不動産市場への影響
東部経済回廊(EEC)で加速するインフラ整備を背景に、リゾート地のパタヤ(チョンブリ県)のコンドミニアム販売が堅調な動きを見せている。2019年の販売戸数は1万5,545戸と5年ぶりの高水準となった。不動産サービス大手コリアーズ・インターナショナル(タイランド)によると、特に下半期は上半期の2倍以上増加し、活況を取り戻した。
首都圏では今後開業するオレンジライン(タイ文化センター~ミンブリ23年開通)、ピンクライン(ミンブリ~ケーライ21年開通)、イエローライン(ラップラオ~サムロン21年開通)沿線でコンドミニアムの供給が今年増えそうだ。都市中心と比較して土地価格が割安で不動産開発会社にとって旨味のあるロケーションになっている。
タイ政府系住宅銀行の不動産情報センターによると、19年10月~12月の首都圏6都県(バンコク、パトゥムタニ、サムットプラカーン、サムットサコン、ナコンパトム、ノンタブリー)の未利用地の価格指数は12年を100として約3倍の284.7と前年同期比で27.6%上昇した。
建設中もしくは予定されている路線の周辺での上昇幅が大きく、グリーンラインの延伸予定区間のクーコット~ラムルッカー、建設中のピンクラインのケーライ~ミンブリ区間、グリーンラインの開通・延伸予定区間のベーリング~ケーハ~バンプーといった郊外で大きな伸びを見せた。
特にオレンジライン沿い(ラマ9世通り~ラムカムヘン~ラムサリ)では、プルクサー、アナンダ、オリジンプロパティなど5社が、少なくても6プロジェクト(総戸数4,000~5,000戸)を開発中。北郊のラムイントラ地区でも5プロジェクト(総戸数3,000戸)が進行中だ。
コリアーズによると、開発大手は今後発表される新たな「バンコク都市計画」を注視している。建築基準法が改訂され、ラップラオ地区などでの建築許可が下りやすくなると期待されている。一方で、景気後退を背景に、住宅需要が落ち込んでおり、開発業者は建設場所の選定に慎重な姿勢を見せている。さらに、新型コロナウィルスの影響を受けて、タイの住宅開発会社の第一四半期における景況感指数の悪化も判明している。
プロジェクトの進行に向け望まれる迅速な予算消化
アジア開発銀行はかつて、16年~30年までに東南アジアで約3兆1,000億ドルのインフラ需要が発生し、タイだけでも2,340億ドルのインフラ整備需要が生まれるという予測を立てた。
4月には財務省が20年~27年までに1兆900億バーツの官民連携(PPP)投資を計画し、大型インフラ整備事業などにあてることなどが明らかになっている。また、運輸省は18年〜37年までの20年計画を立てている。新型コロナウィルス拡大による経済への影響が見通せない中、政府による公共事業への投資は景気対策としてもさらに重要になる。
ただ、タイは2月26日に当初の予定より5ヵ月遅れて20年度(19年10月~20年9月)の予算案が承認された。ただでさえ予算案の審議が遅れていた中、採決での代理投票が発覚し、憲法裁判所からやり直しが命じられたのだ。予算の執行が遅れたことにより、スワンナプーム国際空港の新ターミナルやオレンジラインの建設開始にも遅れが出る見通しだ。
将来、タイは東南アジアのハブとして近代的なインフラを全土に張り巡らせることができるのか。官民が一体となったプロジェクトの進行が望まれる。
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