こんにちは、ICONICインドネシアのえびなです。
2023年3月23日〜4月22日はイスラム教のラマダン月間です。イスラム教徒が国民の約90%を占めるインドネシア。インドネシア人の同僚や友人が実際に日中に断食をしているのを目の当たりにしたり、断食についてのトピックに触れる機会が多くある時期でもあると思います。
非イスラム教徒の多い日本人にとって、ラマダンはイスラム教について触れたり知見を深める良いチャンスでもある月間です。
職場における多様性を肌で感じたり、自分とは異なる文化背景を持つ人のマネジメントなどに触れる良い機会と捉えることもできます。
インドネシアで働いている方、これからインドネシア就職を考えている方に向けて、こんな疑問にお応えできる記事をお届けできればと思っています!
- ラマダンって何?一体何をするの?
- 実際のところ、イスラム教徒の人はラマダンの断食をどう思ってるの?
- 断食中のイスラム教徒の前での飲食はNG?
- 仕事の場面ではどのような気遣いが必要?
インドネシアで働きはじめて2年以上が経ち、インドネシア人の同僚や友人ができる中で、ラマダンや断食について彼らがどのように考え取り組んでいるのだろう?と大変興味を持っていました。
1ヶ月断食をするなんてとんでもない苦行じゃないか!と。
そこで私自身、1day断食にトライしてみましたので、その体験談もあわせてお伝えしたいと思います。
インドネシアでの同僚や友人たちとの過ごし方について、少しでもヒントになれば幸いです。
どうぞ最後までお付き合いください!
ラマダンとは
本題に入る前に前提知識として、ラマダンとは何か?について少し説明させてください。
ラマダンとは「イスラム教の断食月」です。イスラム教の5つの行動規範のひとつに断食があり、これを実行することで信仰心を深め、神(アッラー)に忠実であろうとします。
良いイスラム教徒になるための課題のようなイメージでしょうか。
ラマダンに関する詳しい説明は下記の時期を参照ください。
私の1day断食体験談
さて、私がおこなった断食の体験をご紹介したいと思います。イスラム教のやり方にしたがって日の出から日没まで(大体午前5:00から午後6:00)の間、一切の飲食を経ちました。
4:30 断食に備えて多めに朝食をとる
ゆで卵・プロテインシェイク・チョコマフィン・ヤクルト
普段は朝食を摂らないので、胃が重かった。
10:30 仕事に特に支障なし。
空腹感も喉の渇きもまださほど感じない。お水を飲まないからか、エアコンの乾燥で少しせきが出る程度。
12:00 昼休み
イスラム教徒の同僚たちは昼寝している。私はちょっとオフィスの外を散歩。
ラマダンの期間中、外の屋台街のお店のほとんどは営業していません。
ショッピングモールの飲食店は普段通り営業してますが、食事をとっている人はまばら。
ちなみに、私は前々から「イスラム教の人たちは自分たちが断食中に、飲食をしている人をみてどう感じるのだろう?」と疑問を持っていたのですが、自分がやってみて他人が「羨ましい」とか「私も飲みたい」というふうには感じませんでした。
自分で決めてやっている事なので、他人の行動はさほど影響がないということがわかりました。
▲昼寝している同僚たち
15:00 お腹が空いてきた
18:00を過ぎたら何を食べようかな、と邪念が浮かんできてスマホでGrab Foodを物色(見るだけ)。喉の渇きはさほど気にならない。
16:30 終業
普段は17:00終業ですが、ラマダン期間中はイスラム教徒の従業員が家で断食明けできるように、営業時間を調整しています。
18:02 通勤のバスの中で断食明けの時間を迎える
お水と軽めのスナックを摂る。これがとっても美味しく感じました。
17:57くらいからバスの乗客がソワソワ(?)としきりにスマホの時間や腕時計を気にし始めて、断食明けの時間になると、断食中だった乗客が一斉にガサガサっと食べ物の袋を開けるので、いろんな食べ物の匂いが車内に充満します(笑)。
20:00 帰宅
食欲のコントロールを完全に失い、爆食(恥ずかしい。。。)
塩分が足りないのかしょっぱいものを食べたい衝動に駆られて、ふりかけをご飯にかけずにそのまま食べたり、普段は食べないスナック菓子を食べてしまいました。
おまけ 翌日
私は、普段アメリカンコーヒーを4~5杯飲むのですが、断食トライをした日には1杯も飲みませんでした。その結果、翌日ちょっと濃いめのコーヒーを欲するというコーヒーのリベンジ消費現象に襲われました。
※あくまでも個人的な体験です。
断食をやってみての感想ですが、これを1ヶ月継続しているイスラム教徒の同僚や友人はすごい!と思いました。
私は断食時間が終わったあとに爆食しちゃいましたが、イスラム教徒は子供の頃から毎年断食をやり続けているので、ラマダンの過ごし方や食べるもの・食べ方について様々なノウハウがあり、かなり気を遣っているようです。
ラマダンについてイスラム教徒の同僚はどう感じているのか?
