タイのビジネスビザ(VISA)と就労許可証(ワークパーミット)Vol 3. ~タイの経理現場から~

今回も前回の続きでいよいよ最終段階のVISAの更新についてご案内していきます。
前回までのところでは、タイ国外で取得した90日のNonB-VISAを持って入国し、その後WPを取得するまでの手順をご案内しました。ですのでWP取得後の続きからの話になります。

 

VISA取得後の国外出国は注意が必要

最初に前提を思い出して欲しいのですが、皆さんは90日までの有効期限のVISAを持っています。これはつまり90日以内に手続きを完了することを当然意味するわけです。日付は取得した大使館でVISA記載のスタンプに日付が記載してありますのでこの日までに更新手続きを終える必要があることになります。

ここで重要なこととして意外と盲点でもあるのですが、この日付の間までに一度でもタイ国外出国をしてしまうと折角取得したVISAが無効になりますので最大限注意を払う必要があります。これはVISAの性質上当然でもあるのですが、入国するための資格証として各国政府がその要件を設定しているものでもあるので、一度でも出国すると次回以降の入国時には、VISAなし免除要件で入国する場合は別として、その都度新たなVISAを入国資格として取得する必要があるからです。

ただ、全く90日間出国できないというのは対応できない人も当然出てくるわけで、その場合はタイ当地でリエントリーパーミットというものを取得します。これはVISAを晴れて更新した後は当然取得すべきものでもあり、VISAの有効期間中であればタイからの出入国を1回もしくは無制限の回数認めるという制度になります。更新後にはもちろんですが、更新前の90日の期間中でもシングル(1回限り)かマルチプル(複数回無制限)を期間中の国外渡航予定などを加味して必要に応じて取得するかの判断となります。

そしてこの手続自体もタイに入国してからタイ国内の入国管理局に申請して対応することになります。日本でのタイ国大使館でのVISA取得時にシングルとマルチプルというのが選択できるかのような記載もありますが、NonBに関しては国外ではシングルしか取得できないのが実情ですので注意が必要です。

 

VISA更新申請での必要書類

さて、リエントリーのところがクリアーになったところでようやく更新申請です。ここで必要な要件が皆さんが一般的にVISAを取得しにくいと言われる場合に立ちはだかるハードルになります。

本コラムの最初の回にも少しだけ紹介しましたが、正式な必要書類としては下記のようなものがあります。
・直近の個人所得税申告書3ヶ月分(税務当局の担当官の署名入りのもの)
・直近の社会保険料申告書3ヶ月分(社会保険庁の担当官の署名入りのもの)
・会社謄本
・直近の商務省提出済決算書(設立したばかりで決算を迎えていない場合は省略)
・会社地図
・税務(VAT)登記証
・会社署名権者の身分証明書(パスポート等)控え、WP等
・その他入国管理局が指定する書類(事務所写真、従業員写真等含む)

また書類要件以外の大きな要件としては外国人一人あたり2百万バーツ以上の資本金額(普通株式)というものもあります。多くの日系企業の資本金はほぼ2百万バーツの倍数になっているのはこのためです。この基準を満たすための外国人事業法からみの規制との折り合いのつけかたなども複雑にあるのですが、今回は趣旨と外れるので機会があればまた触れることにします。

書類だけでも相当な分量になり、厚みが2~3センチ分くらいに達するのは普通で、会社によっては5センチ分くらいまで揃える書類が必要なこともあります。そしてこれらの書類の中で一番の曲者が直近の申告書控えになります。ここをクリアーするのに難儀するのは2回前のコラムに記載した事例のとおりです。そうです、外国人一人あたり4人以上のタイローカルスタッフの直近で3ヶ月以上の継続雇用が要件という悩ましいあの条件のことです。

それだけではなく、これらの条件を維持できる期間を十分考慮したうえでの、90日NonB取得及びタイ入国タイミングの緻密なスケジュール確保や日程繰りはかなり神経を使います。会社設立時は特にこの最初の段取りに今後の事業開始プランなども影響されることが大きいです。当社でもクライアントとのコミュニケーションにおいてそのための時間を割いて場合によっては一緒に渡航日程の調整を含めて対応をしているくらいです。

 

更新申請から30日後はタイ国内に

実に大変なこれらの申請書類や要件を揃えて、期限まで入国管理局に対象者本人も含めて出向き、晴れて申請書一式が受理されると、通常は30日後の応当日が指定されその日までは最終審査期間ということで仮のVISAスタンプがパスポートに押されます。取り扱いとしては申請中のVISAのステイタスを暫定的に維持しているので、あとは待つのみとなるわけですが、この30日の間に国外に出る場合はやはり先述したとおりリエントリーの手続きが必要なので、同じ入国管理局の別窓口で同日に対応するのが良いでしょう。

そして30日後、この日は絶対的な指定日となるので必ずタイ国内にいる必要があり、指定日の前後での出頭の調整は出来ないので注意が必要です。これ以降の毎年の更新においても同じで、VISAをキャンセルしない限り最初の取得日に毎年拘束されることになりますので、人によってはそれを考慮して逆算して最初の90日NonBの取得タイミングを決めることもあります。

 

VISAのキャンセル

キャンセルという言葉が出てきたついでになりますが、最近はこのVISAのキャンセル手続きも厳しくなってきました。キャンセル手続きをしないで出国しそのまま日本に帰任したりすることもその時は出来ますが、後日タイで再度VISA取得となった場合に取得できない、もしくは取得に困難を生じる事例が出てきました。来る者も去る者も両方拒んでいるんじゃないかと思うほどに厳しいと考えておいたほうが良いでしょう。

このときの厳しい内容としては、取得時同様のあの4人以上のタイローカルスタッフ3ヶ月以上の継続雇用というのがなんと適用され、キャンセル時にも同じ条件であることが求められます。担当官の裁量によりますが、昨今の傾向ですので皆さんご留意ください。

ようやく取得・更新できたVISAはこうしてみても、大変ありがたいものなのだなというのがよく分かると思います。ほんの自分の周りでも数々の事例や都市伝説的なものも含めて、VISAにまつわるストーリーは話題に事欠きませんが、皆さんが知っておいたほうが良いものは今回までの3回のコラムで概ね伝えることができました。
次回以降はまた新しいテーマで、時折一休みコラムも交えながらお届けします。

<本記事に関するお問い合わせはこちら>
Accounting Porter Co., Ltd.
Web:http://aporter.co.th/

タイ在住歴8年・累計100社以上のご相談に対応

タイ在住歴8年・累計100社以上のご相談に対応

但野和博(外部ライター)

Accounting Porter Co., Ltd.にてManaging Directorを勤めています。弊社は日本からの進出や会計サービス全般をタイ国で提供して6年経つ会計事務所です。代表である私が日本で2社の上場会社のCFO通算6年の経験を活かして親身なサービスを提供できるよう心がけております。 これまで累計100社以上のお客様からご相談いただいた様々な実例もあり、本コラムではそんな実例の中からタイで就業するあるいは就業を想定した方向けに駐在員、現地採用の方を問わずお役に立てる情報をお届けしようと思います。 内容としては身近な給与などの取扱いから、経理処理、はたまたそれらをひっくるめたタイの日系企業で身近に起きたことなど雑感的なところも交えながら、気軽に読めるようなトーンで展開していきますのでどうぞよろしくおねがいします。

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