首都圏・地方での鉄道整備
地方では鉄道の開発・整備が不十分で、遅延発生の原因となっている。このため、政府は物流コスト削減や交通渋滞の緩和のため、旅客・貨物共に鉄道による輸送に力を入れている。各都市を結ぶ高速鉄道や複線鉄道で国内約6,000キロの鉄道網を整備するほか、東北部のナコンラチャシマなど主要都市に公共交通システムを導入する考えだ。
運輸省は21年度(20年10月~21年9月)予算案の鉄道インフラ整備事業に、バンコク首都圏のダークレッドライン(ランシット~タマサート大学間)に加えて、東北部コーンケン県バーンパイ~ナコンパノム間の複線鉄道などを盛り込むことを計画している。
南部経済回廊(SEC)構想
タイが抱える問題の一つに深刻な地域格差がある。バンコク首都圏と地方との経済規模の違いは日本のそれより大きい。そこで東部経済回廊(EEC)に続いて政府が掲げた地域開発計画が、南部のチュムポーン県、スラタニ県、ラノーン県、ナコンシータマラート県の4県による南部経済回廊(SEC)だ。
同地域は東はタイ湾、西はアンダマン海に挟まれ、ゴムなどの天然資源やサムイ島などの観光地を擁している。政府としては観光やヘルスケア、農業の振興やベンガル湾他分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC)諸国向けの貿易拠点として構想しており、ラノーン港の拡張や鉄道の新設なども計画。19年1月には116事業に計1,086億バーツの予算が付与されている。
鉄道を高速・複線化
中国が建設資金などで協力するバンコクとナコンラチャシマを結ぶ高速鉄道(第一期)計画だが、車両、線路の調達や電気系統機器・システムの導入などで両政府は契約の締結に至っていない。5月を目途に調整を続けていたが、新型コロナウイルスの感染拡大による混乱で10月に延期される見通しだ。
将来はナコンラチャシマからノンカイ、ラオスのビエンチャン、中国の雲南省まで延伸する予定。また、日本とのバンコク~チェンマイ間の高速鉄道計画は頓挫している。
15年時点で4,034キロあった全国の鉄道網のうち、複線の総距離は359キロのみで、残りの3,675キロは単線。利用者と貨物の輸送が非効率に行われてきた。物流コストの削減や道路の渋滞緩和には複線化は避けられず、22年までに839キロを追加し、35年までに2,992キロと、全長の81%を複線化にする計画だ。
現在複線化の工事が行われているのは、中部サラブリ県マーブカバオ駅~東北部ナコンラチャシマ県タノンジラ・ジャンクション駅間(全長132キロで22年開通予定)など。タイ国鉄(SRT)の利用者は18年、3,500万人だったが、計画通りに複線化が進めば、8,000万人に増加すると試算される。
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