【文化・経済面で大きな貢献】タイの中のインド Vol.1

インドシナ半島東部に位置するベトナムからカンボジア、タイを横断し、アンダマン海に面する西部のミャンマーに至る大動脈「南部経済回廊」。ミャンマー側の整備が遅れているが、その先にあるインドに熱視線が送られている。インド国内の人口は現在、12億人と言われるが、祖国を離れて世界中に離散した印系の海外移住者は約3,010万人いる(インド外務省2018年12月時点)。タイには約20万人が居住しており、バンコクなどに大きなコミュニティを形成している。そこで今回はタイ社会に同化した在タイ・インド人が与える経済的・文化的な影響などを紹介する。

 

文化と背景

タイとインドは、アンダマン海とベンガル湾にある海上境界線を共有するほか、ミャンマーを経由して陸路でもつながっている。在タイ・インド大使館によると、泰印関係は、長い歴史と社会的・文化的な結びつき、および幅広い人々の交流に根差している。

祭司や一般国民、貿易業者の移動や交流は、何世紀にもわたって双方向に行われてきた。インド北東部の部族であるアホームは、およそ8百年前にタイから来た移住者であると信じられている。

また、古代インドの文献には、タイが「スワンナプーム(黄金の地)」として記載されている。紀元前329年には、アショーカ王が仏教を普及させる目的で、使徒をスワンナプームに送ったと言われる。

インド土着であるヒンズー教と仏教という共通の信仰で結ばれており、多くのタイ人がインドの仏教聖地へ定期的に巡礼。さらにヒンズー教の要素が、タイの建築、芸術、彫刻、踊り、演劇、文学に反映されていることがわかる。

タイ語はパーリ語とサンスクリット語の影響を受けており、タイに住んで働いている離散インド人がもう一つの重要な縁結び役になっている。タイの国民的古典叙事詩である「ラマキエン」は、「ラーマーヤナ」から派生したもので、タイの文学、芸術、ドラマに大きな影響を与えている。両国の社会文化的な習慣や祭りに共通点が多くみられる。

1872年には、チュラロンコン国王(ラマ5世)がインドを訪問。インド政府は1956年に東北部ブッダガヤに僧院を建設するようタイ政府に提案。受け入れられると、インドは1万8千平方メートルの広大な土地を提供した。

インド独立の父で、宗教家・政治指導者のマハトマ・ガンジーや初代首相のジャワハルラール・ネルーなどによるインドの古典や作品の多くはタイ語に翻訳されており、芸術、文化、サンスクリット語を学んだタイ人の学者や僧侶は少なくない。これら古くからの文化的な結びつきを強化するために、インドとタイは77年4月に文化協定を調印し、96~97年にはインドの祭典がタイで初めて開催された。

タイの主要大学はサンスクリット語、ヒンディー語そしてインド研究コースを提供。93年には国立タマサート大学にインド研究センターが設立されるなど、多面的な交流が続いている。また、ボリウッド映画の撮影地や新婚旅行先として人気がある。

(続く、「ArayZ」2019年9月号より転載)

 
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