現地採用日本人の個人所得税~タイの経理現場から~

今年も個人所得税の申告時期がやってまいりました。海外で居住する日本人にとっては、申告書の作成をした経験がないのは普通のことです。そのことも踏まえ、最初のテーマは日本人の給与の取り扱いについてということで第1回~5回まで個人所得税の観点で詳細にご案内もしておりました。

【連載①】日本人の駐在員・現地採用者の給与の取り扱いについて
【連載②】日本人駐在員の所得の合算を決める基本軸とは
【連載③】税務調査の実例から見る給与負担按分とは
【連載④】日本人の駐在員・現地採用者の給与の取り扱いについて
【連載⑤】日本人の駐在員・現地採用者の給与の取り扱いについて Vol.2

今回はその中でも、現地居住日本人で、会社が面倒を見てくれることがほとんどない現地採用の方向けにその手順なども含めてご案内していきます。第5回でも取り上げていますが、実際のところどう進めれば良いのかということにフォーカスして今回の回でまとめてお届けします。

 

タイ確定申告時期

早速見ていきましょう。まず申告のタイミングは暦年ベースですので、このコラムが掲載される2月の今の時期はちょうど真っ只中になっており、例年ですとタイ歳入局のHPからインターネット経由での申告が4月8日頃までとなります。実は今年に限ってかもしれませんが、つい先日歳入局よりの発表で申告対象者は国内外の国籍問わず6月末までの申告期間というアナウンスがされたばかりで、これには多少なりとも驚きました。従来は3ヶ月程度だったのが6ヶ月とほぼ倍になるというではありませんか。その理由としては景気の減速ともアナウンス文にも記載があるようですが、逆に景気を押し上げるほどの効果が延長手続きによってあるは思えず、一言で言ってしまうとアメージングタイランドの類ですが、申告者にとっては悪い話ではないので話を先に進めましょう。

皆さんがまず揃える必要があるのは会社から発行してもらえる年間の源泉徴収票になります。これは50TBと呼ばれる書類で、会社は従業員に発行する義務があるため必ず受領する書類となります。発行される時期は年明けからこの2月にかけてのタイミングになりますが、VISAの更新が迫っている場合は注意が必要です。それというのも更新時の必要書類として申告後の納付済受領書も一緒に提出することになっているためです。そういった方は会社が認識しているのが通常ですが自分でも認識したうえで、発行が遅くならないよう早めに会社関係者にも働きかけましょう。

 

タイWEBサイトでの確定申告手順

大方の現地採用の方にとってはほぼこの源泉徴収票だけが唯一の必要書類となることも多く、大抵の人はここに記載している内容をあとは歳入局のHPから確定申告書(PND91)作成のためのページに入り、そこに個人のTaxIDなどの情報を記載したうえで登録して使います。記載方法はタイ語しかない場合でも最近はGoogle翻訳なども正確になってきたのでそういったものも併用し、あとは画面に従い、源泉徴収票記載の給与所得額と社会保険控除額、源泉所得控除額を入力するだけで完結できるようになっています。
今年は発表されていませんが、一定期間中にタイ国内の旅行で使った旅費に関する経費控除が適用できる場合など過去にもありましたのでそういった内容に該当するものがある場合は該当欄に記載します。

ちなみに、過去に駐在員であったなどで会社側で申告対応もしてもらっていた方については、会社が外部に申告代行していた場合も含めてWeb申告対応していた場合は既にご自分のTaxIDに基づく歳入局のログインIDなどが発行されているはずですので、その情報を入手する必要があります。会社側と既に連絡が取れない場合などは実際の紙の申告書対応が必要になってしまうのでご留意ください。

さて画面入力が完了すると、そのまま申告するか一旦保存して後日申告するか選択も可能です。申告した後には追加納付がある人であれば、納税金額のPayment Slipが申告書控えとともにダウンロードできますので、この2次元バーコードのPayment Slipを取引銀行に持参して銀行窓口で自分の口座から納付する形が一般的です。納付後2-3営業日後くらいすると自分のログイン画面から受領書が発行されているのを確認できるようになっています。これで手続き完了ということになります。

一方で会社が皆さんの所得控除状況などを把握しているか、配偶者などの所得控除といったものがなければ、通常会社で毎月源泉している金額が年間所得税と一致しており、納付額もゼロのPayment Slipが発行されるのが確認できます。この場合はこれで申告完了ですので、特に追加アクションは必要ありません。

 

タイ確定申告還付が発生する場合

面倒なのは還付が発生する場合です。考えられるとしたら年度内に婚姻して控除対象配偶者が増えたり、お子さんが誕生したりなど人的控除の事情が変更したか、年末までに所得控除対象の生命保険契約やLTFなどの金融商品を契約したことなどがあげられます。

こういった方は冒頭に必要とされた源泉徴収票に加えてそれらの所得控除に必要な各種書類を準備する必要があります。完全に自分で準備が必要なものは人的控除証明に使用する個人の戸籍謄本(全部事項履歴証明書)の家族構成の証明書です。これは日本の本籍地で原本を取得した上で、タイの日本大使館で証明書を発行してもらう必要があります。

それ以外の書類は金融機関など契約先が発行してくれます。通常は郵送等で登録住所に送付されます。
これら書類はWeb申告で還付がない限りは手元保管することで手続きが完結してしまいますが、還付のときはWeb申告では受付してくれず、申告書のオリジナルを直接歳入局にこれら控除証明書類とともに提出する必要があります。

最終的な還付手続きは以前なら書類の申告とともに後日に本人宛名の銀行小切手が送付されてきて、それを取引銀行に自分の預金口座の通帳とパスポートを持参すればその場で入金を受けて還付というスタイルでした。

これが最近変更されており、Prompt Payと言われる銀行間のSMSを使った電子送金サービスか、指定された政府系銀行の口座宛のみで受領可能ということに変わってきております。このPrompt Payは外国人はタイ居住者でも入れないと言われていますが、中には入っている人もいるので情報が不確かです。実は還付になる方は会社側の立場で言うとあまり事例がなく、法人向けサービスが主体である当社もそれほど遭遇しておらず、どんな対応で進めるのが一番良いのか当社でも模索中でもあります。新しい情報が入ったらまたこちらのコラムでも取り上げたいと考えています。

というわけで、ざっくりでしたが一通りの最新の概要のみお伝えさせていただきました。申告の準備、今年は期間延長とはいえ、すぐに時間がたってしまいますので思い立ったときに早めに終わらせてしまいましょう。

次回は久しぶりに一休みコラムをお届け予定です。

<本記事に関するお問い合わせはこちら>
Accounting Porter Co., Ltd.
Web:http://aporter.co.th/

タイ在住歴8年・累計100社以上のご相談に対応

タイ在住歴8年・累計100社以上のご相談に対応

但野和博(外部ライター)

Accounting Porter Co., Ltd.にてManaging Directorを勤めています。弊社は日本からの進出や会計サービス全般をタイ国で提供して6年経つ会計事務所です。代表である私が日本で2社の上場会社のCFO通算6年の経験を活かして親身なサービスを提供できるよう心がけております。 これまで累計100社以上のお客様からご相談いただいた様々な実例もあり、本コラムではそんな実例の中からタイで就業するあるいは就業を想定した方向けに駐在員、現地採用の方を問わずお役に立てる情報をお届けしようと思います。 内容としては身近な給与などの取扱いから、経理処理、はたまたそれらをひっくるめたタイの日系企業で身近に起きたことなど雑感的なところも交えながら、気軽に読めるようなトーンで展開していきますのでどうぞよろしくおねがいします。

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