私はラマダンや断食について、
「1ヶ月の断食だなんて、とんでもない苦行だ!」
「イスラム教徒たちは断食なんて本当はやりなくないと思っているに違いない!」
と思っていました。
そこで、ラマダンについてどのように思っているのか、ラマダンをどのように過ごしているのか、同僚や友人たちにインタビューをしてみました。
<Q.ラマダンは楽しみですか?> <A.Yes! とても楽しみにしている> |
こちらの質問は、ラマダンが始まる前に聞いてみました。
この質問には全員例外なくYesの回答。
私としては「これから断食が始まるなんて、みんな鬱々としているんだろうな」なんて思い込んでいたので、意外な回答でした。
イスラム教徒の人たちは偽りなく、本当にラマダン月間を楽しみにしている様子でした。
<Q.ラマダン期間中の最も楽しみなことはなんですか?> <A.ラマダン期間中にしか味わえない行事や雰囲気を味わうこと> |
ラマダンは、イスラム教徒にとって特別な月間です。
彼らは穏やかな気持ちで過ごし、善いおこないをすることを心がけていますし、そうすることで良いイスラム教徒になれると信じて行動しています。
皆で厳しい断食をおこない、ラマダン期間中に行われる”タラウィ”という夜の礼拝に参加するためにモスクにおこなったり、仕事の仲間や旧友と共に断食明けの食事会をすることで、家族やコミュニティ、友人たちとの情緒的な繋がり深めることのできる期間なのだそうです。
また、この時期にしか味わえない特別な料理やストリートフードなんかもあるそうで、断食明けにそれらの食べ物を「ハンティング」しに出かけて、断食明けを待つと言う期間限定のお楽しみがあるそうです!
<Q. 自分が断食している時に他の人が目の前で飲食していたらどう感じるか?> <A. 特に何も感じない・差し支えない> |
ほとんどの人が、同じ回答でした。
というのも、インドネシアには非イスラム教徒も多くいます。
家族の中にも異なる宗教の人がいたり、小さい頃から非イスラム教徒の友人と過ごしてきている人も多くいます。また、イスラム教徒の中でも断食をしない人もいます(高齢者や病気の人、妊婦や授乳中の女性などは断食しなくてもよいことになっています)。
そういった背景から、彼らは断食をする人もいればしない人もいるということを理解していますし、断食は自分の意思で行っていることなので、他人の行動が自分の意思決定に影響しないということのようです。
私がインドネシアで初めてラマダンを迎えた時に、イスラム教徒の同僚の前で食事したらダメなのだと思い、廊下で食事をしたことがありました。そうしたら、それを目にした同僚から「そんなに気にしなくてもいいから普通に席で食事してもいいよ」と言ってもらったことがありました。過剰な気遣いはかえって彼らに気を遣わせてしまいますね。
とはいえ、非イスラム教徒の側にも一定の配慮は必要だと思います。あからさまに美味しい匂いの立つような食べ物を目の前で飲み食いする、というようなことは避けた方がよいと思います。
<Q. 断食開始前の朝食や断食明けの夕食にはどのようなものを摂るのか?> <A. 朝食は午前3:30頃、できるだけ腹持ちのよいものを、断食明けには暖かいお茶とドライデーツを取って胃を慣らし、夕食時には美味しいものをたくさん食べます。> |
日の出前の食事には断食に備えて腹持ちのよいものを選んでいるようです。
喉が乾いてしまってはいけないのでしょっぱいものを控えています。
▲ある同僚のサフール(朝食) おかゆ・バナナ・ヤクルト
▲チキンカレー。タンパク質を摂ることで腹持ちがよくなります。
断食明けは大体18:00頃ですが、イスラム教の預言者のムハンマドがそうしたことに倣って水や温かいお茶などとともにドライデーツを食べるそうです。
いきなりドカ食いして胃に負担にならないよう、お腹をならす効果もあるのだと思います。
夕食は特に何を食べるかの決まりはないようで、それぞれ家族や友人と美味しい夕食を摂っているようです。
▲家族でイフタール(夕食)を摂る様子
▲右上にあるのがドライデーツ。断食明けに食べます。
▲たくさんの食べ物で賑々しいです!
