前回は事業開始後の会計・税務周りのローカル業務のアウトソーシングという切り口でご案内してきましたが、今回は更に踏み込んで日本人駐在員などキーパーソン業務についても同様にアウトソーシングできる部分が一部でもあるのかという観点で、ある程度踏み込んだ内容をご案内していきます。
まずは、なぜここまで踏み込んでご案内するかというところから入りましょう。これはひとえにこのWithコロナのご時世でグローバルの移動がままならないということと、それによってある程度現地で運営を切り盛りできる体制が半ば強制的にでも実現されつつあることが大きな背景にあります。それを踏まえて、海外進出や海外法人の運営をその傍らでサポートしてきた立場としては、新しい形での進出や運営手法をご提案したいということと、社内でもある程度検証も出来た段階ということで少しでもこの場を借りてお役に立てる情報をご案内できたらとの想いからです。
では、早速ながらそもそも外部に委託(アウトソーシング)するインセンティブは何かということで、3つの切り口から見ていきましょう。
ひとつは言わずもがなで、マネージメントの観点です。
このコロナ禍で前にも触れたとおり、人の移動ができない環境に強制的になっている中、どのくらいの不都合が皆さんの周りで起きたでしょうか?そしてその不都合は実際にすぐに代替策として解決しないといけないものだったのか、それともある程度目をつむっても業務に支障はなかったものだったのか、どちらだったでしょうか?
海外に拠点がすでにある、あるいはこれから拠点を設置しようとしていた皆さんにとっては、コロナ禍も半年以上経過し、ある程度こういったことの結論もまとまってきたことでしょう。また、当社のような外部の立場で皆さんのお手伝いをする中でも分かったきたこともあります。
本社から日本人を駐在させる意味を今一度思い起こしてほしいのですが、それは現地での販路拡大や営業支援、技術支援といったものに日本人管理者の役割というものが集約されるのではないでしょうか。もちろん現地スタッフの管理も重要な役割かと思いますが、労務管理や細々とした労務手続きのことまでは範囲外でしょうし、それこそ事務的な事は現地スタッフの業務そのものに該当するので、管理者としてそこまで直接面倒をみることは稀でしょう。
そう考えると、これまで対応してきたことで今回のコロナ禍で現地対応できずある程度目をつむってきたことの大半はそもそも不要だったか、それこそ現地スタッフのレベルに任せるべき業務だったか、リモートで対応できる業務だったとも言えます。そして実際に代替案として解決してきた中にもリモートで対応できたということも多かったのではと推測されます。
これらのことから導かれる結論としては、現地に指示を出してそれを誠実に実行できる体制がある程度整っているのであれば、リモートでも対応可能なことが大半だったりしないでしょうか。
あとはリモート対応可能なことと、現地にいないとできないことを整理し、更に現地にいないとできないことの中でもさらにアウトソーシングできることを抽出して、それでもまだ現地在住でないとできないことについて検討する。するとどうでしょう?ほとんどがリモートとアウトソーシングで対応できたりはしないでしょうか。ここまで検討してきたことだけでも業務全般として相当スリム化するはずです。
次の切り口ですが、これはずばりコスト面になります。
日本の本社にとっては頭が痛い部分もあるでしょうが、駐在員コストの現地負担は相当に大きいです。日本国内のサービス価格とニーズがそのまま通用するわけではないタイを始めとするASEAN諸国等における現地法人でかかえる日本人給与の水準は損益分岐点にも大きく影響します。また、本給のみならず、駐在するのに必要となる活動コストも付随的に発生してきます。ざっと考えられるだけでも下記のようなものがあげられます。
・住居費
・社用車リース代
・社用車運転手給与
・給与所得税グロスアップ分会社負担
・現地医療駐在員向け保険
上記は大抵の会社において発生する給与以外で日本人駐在員に関して付随的に発生する会社負担の費用ですが、これ以外にも現地での顧客付き合いの部分で、ゴルフや夜の接待など交際費の類もある程度は発生してくることでしょう。駐在員一人につき、その本給の4分の1から3分の1くらいが追加で発生するくらのイメージです。
こういったコストがアウトソーシングでコストダウンになるとしたらいかがでしょうか?それは大きなインセンティブになりますよね。
そして最後の切り口はひとえにリソースです。
少し前くらいから実は中小企業もさることながら大企業でも海外に人を赴任させる余裕がなくなってきています。日本国内事業だけでも人材不足がここ最近顕著になってきていることは、日本国内の有効求人倍率の高さからも証明されています。海外事業の進出時、もしくは新しい駐在員の赴任適任者ということで、社内でリソースが不足していることもそういった国内事情によるしわ寄せの結果という状況にもなっているのです。
そういう背景もあってか、コロナ禍で駐在員の入れ替えに支障をきたしているというもありますが、実は上記のような送り出しの日本側の都合で以前より駐在期間が長くなっている傾向が実際に見られます。ここ1,2年の実感としても駐在員ではなくても現地代表を任せられるような日本人候補者を探している会社は想定以上に多いと感じます。実際に当社でもそのような人がいたらつなげて欲しいと過去に何件か相談を受けたことがあります。
今回は、駐在員業務全般のアウトソーシングに対するインセンティブというところだけで既にある程度のボリュームになってしまいました。日本人駐在員業務について真正面にとらえた珍しいテーマということで、ややもすればセンシティブな内容でもあることから、慎重を期して丁寧にご案内しております。
次回はその続きとして、実際にアウトソーシング可能な駐在員業務について具体的な事例を使って考察していきますので引き続きよろしくお願いします。
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