これまで物価が低いイメージがあり、経済的な不安を抱くことは少なかった「ベトナム」。ですが近年、特に都市部を中心に物価が上昇しています。
環境変化の大きなベトナムへの移住や転職を考えている方なら「実際生活費はどのくらいかかるんだろう...」と不安に思うことも少ないはずです。
そこで今回は、ベトナム在住歴7年の日本人女性にインタビューを行い、1ヶ月にかかる2人世帯の生活費ついて教えていただきました。
現在のお住まいはハノイ、そして以前はホーチミンに住んでいらっしゃったため、ハノイとホーチミンを比較しながら1ヶ月にかかる生活費について細かく解説していきます。ぜひ最後までお読みください!
なお、単身者の生活費について知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
※記事内の情報およびレートは2024年11月時点のものです(1円=164VNDで計算)。
日本の2人世帯の生活費との比較
今回インタビューを行ったのは、ベトナムの首都ハノイに在住のYさん。
Yさんの家族構成は、夫Kさん、妻Yさん、犬1匹です。Kさんのベトナム在住歴は4年、Yさんは7年で、ベトナム生活のことは知り尽くしているお二人。
まずは、1ヶ月にかかる2人世帯の生活費(家賃を除く)を日本の平均と比較していきます。
日本の2人世帯の平均 (60歳未満の勤労世帯*者) |
Yさんご夫婦 (ハノイ在住時=現在) |
Yさんご夫婦 (ホーチミン在住時) |
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合計 | 229,856円 | 137,000円(2,254万VND) | 138,000円(2,264万VND) |
水道光熱費 | 19,357円 | 8,500円(140万VND) | 8,500円(140万VND) |
食費 | 70,343円 | 73,000円(1,200万VND) | 73,000円(1,200万VND) |
娯楽・交際費 | 60,670円 | 37,000円(610万VND) | 37,000円(610万VND) |
交通費 | 7,436円 | 8,500円(140万VND) | 8,500円(140万VND) |
通信費 | 12,628円 | 3,600円(59万VND) | 5,100円(84万VND) |
その他* | 25,480円 | 6,400円(105万VND) | 5,400円(90万VND) |
<参考データ>2023年家計調査 世帯人数別(表3-1)
勤務者世帯*:帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯のこと。
その他*:たばこ、身の回り用品。理美容用品などの諸雑費を指す。
ハノイもホーチミンも、家賃を除いた生活費は日本の60%ほどです。
物価が上昇しているといえど、依然として物価が安いことが読み取れますね。ただ、生活レベルによって生活コストが異なるのも事実。
ここからは、実際にYさんご夫婦がベトナムでかかった生活費の内訳を詳しく解説していきます。
家賃
現在、Yさんが住まれているエリアはハノイのThanh Xuan(タインスアン)区で、外国人向けではなく、ローカルの人々が多く住む場所です。
家賃は2ベッドルームのお部屋で、管理費込みの1,600万VND。日本円で約9万7,000円です。
「おそらく家賃はハノイの方が安い」
かつてホーチミンにも住んでいたYさんはそういいます。
ホーチミンに住んでいたころの家賃は、1ベッドルームのお部屋で1,900万VNDもしたそうです。日本円だと約11万5,00円です。外国人が多く集まるThao Dien(タオディエン)地区の物件でしたがハノイよりも約2万円も高いですね......。
年々物価が上昇傾向にあるベトナム。特に不動産においては南北の家賃差が顕著に見られます。また、以前は「月5万円でタワマンに住むことができる」とまで言われていましたが、近年は都市部を中心に家賃価格が高騰しています。
水道光熱費
水道光熱費はハノイもホーチミンも同じ程度。
