巨大プロジェクト、EEC 米中貿易摩擦で漁夫の利
タイは人口6億人を超えるASEAN経済圏の中心に位置する。
1997年~98年のアジア通貨危機や、2004年のインド洋津波、06年と14年の軍事クーデター、11年の大洪水など数々の困難を克服し、成長を続けてきた。同時に日系企業を筆頭に積極的な外資誘致政策が功を奏し、自動車を中心とした産業の集積が進んだ。
16年6月には、産業構造の高度化を図る新たな国家プロジェクト「タイランド4.0」を策定。この戦略の中核となるのが、東部経済回廊(EEC)で、成長著しいアジア諸国への主要な玄関口と期待されている。東部臨海工業地域(イースタンシーボード)の3県(チャチュンサオ、チョンブリ、ラヨーン)の再開発を含むインフラ基盤の整備に5年間で5兆円超の投資を行い、電気自動車やロボットといった先端技術産業・企業の誘致を目指している。
手厚い税恩典などの投資促進策を背景に、19年のEEC域内向けの投資申請件数は506件で、金額は全体の6割を占める4,448億8,000万バーツに達した。業種別では、自動車・同部品や電気・電子製品などが上位を占め、BOIのドゥアンジャイ長官は、20年も恩典の拡充などで、投資申請件数・額が増加する見通しを当初は示した。
商業省企業振興局によると、20年1月の新規企業登録数は前年同月比4.4%増の719社で、業種別では不動産(115社)、建設(40社)、不動産ブローカー(39社)が上位を占めた。
1月末時点で事業活動を行っていた企業数は7万2,385社だった。外資比率は40.3%。このうち日本資本が最も多く全体の48.6%を占め、次いで中国10.3%、シンガポール5.5%、米国3.7%、韓国3.0%と続いた。
工業用地の販売・貸し付けも堅調だ。直接運営と民間企業との提携を含めて全国60ヵ所の工業団地で事業を展開するタイ工業団地公社(IEAT)によると、19年度(18年10月~19年9月)においてEEC域内での販売・貸し付けが1,964ライ(1ライ=1,600平方メートル)と全体の約9割を占めた。
昨年の工業団地外への工場新設・増設の許可申請件数は、前年比11%減の計550件だったが、総額は同65%増の1,110億2,100万バーツだった(工業省工場局集計)。業種別では、石油化学製品がトップで、電気機器、プラスチック製品が続いた。米国との貿易摩擦を背景に、中国系企業によるEEC域内への生産拠点移転の増加などが、需要を高めている。
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