タイ不動産の未来 ~BADシナリオ~

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「2010年代はいい時代だったよ。給料は毎年勝手に上がるし、買った不動産もどんどん値段が上がるし」。

そう語るのは商社に勤務する45歳の男性C氏。2010年代前半から続いたコンドミニアムの価格上昇が永遠に続くかのような錯覚に憑りつかれ、銀行からのフルローンで5つもの物件を購入していた。

最初に購入した物件が運よく値上がりし、自分に投資の才覚があると勘違いをしてしまった。幸か不幸か2つ目の物件も購入後に値上がりしてしまった。そこからは怖いもの無し。「今思えば、あの時点でやめておけばよかった」とC氏は今でも悔やむ。

3つ目から5つ目の物件を都心の好立地にフルローンで、1つ目と2つ目の物件を担保に入れて購入をしたのだ。目論見ではすべてが値上がりし、投資家として生きていけるという甘い夢想が楽しくて仕方なかった。

ところが19年1月、タイ政府が施行したローン規制で状況は一変する。もともと供給過剰感がでていたが、この規制が追い打ちをかけるようにコンド市場を冷ましてしまったのだ。C氏の計算では物件の値上がりの過程で転売すればいいと思っていたが、転売するにも買手がつかず、買手がいても購入価格よりも下回る金額だった。

更に事態は悪化する。2020年代初頭に発生した欧州メガバンクの経営危機がEU諸国と中国にも飛び火し、経済は一気に不況へと突き進んだ。タイ政府が推し進めたEEC(東部経済回廊)政策では、タイは製造立国として輸出を経済基盤としていたが輸出が急減、企業業績が一気に悪化する事態となった。そして壮大に打ち上げた大型インフラ開発は財政悪化、民間投資困難という理由からいくつかが延期もしくは中止となった。

中でも3空港を結ぶ高速鉄道は土地の収用がはかどらず、中国合弁企業との関係も悪化、無期限の開発延期という最悪の事態を迎えている。

このような逆風に晒され、もともとコスト高がネックとなっていたタイに見切りをつけ、撤退する企業が続出してしまう。工場の空き家も目立つようになった。企業の撤退に伴いオフィス需要も減退している。

タイ政府は、自国の中小企業の倒産と外国企業のタイからの撤退を止める術を見いだせず、国民の反政府感情が高まっている。新たな政治不安の火種の予兆だ。

5つの物件をフルローンで購入していたC氏は融資返済額の負担が徐々に重荷になってきていた。「給与は勝手に上がる」という幻想が打ち砕かれ、給与も賞与も全く上がらなったからだ。そしてついにC氏は返済が滞るようになり全ての資産を差し押さえられてしまったのである。

C氏のケースのように不良債権化した物件が大量に表面化している202X年、先行きの見通しが立たずに重たく冷たい暗雲が立ち込めている。

 

統括

タイ経済は外部環境、特に世界経済の動向に大きく左右されるため、自国でコントロールできる点が少ないことは否めない。外部依存度を減らして、タイが中進国の罠から抜け出し、先進国の仲間入りに向けて前進するためには大きな変革が必要だ。

本特集であげたインフラを含めた不動産開発は、そのチャレンジの一つになると弊誌は確信している。現在計画中の不動産開発が経済インフラとして実際に利用されるまでに数年を要する。

202X年は、希望に満ちた明るい未来がやってくるのか、先行き不透明で閉塞感が漂う世界が待っているのか、読者のみなさんはどう予測するだろうか。願わくば前者になることを期待したい。

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