現在のハノイ生活でかかっているのは、水道代10万VND(約600円)、電気代130万VND(約8,000円)ほど。犬を買われていることもあり、Yさんご夫婦が仕事で家を不在の場合は、常に空調をつけっぱなしにされているため、平均よりも高くなっているそうです。
ベトナムの電気代は50万〜70万VND(約3,000〜4,200円)ほどが相場。したがって、月の水道光熱費は高くても5,000円ほどといったところでしょうか。
また、ベトナムでは住む住居の種類によって電気代は異なってきます。
日本人が住む住居は大きく分けて2種類。日本でいう一般的なマンションである「コンドミニアム」と、清掃・洗濯サービスが付く「サービスアパート」です。
サービスアパートの場合、電気代はオーナーが各自で設定し、実費との差額から利益を得ていることも多いため、コンドミニアムより高くなるのが一般的。例えば、コンドミニアムだと2,000VND /kWh(約12円)に対してサービスアパートだと4,000VND /kWh(24円)になるケースがよくあります。
食費
続いては、食費についてです。こちらもハノイとホーチミンで特段大きな差はないそう。
Yさんご夫婦がかけた1ヶ月の食費は1,200万VND(約73,000円)。内訳は外食代におよそ800万VND(約48,000円)、自炊代に400万VND(約24,000円)です。
Yさんの場合、自炊では特に節約はしておらず好きなものを作って食べるようにしているそうです。人によっては食費をより抑えることも十分に可能でしょう。
ベトナムでの食費は日本と同様に、外食か自炊か、またどの程度のグレードを求めるか、などによっても大きく異なります。例えば、Yさんの外食と自炊の比率は以下の通り。
朝:食べない
昼:ほぼ外食(ローカルレストラン)
夜:外食と自炊が半々
ハノイでは、ローカルレストランはおよそ3万VND(約180円)〜だそうです。
筆者はホーチミン在住なのですが、ローカルのレストランで食べるものは安くても3万5,000VND(約210円)程度なので、ローカルレストランはハノイの方が若干安いですね。
また、Yさんが自炊をされる際の買い物場所についても、地域ごとに聞いてみました。フルーツなどは市場で購入することもあるそうです。基本的に市場はスーパーと比較してダントツに安いのが特徴です。
生鮮食品を購入する場合
・Fuji Mart(ハノイ)
住友商事が展開している日系スーパー。日本の管理技術を導入しており、新鮮な食品が揃っています。
公式サイト:https://fujimart.vn/
・Tops Market(ホーチミン)
店内が広く、品揃えも豊富なスーパー。他のスーパーと比べて価格帯が良心的なところもポイントです。
公式サイト:https://topsmarket.vn/vn/
調味料を購入する場合
・富分(ハノイ)
日系スーパーで「とみぶん」と読みます。日本の商品も多く揃っており、日本と変わらないと言われることも。
公式サイト:https://www.tomibun.vn/
・Family Mart(ホーチミン)
ホーチミンに多数展開しており、街でもよく見かけます。必要な時にサクッと買い物できるのが魅力的です。
公式サイト:https://famima.vn/
Yさんは、スーパーでの買い物は「日本だとセール品を中心に買い物するところを、ベトナムでは金額を気にせずに好きなものを買える」とおっしゃっていました。
食費から物価の低さが顕著に見えますね。
娯楽・交際費
続いて、Yさんご夫婦が1ヶ月にかけている娯楽・交際費は190万VND(約1万1,000円)。
上記の金額には、美容院や趣味代が含まれています。また、Yさんご夫婦はインドア派のため、他の家庭の平均よりも低い可能性が高いです。
娯楽・交際費もハノイとホーチミンの間で大きな違いはありません。それぞれ詳しく見てみましょう。
美容院
140万VND(約8,500円)
Yさんは日系の美容院に行かれているため、あまり日本とは変わらない価格設定です。カット代は1人あたり3,000〜4,000円ほど。
ローカル美容院の場合、カットは300〜800円程度なため、人によっては十分に節約できそうです。
旅行
500万〜2,000万VND(約3万〜12万円)