ラマダンと仕事
ラマダン期間中にイスラム教徒が行う慣習は少なからず仕事の場面にも影響します。
涼しい室内で働いていると、さほど汗をかかないので喉の渇きをあまり感じないかもしれませんが、屋外で働いている人や肉体労働者にとって、昼間の最も活動量の多い時間帯に飲食を断つのはかなり辛いと思います。
イスラム教徒は1日に5回のお祈りをすることで知られていますが、ラマダンの期間中にはこれらに加えて”タラウィ”という夜の礼拝をおこないます。また、日の出前に食事を摂るために午前3:30頃に起床していますから、どうしても寝不足になります。
したがって、空腹感や眠気で注意散漫になったり作業がスローダウンしたりすることは往々にして起きやすい現象です。
これらの現象を起きないようにすることはできませんので、周囲の連携でうまく業務を進めていくための配慮がより必要な期間であると思います。
例えば、仕事がスローダウンするであろうことを見越して、より早い段階で仕事が済むようなスケジュールを組むとか、〆切を忘れないようにリマインドを何度もするとか、ミスを最小限に抑えられるようチェック体制を強化するなど、、、
断食を行わない非イスラム教徒の側にも一定の配慮は必要です。
食事の際には、多少目のつかないところに移動するとか、美味しい匂いの立つものを目の前で食べることは控えるほうがいいです。
また、「良い断食を(happy fasting!)」「良い断食明けを(Selamat berbula puasa!)」などのポジティブな声かけをすると彼らは喜ぶでしょう。
少し面倒にも感じられるかもしれませんが、私としてはせっかく異国の地で働いているし、多様性のマネジメントの課題だと思い、前向きに取り組むように心がけたいと思っています。
また前述の通り、多くのインドネシアの企業はラマダン期間の就業時間を調整しています。普段は8:00-17:00の就業時間を7:30-16:30とするなどして、イスラム教徒の従業員が自宅で断食明けを迎えられるように配慮しています。
断食明けの食事会を企画する企業も多いです。
会社が終業後にBuka Puasa Party (断食明けパーティー)を企画して、ケータリングを手配したりレストランを予約するなどして、会社のメンバーと一緒に18:00頃の断食明けを迎え食事をとります。
インドネシアの人たちは、家族的な穏やかな人間関係の中で仕事するのを好む傾向にあると感じます。このように楽しい時間を共に過ごすことによって、社員間の情緒的な繋がりを深める効果があるのだと思います。
まとめ
ここまで、私の1day断食体験談とラマダンと仕事についてお伝えしました。
いかがだったでしょうか?
本記事の要点をまとめると以下の通りです。
- インドネシアにはイスラム教徒が多く、ラマダンという1ヶ月間の断食月の慣習を行う人が多くいる
- ラマダンはイスラム教徒にとって、宗教的にも文化的にも重要な意味合いを持つ期間である
- ラマダン期間に行われる慣習(断食や夜の礼拝など)は体の状態や仕事のパフォーマンスに影響を及ぼすので、普段とは異なる配慮が必要
私自身、たった1日の断食でイスラム教徒が送っている1ヶ月の禁欲的な生活の全てを理解できたとは思っていませんが、断食による心身の状態をほんの少し知ることができたのは大変有意義だったと感じています。
また、ラマダンやイスラム教に対する理解を深めることにつながる良い体験ができました。それに、断食トライをしている/してみた、と言うとインドネシア人の同僚が喜んでくれました。
もしタイミングや健康状態が許せば1day断食体験(1週間でも1ヶ月でも!)に挑戦してみるのはいかがでしょうか?
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までありがとうございました。
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