ホーチミンに恋して~1日観光編~【最終話】

こんにちは、パクチー丹羽です。
光陰矢の如し、とはよく言われることですが、気がつけば2017年はもう半分終了!

 

ところで、前回あやなは『マレーシア支社に異動になった』と言っていましたが、その後どうなったのでしょうか?
まもるは、ホーチミンで一人で大丈夫?

 

ホーチミンで働く男女のムズキュン物語『ホーチミンに恋して』の最終話、スタートです。


 

最終話

One-Day Trip in Ho Chi Minh City

~君に釣られた青空と僕~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まもるっ』

 

 

 

 

3ヶ月ぶりに、あやなとまたこうして、ホーチミンの街を一緒に歩いている。

久しぶりのホーチミンに、あやなは普段の3割増しくらいにテンション高めだ。

 

 

 

『まもる、ボサボサしない! 今日はいっぱい観光するんだからっ』

 

グエンバンビン通り(Nguyen Van Bin)
グエンバンビン通り(Nguyen Van Bin Street) 読書啓発のために作られたブックストリート。古本屋や本屋を併設したカフェが立ち並び、現地の人にはĐường sách(本の道)の愛称で親しまれている。

 

 

 

あやなは、この春にマレーシアに異動した。

 

 

 

異動した……はずだった。

 

 

 

『ホーチミンで急遽、社員が足りなくなっちゃったって言うから、私しかいないなーと思って、戻ってきちゃったよー』

 

 

 

相変わらず、ちゃっかりした奴だ。

僕の3ヶ月前の寂しさを返せ。

というか、異動させた人をすぐに戻すというフットワーク(?)の軽さも、うちの会社がベンチャーが故だな。

 

 

 

でも……

 

 

 

またあやなと一緒にホーチミンで過ごすことができることが、正直、めちゃくちゃ嬉しい。

はしゃぐあやなの姿をいつまででも眺めていたい。

 

 

 

サイゴン大教会 (Nhà Thờ Đức Bà) 聖マリア大聖堂とも呼ばれる。サイゴンがフランスの植民地だった1863年から1880年にかけて建設されたネオ・ゴシック様式の教会。

 

 

 

『サイゴン大教会も中央郵便局も、ただいまっ。みんな大好き、あやなちゃんがホーチミンに帰ってきましたよー』

 

 

 

 

 

サイゴン中央郵便局(Bưu điện Trung tâm Sài Gòn)の内部。営業時間7:00~20:00。1800年代後半、フランス人建築家グスタフ・エッフェル(エッフェル塔の設計者)によって設計された。コロニアルスタイルの観光名所として人気。

 

 

 

「おかえり」

 

 

 

真正面から言うのはなんだか恥ずかしくて、あやなに聞こえないような小さな声で、呟いた。

 

 

 

 

 

『まもるっ。次はドンコイ行くよ。ちょっと両替したいし』

 

 

 

ドンコイ通り(Dong Khoi Street) ホーチミン中心地にあり、両替所が多くある。お土産屋さんも多数あり、観光客が行き交う通り。

 

KATINATやその隣のPHUC LONGは、地元のベトナム人にも人気のカフェ。他にもCong Ca pheなど、ドンコイ通り近くにはホーチミンの暑さをしのぎたい時にぴったりなカフェが点在している。

 

 

 

「おっ、大好きなKATINATは健在! よかった~」

 

 

 

あやなは、カフェ好きだもんな。異動前には週4以上、どこかのカフェに行ってた気さえする。

ホーチミンには、本当にカフェが多い。しかも、安いし、オシャレだ。

最近は、コーヒーだけじゃなく、紅茶のお店も増えてきている気がする。

 

 

 

 

 

『次は、ベンタイン市場に行くよ! 久しぶりのホーチミンだから、観光客気分で買い物するんだっ。服とか結構、マレーシアに置いてきちゃったし』

 

 

 

べンタイン市場(Chợ Bến Thành) 観光客に人気の市場。洋服から果物までさまざまな物が売られており、値引き交渉も観光の楽しみ。

 

 

 

 

 

 

『うわー! 久しぶりに中に入った! ワクワクするね』

 

 

 

「うん、俺も久しぶりだ」

 

 

 

友達が観光でホーチミンに来た時には絶対連れてくるスポットだけど、長年住んでいると中に入ることは実は少ない。

観光客が多く、空気がこもって熱気に満ちたベンタイン市場は、最もホーチミンらしいスポットだと思う。

 

