1区を訪れるのではないでしょうか。もちろん1区は素敵なところですが、他のエリアにもおもしろい建築様式の建物がたくさんあります。
そこで今回は、2000年以上の歴史をもつホーチミン市の建築様式について説明するとともに、市内の各地にある有名建築物とその見どころをお伝えします。
ベトナム・フランス建築様式
ホーチミン市は長い歴史のなかで、幾度となく風浪や敵国からの攻撃にさらされてきました。現在は急速な発展を遂げていますが、今でも残るフランス様式の建築物は、そうした歴史の名残を感じさせてくれます。
かつて、フランスによるサイゴン(現在のホーチミン)の占領が行われた際、邸宅や教会、劇場といった多くの施設が建設されました。その後80年以上に渡り、フランス植民地時代が続いた結果、サイゴンは「東洋のパリ」と呼ばれるに至りました。
引用:http://trelangkienviet.vn/xem-anh/dinh-norodom-sai-gon–308–42103.html
ホーチミン市は、今もなお多くの建築物がフランスの影響を受けており、東洋・西洋の建築様式を融合させた見事な景観となっています。
代表的な建築物といえば、サイゴン中央郵便局、ホーチミン市民劇場、サイゴン大聖堂、人民委員会庁舎、ホーチミン市美術博物館、ベンタイン市場、統一会堂などが挙げられます。これらの建物は、時代の痕跡を感じさせるとともに、私たちベトナム人に感動を与えてくれます。
では、それぞれの建物の特徴について詳しく見ていきましょう。
サイゴン中央郵便局
パリ公社(Công xã Paris)通りにある「サイゴン中央郵便局」は、1886年~1891年にかけて、フランス人建築家のVilledieuとFoulhoux助手によって建てられました。
正面入口に掲げられた時計が印象的で、建物内に入ると特徴的なアーチ型の天井が目を引きます。
天井が高く風通しのよい空間に作られているため、観光の一休みに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
引用:http://infonet.vn/mau-son-moi-cua-buu-dien-tphcm-chi-la-do-chua-quen-mat-post155644.info
サイゴン大聖堂
郵便局の向かいには、サイゴン大聖堂があります。
130年以上の歴史をもつ見事な建築様式で、教会の前には小さな庭園と聖母像があり、両側をパリ公社通りが走っています。
教会はフランス人建築家のJules Bourardが設計、聖母像はイタリア人彫刻家のStephen G. Cecchettiによる作品です。そびえ立つ2つの鐘楼と、赤レンガの外観が特徴的ですね。レンガはフランスのマルセイユ地方から輸入したものだそうです。
聖堂内は光が差し込み、静寂に包まれ、訪れる人を厳粛な気持ちにさせてくれます。
なお、現在は修復工事の最中で、2019年~2020年に終了予定となっています。
引用:https://news.zing.vn/nha-tho-duc-ba-sai-gon-nhin-tu-camera-bay-post456269.html
ホーチミン市民劇場
1898年に建てられたホーチミン市民劇場は、フランス第三共和のゴシック様式となっています。
フランス人建築家のFélix Olivier、Ernest guichard、Eugene Ferretらが手がけた、豪華なエンボス加工が特徴的な建物です。
引用:https://www.phunu8.vn/tin-tuc/du-lich/trong-nuoc/vong-quanh-sai-gon-nha-hat-thanh-pho.html
これらがフランス植民地時代を象徴する、代表的な建築物です。
私は特にサイゴン中央郵便局が好きで、以前訪れた際には、その可憐な装飾にうっとりしてしまいました。いつまでも眺めていたい気持ちにさせられます。
ホーチミン市を訪れた人々は、「フランスの街に迷い込んだみたいだ」と冗談を言うくらい、素敵なところなのです。
ベトナム・中国建築様式
ホーチミン市の建築物は、西洋の建築様式に限らず、東洋(中国)の影響も受けています。
ホーチミン市内の5・6区には、ホア族と呼ばれる中国系ベトナム人の多くが定住しており、ベトナム最大の中華街を形成しています。中華街一帯は、チョロン地区またはチャイナタウンと呼ばれています。
ここでは、フランス・中国の建築様式をミックスさせた建築物がいたるところにあります。特に瓦葺きの屋根の建物は、中国らしさを感じさせつつも、どこか昔のベトナムを彷彿させますね。
引用:https://cuocsongsaigon.vn/lich-su-hinh-thanh-cho-lon/
ビンタイ市場
チョロン地区を訪れた際は、ぜひビンタイ市場に行ってみてください。
1区にも有名なベンタイン市場がありますが、ビンタイ市場は2500以上の店舗数と圧倒的な品揃えを誇る巨大市場です。しかも、非常に安く購入することができます。
こちらは中国・潮州出身のQuách Đàmが建設したもので、外面は黄色く、瓦葺きの屋根に龍の像があしらわれています。中国らしい建築様式ですが、当初は西洋の現代技術を応用したものとして評価されました。
2015年には、ホーチミン市内の都市級芸術建築遺跡に認定されています。
引用:http://saigon3days.blogspot.com/2015/07/cholon-grand-marche-de-binh-tay.html
天后宮 (ティエンハウ廟)
そしてもう1つ訪れてほしいところが、天后宮 (ティエンハウ廟)です。
1760年に建築された歴史ある華人寺で、国家級芸術建築遺跡として認定されており、ビンタイ市場と並ぶチョロンの2大観光地として知られています。