3ヶ月に1回ほどご夫婦で旅行に出かけるそうです。ベトナム国外への旅行の場合、日本から行くより安く住む国がたくさんあります。
例えば、マレーシアやタイは往復2万円弱で行くことが可能。Yさんはこれまでインドネシアのバリ島や韓国、台湾などに旅行されたそうです。
韓国や台湾へは、航空券の価格はさほど日本と変わらないものの、便数の多さや有給の取りやすさからサクッと行くことができます。
チムジルバンスパ
50万VND(約3,000円)
チムジルバンとは、韓国式スーパー銭湯のこと。韓国人が多いベトナムでは、このような娯楽も盛んです。
Yさんのおすすめチムジルバンスポットはこちら。
・AMARE(ハノイ)
日本の温泉やチムジルバンが一緒に楽しめる市内最大級の健康施設。プロモーションがあるため要チェックです。
公式サイト:https://amare.com.vn/en/price/
・Golden Lotus Spa(ホーチミン)
韓国人が多く住むとされている7区に位置しています。サウナ以外にもスパ利用としてマッサージの施術が受けられるなど、メニューが豊富です。
公式サイト:https://q7.goldenlotusspa.vn/ja/service-price-list-jp/
交通費
Yさんご夫婦は基本的にバイク移動で、雨天時や飲み会の際にGrabタクシーを利用します。
1ヶ月にかかる交通費は140万VND(約8,500円)で、内訳は以下の通り。こちらもハノイとホーチミンに違いはありません。
バイク維持費(2台)
ガソリン代:30万VND(約1,800円)
オイル交換など:10万VND(約600円)
駐車場:20万VND(約1,200円)
Grabタクシー代
80万VND(約4,800円)
通信費
通信費は日本と同様、契約する通信会社によって異なります。
携帯電話
Yさんが契約しているのはベトナムの三大通信会社の一つ、Mobifoneのプランです。
・通信データ1日4GBまで利用可能
・Mobifone同士だと約50分間まで通話無料
これらの内容で、1ヶ月1台につき12万ドン(約700円)ほど。日本と比較すると破格です。
一方で、電波が悪いなどの不便を感じたこともないそう。
インターネット
自宅用のインターネット回線の料金は住むエリアによって異なります。
実際にYさんが暮らしたハノイとホーチミンの、それぞれの固定インターネット回線料金を比べてみると以下のような感じです。
・ハノイ
Viettel:月額35万VND(約2,100円)
・ホーチミン
VNPT:月額60万VND(約3,600円)
ペットの飼育費
Yさんは犬を1匹飼っていますが、犬の飼育には餌や日用品、病院代など諸々の費用が発生します。
Yさんの家でかかったペットの飼育費は1ヶ月につき105万VND(6,400円)でした。
基本的にハノイとホーチミンでは大差ないですが、ペットホテルやトリミング代はホーチミンの方が安いそうです。具体的な内訳は以下の通り。
餌代
30万VND(約1,800円)
日用品(トイレシートなど)
10万VND(約600円)
病院
15万VND(約900円)
こちらは予防接種や健康診断の料金です。狂犬病のワクチンを打つ場合は、1回70万VND(約4,200円)と少し値が張ります。
ペットホテル
・ハノイ
350,000VND/ 泊(約2,100円)
・ホーチミン
250,000VND/ 泊(約1,500円)
トリミング
・ハノイ
50万VND(約3,000円)
・ホーチミン
35万VND(約2,100円)
まとめ
今回は、ベトナム在住の夫婦の1ヶ月にかかる生活費について解説しました。
物価が高騰しているベトナムですが、日本人向けの住宅に住む場合、家賃はそれほど安くはなく、日本と同程度、あるいはやや高めになることもあります。
一方で、ハノイやホーチミンに関わらず、ベトナムの水道光熱費や通信費は非常に安く、生活費を大きく抑える要因となっています。
もちろん、生活費は生活スタイルによって上下しますが、スーパーで金額を気にせずに買い物ができるのは、物価の低い国ならではの喜びとも言えますよね。
皆さんもぜひ一度、ベトナムでの暮らしを体験してみませんか?