 

 

あやなにとって、マレーシアはどうだったんだろうか? 3月末にあやながホーチミンを離れてから、毎日、あやながホーチミンに帰ってくる日を心待ちにしていた。

LINEで電話も頻繁にしてたし、社内メールも会社の人には言えないが……よくしてた。

だけど、いざあやながホーチミンに帰ってくると、何から話せばいいのか。

 

 

 

 

 

 

 

『何ボーッとしてるの?』

 

 

 

 

「べ、別に」

 

 

ぐるぐると一人で考えを巡らせていた僕を、あやなが売り物の間からじっと眺めていた。

 

前もこんなことあったな。

去年、一緒にハロウィンイベントの準備をしに行った時のことを思い出した。

懐かしいな……。

あの頃は、まさかあやなが僕のことを好きになってくれるなんて、思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

ベトナムと言えば、ベトナムコーヒー。べンタイン市場内でも種類豊富にコーヒーが量り売りされている。

 

 

 

 

 

 

『ピンクのランタン、かわいい! 今年はまもるとホイアンのランタン祭りに行かなきゃ。8月頃かな~』

 

 

 

僕に話を振るでもなく、ランタン祭りに行くことを決めたらしい。

相変わらずだ。

でも、あやなとホイアン旅行……う、嬉しい。

 

 

 

 

 

『あっ! カップルTシャツ買おうよ。外に出るには恥ずかしいから、お揃いの部屋着にしよ?』

 

 

 

 

 

「恥ずかしいよ。てか、部屋着お揃いって、一緒に住んでるわけじゃないんだし」

 

 

 

 

 

“カップル”

あやなにとっては僕たちの関係は、恋人同士なんだろうか。

高校生じゃないから「お付き合いしませんか?」「はい、お願いします」的なやりとりをすることもないし。

お互い好き同士だと思うけど、いまひとつ煮え切らない。

 

 

 

 

 

 

 

『さて。買い物は終わったし、やっぱ、ホーチミンといえばグエンフエ通りだよね!』

 

 

 

グエンフエ通り(Nguyen Hue Street)。 昼間から夜まで現地の若者や観光客で賑わう遊歩道。ベトナム革命を指導した建国の父、ホー・チ・ミン(Hồ Chí Minh)の像がある。

 

 

 

 

 

『ねえ、まもる・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『私がホーチミンに帰ってきた記念で、ホーチミンおじさんの像の前でチュー写真撮ろっ』

 

 

「ん? え……っ、え・・・・・・・えぇぇ・・・・!!!?」

 

 

 

 

 

会社の人もよく遊びにくる、このグエンフエで!?

僕が言うのもなんだけど、あやなは可愛いから街中で目立つのに!?

こうすけだって、まだホーチミンに住んでるし……

 

 

 

 

 

『なーにドギマギしてんのっ。私とチュー、したくないわけ?』

 

 

 

 

 

 

 

「したくないわけ……」

 


 


 


 


 


 


 


 

チュっ

 

 

 

 

 

 

一瞬、目の前が暗くなって、ホーチミン像が見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

神様…………

僕はいま、ホーチミンで一番の幸せ者かもしれません。

 

 

 

 

心を落ち着けるために、ホーチミンの空を見上げる。

ゆったりと流れる雲の隙間から、夕方の太陽が僕たちを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-完-

 

 

 

 

 


全11話に渡り、ホーチミンでのリアルな生活をお届けしてきた『ホーチミンに恋して』シリーズ。

経済都市のホーチミンは、日々目まぐるしく街の景色が変わっていきます。
新しいお店ができたり、大きなマンションが建設されたり、地下鉄の工事が進んでいったり。

勢い盛んなホーチミンの良さを、実際に訪れて、住んで、ぜひ体感してみてください!

最後までご愛読いただき、ありがとうございました!

 

■ホーチミンで働く男女2人のムズキュン物語、全編はコチラ。

ホーチミンでざわ、ざわ、ざわ

ホーチミンでざわ、ざわ、ざわ

パクチー丹羽

2015年の夏、初めてタイを訪れすっかり虜に。東南アジアをもっと知りたい!!と思いつつ、ヨーロッパを放浪したのち、今はベトナムで絶賛奮闘中。 今までに訪れた国は計10か国。どこでも生きていける環境適応力高い系女子。

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