上から見ると「口」の形になるよう、4軒の寺院が合わさって建てられています。前殿・中殿・後殿があり、天后は中殿に祀られています。また、直線的に作られた屋根が特徴的です。(近隣にハチュオン会館があり、よく天后宮と間違われますが、こちらの屋根は曲線的に反っています)
全体が黄色と赤で装飾されており、なんだか暖かい気持ちにさせられます。
大切な祝日や毎月1日・15日(旧暦)になると、華人に限らず多くのベトナム人が奉献します。
引用:https://vietfuntravel.com/blog/thien-hau-temple.html
他にも、温陵會館、ハチュオン会館、THCS Mạch Kiếm Hùng(学校)、提灯街となっているLương Nhữ Học通り、漢方街があるHải Thượng Lãn Ông通りなどで、様々な中国建築様式の建物を見学できます。
引用:
温陵會館(左)https://mephuot.blogspot.com/2017/02/hoi-quan-on-lang-yen-giua-long-tp-hcm.html
ハチュオン会館(右)https://acaciafarm.smugmug.com/keyword/ha%20chuong%20hoi%20quan%20pagoda/i-6tGkZ6Z
引用:
提灯街(左)http://www.dulichchancuong.com/vn/pho-long-den-sai-gon-dong-duc-khach-truoc-trung-thu.html
漢方街(右)http://www.nguoiduatin.vn/goc-pho-nguoi-hoa-xua-va-nay-a44223.html
街中の言語や文化、食事等は中国寄りで、中国語や広東語が分かるベトナム人も多いです。
私も華人なので、チョロンには愛着があります。第2の故郷という感じですね。
ベトナム・インドの建築様式
最後に、インドの建築様式について見ていきましょう。
ホーチミン市では、フランス・中国に加えてインド文化も混合しており、建築様式にも影響を与えています。
インド人は古くからベトナムに居住しており、特に1954年には北部からサイゴンに移住したことで、人口はさらに増えたと言われています。
彼らはTrương Định通り、Tôn Thất Hiệp通り、Cong Ly通りなどに寺院を建造しました。その中でも、独特な神殿建築がなされた寺院2軒をご紹介します。
Soupramanien(スリマリアマン)寺院
1つ目は、およそ125年前に建造されたSoupramanien(スリマリアマン)寺院です。
カラフルな壁と屋根にいるたくさんの像が目を引く外観で、中にはヒンドゥー教の神シヴァの化身であるMariammanが祀られています。インド人を始め、ベトナム人や観光客もここを訪れます。
引用:http://www.hindudevotionalblog.com/2013/08/mariamman-temple-vietnam-ho-chi-minh.html
彼らはお香を焚いたり礼拝をするのに加え、石の壁に頭をつけて祈るという行為をします。この石はタミル人によって南インドから持ち込まれたもので、誠実な人にしか聞こえない声がするのだそうです。
引用:https://www.24h.com.vn/tin-tuc-trong-ngay/ngoi-den-thieng-va-bi-an-ve-nguoi-tamil-giua-sai-thanh-c46a880976.html
Sri Thenday Utthapani(スリ・タンディ・ユッタ・パニ)寺院
2つ目はSri Thenday Utthapani(スリ・タンディ・ユッタ・パニ)という寺院で、1920年にタミル人によって建築されたそうです。
およそ100年前からあるにも関わらず、建てたばかりのような装飾がなされた謎多き寺です。
ヒンドゥー教の神シヴァの息子であるSoupramanienが祀られており、敷地内には豪華な馬車も保管されています。
ベトナム人や観光客で賑わうスリマリアマン寺院に対し、こちらの訪問者はほとんどがインド人で、静寂が保たれています。
引用:http://ndoduc.free.fr/clochers/htm14/P1060132.php
これらの寺院はヒンドゥー教徒の聖地であるとともに、歴史的建築物としても知られています。
周辺にはインド人が働く企業やお店、レストランなどがあり、小さなインド人街といった雰囲気を楽しめますよ。
以上、各国の建築様式について紹介しました。
ホーチミン市は多様な民族文化が合わさった街だと分かりますが、この状況をひと言で説明している、ある印象的な言葉があります。
それは、ベトナムの学者Vuong Hong Senが著した「往年のサイゴン(Sai Gon nam xua)」に書かれています。
彼はホーチミン市民を「タイ – ナム – チャ – チェット(Tay – Nam – Cha – Chet)」と呼びました。
タイ=フランス人、ナム=ベトナム人、チャ=インド人、チェット=中国人という意味で、それぞれの民族がホーチミン市に深く関わり、影響を及ぼしていることを示しています。
実際に、各民族の文化が融合したことで特徴のある街並みが形成され、ホーチミン市はベトナムを代表する観光都市になりました。
こうした流れは今もなお続き、近年では日本人街といわれるレタントン(Le Thanh Ton)通りが顕著です。
みなさんもホーチミンにお越しの際は、ぜひ色々な建築物を見に行ってくださいね。
それでは!
本記事はVIETJO Lifeに掲載されています。
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