【タイ労働法コラム】第15回:内定取消しの可否についての判断方法は?

GVA法律事務所・タイオフィス代表の藤江です。本コラムでは、タイの労務管理について、日本との違いを踏まえた上で、法的に解説していきます。今回は、内定の取消しについて解説します。

 

内定取消しの可否についての判断方法は?

日本の労働法には、内定やその取消しについて明確に定めた規定はありませんが、内定取消しが認められるためには、「客観的に合理的で社会通念上相当であること」が一般的に要求されます。タイでも、内定やその取消しについて明確に定めた規定はなく、内定取消しが認められるかどうかは、事案ごとに判断されることになります。

 

経歴詐称があった場合は?

まず、内定後に学歴詐称が発覚した場合についてです。一見すると学歴詐称の場合は、直ちに内定を取り消すことができるかのように思えますが、タイの裁判例には、採用段階で学歴詐称があったことが就労開始後に発覚したために従業員を解雇した事案について、雇用における重要な要素は業務を遂行するに足りる能力や経験であって学歴は重要な要素ではないこと等を理由として、就業規則違反はないと判断したものがあります。要するに、タイの裁判所は、経歴詐称が業務遂行能力や業務遂行への影響を大きな判断要素としており、内定取消しについても、これらが考慮されると考えられます。学歴詐称=内定取消にならない場合があることに留意してください。

 

私生活上の非違行為があった場合は?

次に、内定後に私生活上の非違行為が発覚した場合についてです。これも直ちに内定を取り消すことができるかのように思えますが、タイの裁判例には、過去に違法薬物の販売により有罪判決を受け収監されていたことが就労開始後に発覚したために解雇した事案について、結論としては解雇補償金を支払えば解雇できると判断したものの、従業員の身体に薬物の影響がないことや収監されていたのが雇用前であったことに言及しているものがあります。これは、タイの裁判所が、私生活上の非違行為があったという事実のみならず、現実的な業務遂行能力や業務遂行への影響に着目しているということです。そのため、内定後に私生活上の非違行為が発覚した場合も、会社は、現実的な職務への影響を考慮するべきと考えられます。

 

音信不通となった場合は?

実務的には、内定を出した後に突然コミュニケーションが取れなくなるような場合もあります。前述のタイの裁判所の考え方を踏まえると、ただ音信不通であるだけは内定取消可能とは言えず、その原因が何か、業務遂行にどう影響しうるかといった観点から判断されると考えられます。

 

慎重な判断とできる限りの予防を

今回は、内定取消しの可否について概観しました。その大きな判断枠組みは、タイも日本と類似していると理解できます。内定取消しが無効とされてしまえば、会社は期間中の賃金支払義務を負うなどのリスクが想定されますので、内定者に対する対応は、慌てず、慎重に検討していくことが大切です。

 
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GVA法律事務所パートナー
タイオフィス代表・日本国弁護士:藤江 大輔
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日本国弁護士

日本国弁護士

ICONIC

09年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

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