こんにちは、パクチー丹羽です。
みなさん、メリークリスマス!
2016年ももうすぐ終わりそうですが、その前にあるクリスマスは一大イベントですよね!
世界には、さまざまなクリスマスの過ごし方がありますが、ベトナムのホーチミンにいる、まもるとあやなはどう過ごすのでしょうか? 気になるプレゼントは?
聖なる夜のホーチミンは、何かが違う。ドキドキのクリスマスナイトが始まります。
第5話
Merry Christmas in Ho Chi Minh
~曇り空と君の秘密~
ホーチミンに来てもうすぐ2年経つ。
去年のクリスマスは確か、同僚とご飯食べてビール飲んで騒いでいたな。
あれはあれで、楽しかったけど。
だけど、今年は……
『まもるっ』
「え、あ、あやな、ごめん! 待った?」
まだ約束の時間の10分前なのに。
今日のあやなは、初めて見る真っ赤なワンピースを着ている。
いつもより……可愛い。
『ううん、行こう!』
そう。今年のクリスマスは、あやなと二人で過ごす約束をした。
あれやこれやと計画を立てたり、浮かれたりしていたら、あっという間に当日になってしまった。
『今日は、早く着いちゃった!』
いつもの待ち合わせは、僕が先に着いて、あやなは遅れてくることがほとんど。
でも今日は、あやなが先にいたから、ちょっと驚いた。
少しは、あやなも楽しみにしてくれていたのかな……。
ホーチミンには、あやなの言う「おしゃれスポット」がたくさんあるから悩んだ。
3Aステーション。ここは人気の場所だけど、ホーチミン中心街よりは落ち着いていて、雰囲気も良い。
『3Aステーション、久しぶりに来たな~。可愛い物がいっぱいあるよね』
さすがクリスマス。
周りは、カップルだらけだ。
いつもよりも多い人混みの中を二人で歩く。
ドンッ
『わっ!!!』
僕の前を歩いていたあやなは、すれ違うカップルとぶつかって転びそうになった。
とっさに、よろけるあやなの腕を掴み、自分の方へ引き寄せる。
「わ、ごめん!」
あやなの顔が近くて、慌てて掴んでいた腕を離す。
『ありがと。かっこいいとこ、あるじゃん』
自分の行動に恥ずかしくなってきて、今度は僕が先に歩き出す。
こんなことで恥ずかしくなるなんて……あやなへの免疫なさすぎじゃないか。
毎日、会社で顔を合わせているっていうのに。
「い、いや、気をつけなよ」
そう言い放って次の店に入ろうとしたら、後ろからあやなに服の裾を引っ張られた。
『いつもより人が多いし、周りはカップルだらけだし・・・まもるに守ってもらおうかな~』
そう言って、あやなは急に、僕の手を握ってきた。
突然の展開にドギマギしてしてしまう。
僕らはまだ、カップルではない。けど、これじゃ周りから見たら、ただのカップルじゃないか。
……「“まだ”って、付き合う前提かよ」と心の中で自分にツッコミを入れつつ、されるがままに、あやなと手を繋ぎながら歩く。
あやながいろいろ話しかけてくるが、緊張して全然耳に入ってこない。
一通り3Aステーション内を見て回ったところで、行くと決めていたバーに入る。
ビールの種類が豊富で、軽く食事もできる。お酒好きなあやなに喜んでもらえると思って決めた。
それに、友人のベトナム人カップルが、このバーでデートしているところも見かけたし。
『いい雰囲気のバーだね』
ひとまず席に座り、ビールと料理を頼む。
さっきまで手を繋いでいたあやなを前にすると、目を合わせづらい。
あやなもいつもはおしゃべりなくせに、俯き加減で、なかなか話し出さない。
「あ、あのさ」
ゴソゴソ
「これ、一応、クリスマスプレゼント」
『え! ありがとう。TWG大好き。すっごく嬉しい!』
『私、そういう感じじゃないと思ってたから、用意してなかったよ。ごめんね』
『だけど・・・まもるにとっては、私と過ごすことがプレゼントみたいなものだよねっ』
そう言って、満面の笑顔を僕に向けた。
あやなは、いたずらっぽく言っているけど、図星すぎて上手く反応できない。
「そ、そうだね」
僕があやなに何をプレゼントするかばかり考えていたから、期待はしていなかったし、本当に、あやなと過ごせるだけで嬉しい。
とにかく、喜んでくれて良かった。
プレゼントを無事渡せたところで、料理とビールがテーブルに運ばれてきた。
店内は、おしゃれな装飾と明るすぎないランプが、大人な雰囲気だ。
飲みかわしていると、二人ともいい感じに酒が回って、話も弾む。
自然と恋愛の話になった。
『まもるは、こっちで彼女とかできなかったの?』
「こっちにきてからは、ずっといないよ」
『ふーん・・・気になる人とかも、いないの?』
「いや、いないわけじゃないけど・・・」
ピリリリーッ
『あっ、電話・・・・・えっ』
ポチッ
「電話、いいの?」
『あ、うん、大丈夫! 何の話だったけ』
「あ、いや、なんか飲み物頼む? ここのビール美味しいよね」
ピコンッ
今度はLINEのメッセージ着信音だ。
あやなは、素早くスマホを操作して、僕の方に向き直った。
『あ、うん! えっと・・・メニュー見せて!』
僕の話ばかりを聞かれたが、あやなは気になる人とか、いないのかな。
もしかして、さっきのLINEの相手は……とか、勝手に思考を巡らせてしまう。
顔色を伺いつつ、メニューを渡す。
「暑いけど、こういうクリスマスもいいね」
『・・・そうだね! 今日は、予約とかしてくれて、ありがとうね』
それから、地元の話とか高校時代の部活の話、家族の話も聞けて、僕の知らないあやなを知ることができた。
ホーチミン市内で行きたいところの話もしたし、旧正月の休みに何をするかって話もした。
前より少し、距離が縮まった気がした。
雰囲気の良いバーで二人っきりで過ごしたからか、お酒が入ったからか、心がずっと騒がしい。
あやなは、僕のことをどう思ってるんだろうか。
ただの同僚なのか、飲み友達なのか。
あやなを見送り、一息ついて、空を見上げる。
曇り空だが、楽しかったクリスマスの思い出で、ニヤニヤが止まらなかった。
クリスマス編―完—
どうでしたか?
ホーチミンは、クリスマスが近づくと、街中でサンタクロースの服やトナカイの耳のカチューシャが売られており、カップルや友人みんなで付けている光景をよく見ます。
また、ベトナム人のクリスマスデートプランは、昼はショッピングセンターに行って、クリスマスのデコレーションと共に彼氏が彼女の写真を撮ったり、カフェに行ったり。夜は、バーやレストランに行ったりするそうです。
また、若者たちのクリスマスは、グエンフエ通りに集まってお祭り騒ぎが定番の様子。
いつも賑やかなホーチミンの街が、クリスマスにはもっと賑やかになりますね。
ぜひ、クリスマスのホーチミンの街を歩いてみてください。
さて、約束のクリスマスデートは無事終わったように見えたが……?
不穏なあやなへの電話やLINEの正体は。
次回も、お楽しみに。
第6話 Suoi Tien park in Ho Chi Minh~知らない君と僕らの時間~
【3A ステーション】
住所:3A Tôn Đức Thắng, P. Bến Nghé, Q.1 Ho Chi Minh City, Vietnam
営業時間:9:00~21:00(一部店舗を除く)
【The Great Hornbill snack bar&cafe】
住所:3Aステーション内
営業時間:9:00~24:00
17時以降はハッピーアワーでビールが20%引き