タイ 2020年最新版 インフラ計画進捗状況 威信掛けた成長戦略か、大言壮語か Vol.1

新型コロナウィルスの感染拡大以前から、米中貿易摩擦、バーツ高などのマイナス要因が重なり、景気後退の局面に入っていたタイ。民間投資が期待薄の中、政府はかねてからインフラ整備への投資で産業の高度化と景気の浮揚を図ろうとしてきた。バンコク首都圏では、都市型鉄道網建設が着実に進んでおり、慢性的な交通渋滞やPM2.5などによる大気汚染の軽減に期待が寄せられている。

 

タイのインフラの現状

タイの国土面積は日本の1.4倍の51万3,000平方キロメートル、南北は最も長い部分で1,860キロメートルに及ぶ。そこに、約7,000万人が暮らしている。

タイ政府は元来、鉄道より道路の整備を優先してきた。1950年以降、精力的に整備され、49年に760キロしかなかった舗装道路は、69年には7,822キロに急増している。現在、タイの道路総距離は約70万キロに達し、一般市民の移動や貨物の輸送経路として重要なインフラとなっている。一方で、一極集中が進むバンコクなど大都市や、主要都市間を結ぶ幹線道路の渋滞が課題となっている。

官営鉄道は1897年にバンコク(フアランポーン駅)~アユタヤ間が初めて開通した。日本初の鉄道として新橋~横浜間が開業した72年と比べても、大きく遅れているわけではない。ただ、その後は歴代の政権に軽視され、予算不足で新規車両の購入や満足なメンテナンスが出来ず、レール、車両の老朽化が進み、利用者の足が遠退き更に収入が先細るという悪循環に陥った。過去には日本で引退した車両がタイに譲渡されたこともあった。

現在の鉄道総距離はチェンマイに向かう北部線やノーンカーイやウボンラチャタニーに向かう東北部線など約4,600キロだが、全体の8割が単線となっているなど複線化が進んでおらず、ダイヤの遅れが頻繁に発生している。

港湾はチャオプラヤー川沿いに1951年に開港したバンコク(クロントーイ)港、91年に大型船も常時入港できる深海港として開業したチョンブリ県のレムチャバン港、ラヨーン県のマプタプット港をはじめ、南部のタイ湾側、アンダマン海側などに全43ヵ所あり、年間で1億1,000万トン余りの貨物を取り扱い、自動車などタイの輸出産業を支えている。

エアアジアやノックエアーなど格安航空会社(LCC)が普及した空港は、1924年にタイ空軍の飛行場としてオープンした歴史あるドンムアン国際空港や日本も資金援助して2006年に開業したスワンナプーム国際空港など全国各地に計38ヵ所あり、年間延べ1億6,000万人余りが利用。タイの重要な産業である観光業を支えている。

タイ政府は15年~22年間での国内交通インフラ整備に計2.8兆バーツを投資する計画を立てている。バンコク一極集中を緩和させる「東部経済回廊(EEC)」プロジェクトやチェンマイ、プーケットといった地方都市でも交通インフラを整備する議論が高まっている。さらに駅至近での不動産・商業施設開発も活性化され、新たな事業機会が生まれる土壌ができつつある。

 
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